悪役令嬢は原作の強制力に負けてしまった

@komugiinu

第1話

0


原作の

登場人物とあらすじ


リリー 孤児 ヒロイン

エリザベス(リーザ) 侯爵令嬢、悪役令嬢

フレデリック 王太子 リーザの婚約者


その他モブ


孤児院で育ったリリーは、聖女に目覚めて、男爵家の養女になった。

王太子に見そめられて、悪役令嬢リーザを排除して、王太子と結ばれて、王妃になる。


以上


カテゴリー

ファンタジー系恋愛小説



1


悪役令嬢リーザの方に転生してしまった私は、

原作小説のような破滅を回避するために

日頃の行いを改めて

お妃教育にも精を出した。


しかし

それだけでは原作は何も変わらない。


悪役令嬢目線のストーリーは

たいてい見通しが甘いと思う。


努力をすれば報われると

必死に足掻くのは、原作をディスることになる。


思い上がりも甚だしい、

悪役令嬢がヒロインと同じステージで戦っても

勝てる訳が無いのだ、


なぜならば、相手はヒロインだから。


だからヒロインをリングに上げてはいけない、

物語が始まって2人が出会う前に決着をつけなければ。



私は自分磨きと並行して

ヒロイン、リリーのフラグを最初から折りまくろうと決心した。


何しろ今の時点では、侯爵令嬢である私の方が圧倒的に有利だ、


ヒロインの絶対的スキル、“聖女の力”さえ覚醒させなければ悪役令嬢にも勝機がある、


“聖女の力”に目覚めるキッカケを全て潰してしまおう、


そう考えた私は

ヒロインのいる孤児院の隣に、誰でも無償で診てもらえるでっかい病院を建てた。


近隣の住民は、些細な病気や怪我でもすぐに病院に駆け込み、

リリーは聖女の力(治癒力)を発現することはなかった。


ヒロインが予知した災害には、予め十分な対策を施しておいた。


結果的に、いずれも大事には至らず、

リリーは聖女の力(予知力)に気づくこともなかった。


原作を知っている私だからできたのだが

計算外な事に、私にも予知力があると周りから思われてしまった。


リリーは聖女には目覚めなかったが

年頃になっても孤児院に残り、

孤児たちの面倒を見ている美しい少女を、ある男爵が気に入った。


男爵は彼女を養女に欲しいと願った。


これはチョットまずい、

聖女の力は持っていなくても、ヒロインが舞台に上がってきてしまう。


私は一計を巡らせた。


“年頃のご子息がいるのなら、養女ではなく、

息子さんの奥様として迎えられたらいかがですか?”


と、孤児院の院長に、男爵を説得して貰ったのだ。



リリーは貴族と結婚できると知って、大喜びで嫁に行った。



やった!

これでヒロインは王太子との結婚レースから離脱した!


悪役令嬢だったリーザは、めでたく王太子の正式な婚約者になった。


私は勝った!

原作をひっくり返して、

遂に、王太子妃の座を手に入れたんだわ!



ところが、結婚式を挙げる当日の朝

目覚めると別人になっていた。

ヒロインと中身が入れ替わっていたのだ。


きったねーっ!

何なんだ、この強引なやり方は!


悪役令嬢は原作の強制力に負けてしまった。

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