目覚め

第2話 覚醒 Awakening

【悪い子には大きな鉤爪の怖いグールがかっぱらうぞ!!】


この世界では親が悪さやいたずらをする子どもにいう一般的な叱り文句である。




異世界・アラテア

エイメレカ大陸東南地区・バネゾラ王国、ギエナ高地

全人類議会指定の立ち入り禁止区域


男たちはこの立ち入り禁止区域に入るのは初めてじゃなかった。

標高がかなり高く、低地に比べると比較的温暖で多湿、激しい雨が降るのは珍しくない地域な上、危険な魔物が多数生息しているのに堂々と足を踏み入れる彼らは冒険者でも科学者でもなく、ただ単に調査隊を名乗る泥棒の集団だった、この国の国王公認の泥棒たちだった。


国王、フーゴ1世は元王国陸軍の中佐でチェーバス王朝の最初の王だった。カルテラ王朝の最後の国王、レファエル3世に対して暴力的なクーデターを起こし、老齢の彼を幽閉した後、残忍な手口で暗殺した。前国王派の貴族を一斉に粛正し、自分に忠実な者たちを貴族に祭り上げ、この国を手に入れた。


彼の力だけではなく、この世界の超大国であるチュウーエン労働者共和国、ローシェオ連合帝国、エーラン宗教国、そしてそれらの衛星国であるコーバー公国、ベロローシェ王国、ネカレグア公国などの支援を受けていた。


超大国の支援には理由があった。バネゾラ王国はこの世界有数の魔石採掘地で

その採掘量は少なくても10万年ほど尽きることがないと言われていた。


フーゴ1世は国王になって、14年が経っていた。体の不調を訴え、医師や治癒師が不治の病であることを伝えられた。


国王は死にたくなかった、そして自国のギエナ高地の奥地に生えるとされる神話級の植物、不治の病を癒せるアンブロシアの花を専属の精鋭部隊を派遣して、今に至る。


前回の調査で確保したキャンプ地にテントを張り、大半の【調査隊】がキャンプした。


「マデゥーロス宰相閣下、前回の調査で行けなかった滝の近くの洞窟に斥候隊が突入する。」


「ご苦労、エラルド大佐・・・隊員に持たせた小型映像水晶を通して、探索の様子が見たい。」


「承知いたしました、宰相閣下。」


数分後、一番大きなテントで隊長であるマデゥーロス国王宰相、副官のエラルド大佐、治癒師ヒーラー のキストロ導師と王国陸軍の士官たちが大きなスクリーンの前に座っていた。


下士官に命令し、水晶映写機がスクリーンに生映像を映した。


「マデゥーロス宰相閣下、斥候隊の隊長、ジアス大尉です、これから洞窟に突入します。」


映し出された若い士官が話した。


「うむ・・早く見つけるのだ、国王陛下が首都でアンブロシアを持っているぞ。」


「了解いたしました。」


10人の隊員が洞窟に入った。


「見つかると思いますか?・・・宰相閣下。」


キストロ導師は念話で話しかけてきた。


「どうだろう・・・前回見つけたアンブロシアの枯葉だけで陛下の病状が和らいだぞ。」


「そう言う意味ではありません・・・新な王朝の話をしているのです。」


マデゥーロスは驚いて、キストロ導師を見た。


「考えてないと言ったら、嘘になるな。」


「長く持たないのならば・・・このまま適当な植物の葉を持ち帰って、騙そうのではないか・・どうです?」


「いいアイデアですな。」


宰相は笑顔を浮かべて、スクリーンを見つめた。


「閣下!!大変です!!」


斥候隊のジアス大尉の映像が大きな声を上げた。


「どうした、ジアス大尉!!」


「大きなアンブロシアの花を見つけました!!」


神話の植物、アンブロシアは湿気が多く、暗い洞窟で群生する習性を持っていた。


「本当か!!?」


「はい!!ですが、強力な結界に守られているようです。」


洞窟の奥、大きなアンブロシアが生えていた。その後ろには神殿の封印のような扉があった。


「壊せ!!」


マデゥーロスは思った、国王を騙して、自分だけ伝説の植物とその花を独占すればいい。


「了解です、結界魔法崩壊兵器を撃ちます!!」


スクリーンはまぶしく光った。テントにいた全員が目を覆った。


「やめろ!!結界を壊すな、愚か者どもよ。」


突然、人類に敵対している亜人の一種、精霊人エルフの男性の映像が映し出された。


「なんだんだよ・・・あの亜人?!!」


「この中に封印された大群を起こすな・・・我々は苦労して封印したぞ。」


精霊人エルフの映像の後ろに人間の女性、小人 ドワーフの男性、ゴブリンの男性、オーガの男性、トロールの男性、赤い目の吸血鬼の男性、オークの男性、獣人女性の映像が続々映し出された。


「やめるんだ、愚か者ども。」


映像の者たちが叫んだ。


「映像魔法か?!!くだらん・・・人類の敵の話なんか聞けるか・・ジアス大尉、結界を壊せ!!」


「いいや・・・もしかしたら・・・閣下、やめましょう。」


先ほどそそのかしていたキストロ導師は顔に恐怖を浮かべていた。


「うるさい、この裏切り者!!!貴様を逮捕し、国王に対する謀反の罪で粛清する!!」


キストロ導師はマデゥーロスの顔を見た。


「本当に愚か者だ・・・」


「キストロ導師を捕まえろ!!謀反人だ!!」


導師が何かをつぶやき、目を開けたまま、地面に倒れた。


「閣下・・・導師が死んでいます」


エラルド大佐は導師の脈をはかりながら報告した。


「それでいい・・・大尉、結界と魔法映像を壊せ!!」


「了解いたしました、閣下。」


結界破壊兵器が再び発動され、結界と亜人たちの映像を消し去った。


結界が破壊されたことにより、空気に触れたアンブロシアがみるみるうちに急速に枯れ果てた。


「どういうことだ、大尉!!貴様の首が飛ぶと思え!!」


マデゥーロスは大きな声で怒鳴った。


「閣下・・・様子が変です・・・植物の裏にあった扉が開き始めた・・・」


大尉は震える声で開いたばかりの大きな扉に身を向けた。


洞窟の中で地震が起こったかのように地面が揺れ始めた。


「何か来る・・・全員、扉に向けて、魔法銃を構えろ!!」


ジアス大尉は震える声で部下に命令をした。


大きな騒音、まるで動物の大暴走のごとく、洞窟内及び映像水晶を通して、

テントで見立てマデゥーロスたちの耳を襲った。


「なんだんだよ!!ちくしょう!!」


マデゥーロスは悪態をついた。


大きく開かれた古い扉から、人間より人型の大きな何か出てきた。

それは大きな灰色の皮膚、灰色の髪、手には鉤爪、犬のような顔、蹄のついた足の真っ黒な目の生き物が現れた。


最初が一体だったが、扉から続々、雪崩のようにあふれ出してきた。


「撃って!!!」


恐怖に駆られた大尉の命令を言い終える前にその大きな人型の何か信じられない速さで大尉に体当たりをした後に映像が消えた。


「あれはなんだ・・・」


「閣下・・・あれはグールです・・・世界の終焉です・・・」


エラルド大佐は恐怖の声でマデゥーロスに報告した後、魔法拳銃で自分の頭を撃ち抜いた。





















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る