TS最強格闘家が弟の心を惑わせる~バトルジャンキー集まる格闘漫画の世界にTS転生したけど恵まれた体格すぎて色々危ない~
四熊
虎一陥落編
TS転生
普通に社会人をしていたはずの俺は気づけば女の子の赤ちゃんに転生していた。
これだけでも大混乱なのになんと、それから数年後ようやく自由に動けるようになった矢先の両親との海外旅行中に飛行機が墜落して私だけが奇跡的に生き残ったけれど飛行機はサバンナに墜落したためにこのサバンナで頼れる大人も居ないなかサバイバル生活が急に始まったのだ。
——なんだこれハードすぎるだろ。
サバンナということもあってライオンやチーターといった肉食獣がいたりするのだがそれだけ気をつければいいというものではなく、草食動物のキリンや象、カバまで気をつけねばならない、アイツら草食のくせして肉食獣より俺の縄張りに入りやがって絶対に殺してやると見失うまで追いかけてくる。
そのまま何とかサバンナに俺は順応していき長い時間が経過した。
このサバイバル生活で気づいたのだが私はただTS転生したのではなく、最強の肉体となんでも消化し栄養を筋肉に変換する最強の胃を手にしていたらしい。
何故気づいたかというとサバイバル生活初日にしてお腹が減ってしまい、一か八かの狩りをしたのだがシマウマに向かって石を全力で投げたら子どもの投石のはずなのに的確に頭部に直撃し、シマウマは動かなくなった。
シマウマの肉を手に入れた私は火もなかったため石を削って作ったナイフで切り取ってそのまま食べたのだが腹を下すことなく普通に食べれたし、その翌日川へ水浴びに行くと自分の全身の筋肉が発達していたのだ。
よくよく考えれば飛行機が墜落して乗客がみんな死んでしまっているのに自分だけ無傷という状況もおかしいので取り敢えず転生チートを得たから生き残れたのだと納得がいったのだ。
それからの生活はシマウマや良く分からない種類の木の実を食べつつ、極力危険な動物と戦わないように風向きで自身の匂いを気取られぬようにして生活していた。
いくら強い体を持っていたとしても固定観念的に猛獣は怖いし、象やカバ、キリンのサイズ感を見て戦おうというほどバトルジャンキーではない。
私がこの生活を続け、なんとなく高校生になるくらいの年月が経った。
なんとなくというのはこのサバンナで生活を始めてから、やっと人里に行こうと思い立った時には自身の体の成長がすごすぎて余裕でサバンナで生きていけるし、衣食住に困らないので、わざわざ遠くまで歩いて人の居るところまでたどり着こうと思わなくなったので日付を数えなくなったからだ。
食べ物は自給自足で取ればいいし、私はどこでだって寝られるタイプの人間だし、服は動物の皮をなめして作った。
脅威になる動物は成長した私にはもうおらず、ライオンの牙を通さず、キリンの普通なら内臓を破壊し体に穴をあけるような後ろ蹴りを受けても逆に私は無傷でキリンの足の方が粉々になって重症。象は簡単に投げ飛ばせるし、カバの噛みつきは逆にカバの顎を外すように持ち上げて戦闘不能に。
もうここで私を脅かすものはいない。
——と思っていた時期が私にもありました。
今日も今日とてボチボチ狩りを始めますかと起きてシマウマが多くいる水辺へと向かうと、その道中にライオン三頭に囲まれている男がいた。
その男はライオンのたてがみのように髭が長く、獰猛な笑みを浮かべる筋肉の塊のような見た目で獅子堂と書かれたボロボロの武道をまとっている。
彼は無手で左手の手のひらをライオンの顔へ向け、右手を握りこぶしにして腰辺りに付けて腰を低く落として構えた。
もしやと思ったがどうやら本当に戦うらしい、私のようなチートを持っていないはずなのに戦うなんて彼は格闘家だろうがいくらなんでも無理だ。死んでしまう前に助けてやろうかと思って近づいた。
だがその前にライオンが牙を剥いて飛びかかった。
――その瞬間。
バゴォッ!!
