第8話 今日から伯爵!あっ、人生転がり落ちてる生ゴミさんちっすちっす!


 ―――そして今、国王陛下に呼ばれてまた王城に来ている。


「以前わしはお主を騎士の鑑と讃えたが、お主こそ当世の英雄、古くから続くトルマリン家が産んだ傑物じゃ。

 その働きを讃え、お主の領地の周辺の国有地を其方に与える。元々の領地と合わせて合わせて新たなトルマリン領とし、以降はトルマリン伯爵と名乗るが良い」


 集められた貴族や諸侯の拍手喝采と共に、なんとびっくり領地が増えて本当に爵位が上がった。そういえば前に呼ばれたときにも爵位を上げるのを検討しているとか言ってたような気がするけど冗談じゃなかったのか。

 そしてもう一つ、国王陛下に直接任命された者だけが与えられる「粛正騎士」にされた。不正なものを排除する粛清ではなく、一応、厳しく取り締まって不正をなくすほうの粛正である。

 不正や悪行を見つけた時にまず警告をし、捕縛する「粛正」という権限。

 そして捕縛を断り、なおも悪行に手を染める者に関しては王の法に従い「粛清」する事が出来る。ただし、この権限を与えられる代わりに粛正の記録をする効果を持つ、任官中外れない指輪を装備させられるのだけれど、・・・まぁいいか何でも。こまけぇことはいいんだよ。


 それから数日間城に滞在させられ、国王陛下が主催する俺の伯爵への陞爵しょうしゃくを祝うパーティーに連日出席させられた。

 様々な家の領主達や大臣たちが代わる代わるに自己紹介をしてくるので覚えるのに一苦労だった。まぁ一緒に連れて来たキリコが覚えていてくれるだろうから大丈夫だろう、タブンネ。

 少し残念だったのは、オーギュスト将軍が出席していなかったことだ。出来れば将軍にも晴れの姿を観て欲しかったけれど、将軍の代わりに出席した副官が隣国の帝国が軍事活動を活発にしている事や、今回は帝国の三大将の一人が直々に軍を率いて侵攻をしてくるかもしれないという噂もあって将軍は麾下の主力軍を率いて国境付近に釘付けにされている事を教えてくれた。

 ・・・波打つような豊かな髪と、鼻の下に横一直線に伸ばし端がくりっとカールした不思議なチョビ髭と、蓄えた顎鬚がダンディな見た目は相変わらずな副官だった。笑うとファルファルと変わった笑い方をするのがとってもチャーミングですよ。


 そんな旧縁ある人との再会を喜ぶ一方で、俺からタリアを寝取ったシャカラ伯爵もちゃっかりとパーティに出席していた。隣には居心地悪そうに俯いているタリアもいる。

 おまえらどの面下げてという所だけれど国王陛下の主催するパーティーに出席しないのは不敬だからね、仕方ないね。けど自分が女を奪って嵌めようとした男がこうして陛下直々に祝われているのってどんな気持ちなんだろう??俺にはわからないなぁ~ハッハッハ。

 シャカラ伯爵はパーティー会場の隅で黙々と料理を食べて酒を呑んでいて、時折俺を恨みがましい目で見たり、歯噛みしているのがわかる。一方でタリアはチラチラとこっちをみて未練がましい視線をとばしてきているようだけど無視、今更話すこともないしな。こいつらに関しては没落していくのを高みの見物でもしていよう。


 と、そんな事を考えていると貴族の一人がどこかわざとらしく『そうだ』と何かに気づいたようににこやかに聞いてきた。


「そういえばトルマリン候はまだお若いのにまだおひとりだとか」


「そうですね。婚約を、そう言った話は縁がなくて」


「なんと、婚約を破談に!?そうだったのですね。しかし英雄と謳われ伯爵となったのですから今後は世継ぎの事も考えなければなりますまい。・・・おっとそうだ、そういえば私の娘が年頃でしてな、どこかに良い嫁ぎ先はないものかと探していたのですが―――」


 婚約を破談に、という大声に対してシャカラ伯爵とタリアがビクッとしているのがちらりとみえる。一方で周囲の貴族達は俺達の話に聞き耳を立てていたのか、壮年の貴族が話に加わって来た。


「おっと抜け駆けはいけませんよポルメルン候。トルマリン伯爵への縁談を狙っているのは貴公だけではないのですから」


 そんな話がはじまると是非うちの娘と見合いを、といって他の貴族達もどんどんと話しにくわわって収拾がつかなくなってきた。困ったと思って周囲を見渡すと副官さんがファルファルと不思議な笑い声で笑っていた。これは助け舟を出してくれる様子はないな、むしろ面白がってる。


「ハハハ、シーンが困っているではないか。皆の者そこまでにしておくのだ。・・・なに、いずれ英雄には英雄に相応しい良縁があろう」


 そう言って国王陛下が顎鬚を撫でつつ、意味深な視線を向けて来て、陛下に伴われた美しい少女もなんだか熱のこもった目で俺を見ている。目元が陛下に似ているけれど、姫様かな?

 そんな陛下の言葉に、何か思い当たったのか俺に縁談を持ちかけようとしていた貴族達が失礼しました、と素直に引き下がって行く。


「そう緊張せずとも良い。・・・お主の事は大将軍からも良く聞かされておってな。将来が楽しみな若者だと強く推されておったのだよ。そしてお主は大将軍の予言通り、見事な騎士となった。わし自身もお主の今後を楽しみにしておるよ」


 ほっほっほ、と愉快そうに去っていく国王陛下と(恐らく)姫。去り際も姫様はじっと俺の方を見てきたので、騎士の作法に則った礼を返すと顔を赤くして国王陛下の後をおいかけていった。まだ年のころは十代中ごろだろうか?可愛らしいけれど大人になったら大層な美人になるんじゃないかな。あんな娘を妻に迎えるのはどんな人なんだろうとはちょっと気になるね、多分俺には関係ない事だろうけど。

 ・・・しかしオーギュスト将軍、俺の知らない所で国王陛下に俺の事を推挙してくれていたのか。本当にあの人には頭が上がらないな。

 あと、俺の知らない所で国王陛下の好感度が上がっていってる気がする。

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