第7話「ショップ」
さて、食事も済んだことだし、皿やら調理器具を洗って、既に置いてあった食器棚へと収納する。こういう工夫は本当に“異世界人”が居たんだな……と思わされる。それはもしかしたら地球からかももしれない、と。
先程の工作が失敗したことに関しての現実逃避をしながら、さて、何と言い訳しようかと考える。
肉の切り落としには使ったから、まぁ……まぁ。使ったと言ってもおかしくはないか? けど、メインには使ってないしな。どうしたものか……と考える。
もしかしたら疑われているかもしれない。内心ヒヤヒヤしながら、アリスの表情を伺う。
俺の考えは杞憂だったのか、アリスはただのツッコミをしただけだ、そんな顔をしている。
いや、俺の思い込みではなくもしや、本当にそう思っているんじゃないか?
それなら好都合だ。わざとらしく伸びをして、「そろそろ寝るかな」なんて呟いて見せる。
前の“勇者”にも執事なりがついていたのだろう。ベッドが二つあったもんだから困りはしなさそうだった。
「そうですね、お疲れでしょう」
「ああ、くったくただよ」と、相槌を打つも、まだくたくたはなっていない。
戦争やら戦闘やらをすればそれはくたくたになるだろうが、社畜という悲しき職業に就いていたため、一日でこの程度の行動なら全然余裕であった。
「俺は寝るよ、アリスも早く寝てくれよ」
努めて優しく言えば、「ありがとうございます」との返事が返ってくる。
――こうして誰かと気さくに話すことは今まで中々なかったな。だからかとても新鮮に感じる。
現状はニートではあるものの、今後の資金集めは既に考えている。
スキルで気になるものがある。「ショップ」というものだ。俺の予想が正しければ――。
「……ショップ」
小さな声で呟けば、商品一覧が現れる。ブロンズソード、ブロンズロッド、ブロンズダガー、素朴な盾、素朴な胸当て、松明……。
武器屋だ! ……そう目を輝かせるも束の間、設定金貨が高いのだ。……そう、設定“金貨”が。
ブロンズ系統は金貨十枚に、盾、胸当て等は金貨二十枚。
おいおいマジか……。とは言え、そこは想定済みだった。戦争も何もないこのエルア王国で武器が必要とされる職は少ない。
その証拠に――物価一覧が別のウィンドウで出ているからだ。
『ブロンズソード 平均額:五百銀貨 最高額:二十金貨』エルア王国よりも高い国はあるらしい。闇だな。某ゲームの課金ガチャよりも酷い。粗方武器具の方を見るも、今日買った武器よりも全て劣っていた。
あれでも粗悪品だったというのに。
落胆……はしない。ショップで俺が求めているものは違ったからだ。
次は、アイテム一覧。ポーション、ハイポーション、エリクサー……これでもない。じゃあこっちか?
素材一覧を開く。
――ビンゴ。鉱石、鉄鉱石、マナ草、その他諸々。所謂、『ドロップアイテム』。
これを使えばあることが出来そうだ、と思わずニヤけっ面になってしまう。
眠ると言った手前、他のことは出来ないが……。ん? 画面をよくよく見ると、『売る』という文字が浮かび上がっている。
興味本位で触れてみると――アイテムボックスに入っている、鎧や剣といったアイテムが表示された。それもタップすれば、「金額を決めてください」と表示される。
なんて最高なスキルなんだ!
相手が誰かは分からないが、ドロップアイテムもよし、自分のアイテムを売るもよしだなんて最高すぎる!
俺の計画がどんどん捗る。これは億万長者も目指せるかもしれない。なんて。
とりあえず……まずすることと言えば……。
文字の勉強だ。また画面とにらめっこするのか……そう思いながらも、ゲームでの勉強だ。苦になるはずもなかった。こうして、二日目を迎えようと、俺は眠りについた。
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