とぐ郎の練習用ノート
加藤とぐ郎No.2
環状線コルロフォビア
環状八号線を一台の高級車が走っている。その車内で、一組の恋人たちが談笑していた。
二人は職場で出会い意気投合、付き合い始めてもうすぐ三年になろうかという所だった。
同棲する事になって半年、彼の車で帰路を行くのも、すっかり習慣づいていた。
しかし、彼には一つちょっとした悩みがあった。それは井荻トンネルに入ると彼女が顔を助手席側の窓の方に向けてしまう事だった。
理由を聞いてもはぐらかされて答えてくれない。それが彼の心を少しモヤモヤとさせてしまう。
長い間、ずっと彼女は顔を合わせてくれない。話しかければ応えてくれるが、彼女から何かを言ってくる事はほとんどない。長い長いトンネルで景色に集中している訳でもないだろう。
一体なぜ、彼女が顔を向こうにやっているのか。彼は今日も悶々とハンドルを握っているのだった。
ちなみに、井荻トンネルには恐怖の殺人ピエロが出る、という全く根も葉もない都市伝説がある事を、彼はまだ知らない。それはまた別のお話ということで……。
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