正拳突きの一撃。一頭目のライオンの顔面が横にぶっ飛んで地面にめり込んだ。もう動かない。
「デェェイリャー!!」
二頭目が戸惑いを見せた隙に、男の体が霞のように揺れ動き、次の瞬間にはその首元に手刀が突き刺さるように決まり、ゴキリといやな音を立てたかと思ったらその首は胴体から切り離されていた。
三頭目は力の差を悟って逃げ、サバンナの王者ライオンが背中を向けた。だがその男は走って追いかける様子はない。
私はてっきり戦意喪失した相手を追いかけない美学があるのかと思っていたがどうやらそうではなかったようだ。
男は深くしゃがみこむと飛んだ。
地を蹴ってライオンが逃げた30メートル先までジャンプし、空中からカカト落としを食らわせ脳天をかち割った。
カカト落としをくらったライオンは目玉が飛び出て白い泡を吹いているので言うまでもなく死んでいる。
「おお……」
私が戦う時は猛獣を上回る筋力で力押しなので男の武術と言える動きに思わず声が漏れた。
「ん? お前……」
男がこちらに気づいた。
私の体格はもう並の男どころか、大人の格闘家でも勝てなさそうなレベルに達していた。中学生くらいなのに2メートルに達するだろ身長の筋肉の鎧をまとった少女。そんな存在。
一応見た目は、出ているところは出ていて筋肉だるまという訳でもないし顔も鏡でマジマジと見つめたわけではなく水に反射する私を見ただけだが結構可愛い女の子なのだが。
そんな可愛らしい女の子を見て、普通は戦おうとは思わないだろうが男はその姿を見るやいなや口の端を吊り上げた。
「俺は
初対面の女の子に向かって『いい身体をしている』などと普通に考えれば変態なのだが、その目に宿るのはまだ見ぬ強者への純粋な好奇心。決して子どもの女の子に興奮する変態という訳ではないのだろう。
それを示すように一道と名乗る男が奇声を上げると有無を言わさず強制的に手合わせが始まった。
「女の子に手を上げるなんて最悪だよ」
口ではそう言ったものの、目の前の男から放たれる圧力に私は全神経を集中させていた。
一応、手合わせのはずなので命は取られないとは思うが集中していないと大怪我をしてしまうだろう。
獅子堂一道――先ほどのライオン狩りからも分かっていたがこの男、只者ではない。
一道が仕掛けてくる。
最初の一撃、突きのスピードが速すぎて視界から消える。しかし私はサバンナで磨かれた動体視力でそれを読み、半身でかわした。
が、その瞬間、膝が飛んできた。
「ぐっ――!?」
私は腹にその膝を受け、後退した。
この体になってから初めてダメージというものを感じた。内臓が揺れる、威力がキリンの蹴りよりもすごい。でも、それ以上に驚いたのは技術だ。
なんだこれ、攻撃の繋ぎが格闘ゲームのコンボみたいだ!
私は前世も今世も格闘というものに今まで関わりがなかったので表現の仕方がこれくらいしか思い浮かばないがそれくらい出来上がっていて綺麗だった。
やられてばかりにもいかないと私は反撃に転じる。力任せの拳を彼の脇腹に向けて打ち込んだ。
だが彼はそれを肘で受け流し、足を引いて私の踏み込みに合わせて体を回転させる。
「獅子堂流・鉄扉!」
受け流しの体制から半身になって肩を勢いに乗せてぶつける技が炸裂した。
私は空中に浮かされ、背中から地面に叩きつけられた。
「くっ……!」
容赦のない踏み付けがきたので、私はすぐに跳ね起きる。
これが武術ってやつか。
今までの私は筋力で全てを解決してきた。だが彼はそれらを制御、誘導、崩すことができる。
お互いに何度も技を交わし、打ち合い、受け合う。私の攻撃も入らないし、相手の攻撃は今まで味わったことのないくらい痛いが私の体も頑丈で決定打が入らない。
くぅ、私の攻撃が効かないしキリンの必殺の後ろ蹴りを食らってもピンピンしている私にこんなダメージを負わせるなんてやっぱり武道家は鍛え方が違うな。
それから数十分はそうしていたと思う。
ようやく獅子堂が手を止め、息を整えながらニヤリと笑った。
「お前ほどの女が……このサバンナにいるとはな。いや、これはもう奇跡だぜ。いつものライオン狩りに来ただけだったんだがな、いい武術家に出会えたぜ!」
私はゼェゼェと息を吐きながら肩をすくめた。
「武術家ってわけじゃないよ。飛行機が墜落して、この辺に放り出されてそれで、生き残るためにこうなっただけ。」
私は一道に今までの人生を説明した。改めて言葉にすると、自分の人生の異常さに少し笑いがこみ上げた。
すると獅子堂は急に真顔になり、拳を握って宣言した。
「分かった家族もいないんだろ! なら、俺の家に来い、今すぐだ! 最強の格闘家にしてやる! いや、引きずってでも連れて行く!」
「……は?」
「お前には才能がある! 大丈夫だ心配するな、俺には中学生の息子がいてな。ゆくゆくはこいつと結婚させてお前には獅子堂流武術会館の館長を継いでもらうから将来も安泰だぞ!」
「えぇ……嫌なんだけど……」
私はあからさまに渋い顔をした。だって俺は元男だから男と結婚はごめん被りたいところだ。
それに今はここで暮らしてるんだし、今さら文明社会に戻っても馴染める気がしない。
私が断っても、色々な条件をつけて私を日本へと連れて帰ろうと一道は粘る。どんなに断っても、私が首を縦に振るまで一道はここを離れようとしない。
最後は私が根負けする形で一道の提案を飲んだ。
「分かったよ、私の負けだよ。日本に連れて行ってくれ、でも約束通り練習は私がしたい時だけ、生活の面倒は全部みること。約束だよ!」
私が念押しのため、そう言うと獅子堂一道はグハハと満足げに笑っていた。
そんな感じで最寄りの空港まで数日かけて歩いて行ったが途中、人里に入る辺りで流石に獣革を巻いただけのような服ではイカンと一道が服を買ってくれることになったのだが私がデカくなりすぎたので入る服がなく身長が大体同じくらいの一道のジャージを着て帰国することになった。
この一道から貰ったジャージ、おじさんの服ということで臭いかと思ったらそうでもなくフルーティーな匂いをしていたので見た目に反して結構ちゃんと身の回りのことに対して気を使っているのかなと思った。
----
面白いと思っていただけたら星と作品フォローで応援お願いします。
本日3話投稿しています。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます