第6話 退院

それから3年が経過した。

無事、リハビリを終えて退院できた僕は晴れて19歳となっていた。高校は卒業できたけど、最初の1年半はただただ病室に籠もって最低限の学校からの課題をクリアする日々だった。3年にしては回復が凄まじかった。左半身の麻痺はほぼ完全になくなり、自由に単独行動できるとこまで至った。と言っても左手の薬指だけ鈍いのは唯一の心残りだ。

私服の状態で午前中の日光にあたるのが心地よい。

「いい日差しだ」

身体をぐんと縦に伸ばし顔を引き締めて病院を出る。さて、ここからが本命だ。ひとまず児童養護施設に戻って部屋に寛ごう。

「ん?」

病院を出てすぐ児童養護施設の先生が立っていた。側には黒の自家用車。迎えに来てくれたのか。

「ただいまー」

「おかえり。退院おめでとう!」

車の助手席に乗って窓から外を眺める。この都会も少しは変わったなあ。あの居酒屋やスーパーなんて見なかったような。

「ねえ、街。変わった?」

先生は一瞬横目で僕を見て運転しながら答える。

「ん?そうかなあ?特段大きな都市再開発はなかったよ?」

「そう」

4年、かあ。多少外には出たけど病院周りだけだったし。そのうち3年間は病室で毎日勉強と読書とリハビリの繰り返しだったな。過去に更ってるとあっという間に児童養護施設に到達した。扉を開けて廊下を渡り久しぶりに自分の部屋へ入る。掃除が行き届いていたのか、入院前と変わらない風景だ。時間が止まっていたようだ。すぐさまベッドに横たわる。

「ふぅ〜」

木製の天井、シミ増えたなあ。

万理と別れてから僕は鬱屈していた。特に最初の1年半は身体が全く動かせずとにかく気持ちも落胆していた。朝も昼も夜も自分が暗い影の中世界にいる想像が頭から離れなかった。廃墟の床に座る自分がいた。けど、いつしか光が差し込んだ。それは入院して1年を過ぎようとした最中だった。

リハビリ室にて偶然、あるお坊さんと会った。



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