第24話 醜悪な末路は次代へ

翌週、あたしは菜津を実家から追放した。

不思議と簡単だった。まず手始めに菜津と新くんが再び校内でヤッてる姿をカメラで撮影した。今度は図書館だ。1階から3階まである図書館の内、3階は個室制の視聴室だ。元々人気の少ない視聴室だが授業時間はより閑散としている。B級映画を流すなり彼女らはすぐさま個室でヤリまくった。性欲に踊らされる彼女らは警備意識が低いのか、端側の個室だからか、個室扉の窓から丸見えだ。個室扉の1.5割が中まで見える窓ガラス仕様だが、こういう行為を防止する為に設計者は備えたのだろう。カラオケ店がいい例だ。吐き気は全く無かった。むしろ、怒りを胸に長い間隠し撮りしていた。

初めて悪行をしていたし自覚は微塵も感じなかった。

翌日、あたしの母様と父様に送り主不明のメールを送信し、映像を見せた。送り主不明メールは適当にもう一つ作ったパソコンのアカウントだ。これも簡単だった。両親は怒らずとも菜津を責め、震撼した菜津は大学をひとまず休学して実家を去った。新くんはあたしの配慮で映像に写る彼の顔を厳重にモザイク処理した。当の菜津も新くんのことは流石に言っていない。あたしの幼馴染なら両親も認知しているからだ。

「比奈姉、しばらく離れるわ。私、良くないことして両親にバレちゃったから」

「そう、なんだ。良くないことはバレちゃったなら取り消せないし、菜津ならどこに行っても大丈夫。不安で仕方がなくなったらいつでも電話していいからね」

「比奈姉……。うん、ありがとう」

「もちろん。姉妹なんだから」

なーんて。電話なんてしないよ?いくら菜津から着信来ても絶対に手に取らない。あたしもこれから仕事をする立場になる。

「ごめん、忙しくて」と断ればいいだけ。

さよなら、クズ悪女。というあたしもクズ同然だけど。まあ、世の中誰かを犠牲にしないと成り立たない非合理な仕組みだし。

しかし、あたしは菜津に読まれていたようだ。

半年後、正式に当主の座に継いだあたしは佐古に告白して無事付き合い、3年後結婚に至った。更に3年後、あたしの子どもが産まれた。名前は本条佐古。男の子。

同時期、菜津は一般男性との子を産んだ。名前は林田万理。菜津の旧姓は本条。

果たして菜津はいつ、どこで、誰と、あたしの撮影した映像とカメラを入手したのか。仮に新くんに協力されたならあたしは間違いなく勘付いているはず。きっと予知能力が開花したのだろう。それも避けられない運命を変えることのできる予見に変容させて、仕返ししたに違いない。

翌年、突如、本条比奈と佐古新が死んだ。偶然か必然か定かではないが、実家である豪邸に火災が発生した。比奈と新、叔父、叔母共に逃げられずに自分が燃やされていることに気付かずに命を潰えた。鑑識と解剖によると、火災が発生する前に苦しみのない調合された特殊な毒が検出された。棚にはそれらの毒があったから心中と認定された。唯一火炎に飲まれず救助された佐古は児童養護施設へ。そして、灰に塗れながらも地下室へ大切に保管されていた鏡は誰かに持ち去られていた。鏡の呪いは、持ち去った者をターゲットに末代まで自死へ追い込むだろう。残滓は紫色の痣を滲ませる。

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