第3章 通話のおかげで縮まる距離

第14話 ドロップさん

 翌日の夕方、「#つわぼ」の投稿を見ようとSNSに入ると、DMのタブで①というマークが表示されている。きっとヨッシーさんからに違いない。


【今日も繋ぎたかったんだけど、ちょっとバタバタしてて難しいかもしれないです、ごめんなさい】


 泣き顔の絵文字と一緒に送られたきた。そっか、ヨッシーさん繋げないのか、残念。


 でも、時間が空いたのに、ただスマホを眺めて過ごすのは勿体ない。

 今日は金曜だから夜更かしできるし、久々に違う人と話してみよう。そう思って、夜に募集してみることにした。


【#つわぼ です。特に熱い趣味とかはないけど、ゆったり会話できたら嬉しいです】


 投稿するときは毎回、こんな中身のない内容で大丈夫かと心配になる。


 もっと、「音楽めっちゃ聴きます!」みたいにみんなが共通で話せる趣味とか、「ヒヨコのオスとメスを見分けられます!」みたいに食い付かれそうな特技とか書いた方がいいんだろうな。あんまり趣味らしい趣味もないから、書けることが少ない。


 が、心配を他所に、すぐに一人からDMが来た。


【お久しぶりです! 良かったらまた話しませんか!】


「ドロップさんって何話したっけ……?」


 連絡をくれたのは、一ヶ月くらい前に一度だけ話したドロップさんという女子高生。そういえば、だんだん思い出してきた。前は挨拶も早々に「恋愛相談乗ってください!」と前のめりに相談されたんだったな……。


 相手の男子にかなりご執心なうえに、相手がそこまで彼女の方に気が向いていないようなので、「積極的にいくといいんじゃないですかね」とアドバイスした気がする。


【はい、ぜひよろしくお願いします!】


 返信すると、サムズアップのマークがついたので、通話ボタンを押す。


「は、はい、ドロップです!」

「あ、ドロップさん、お久しぶりです。ムックです」

「ムックさん、こ、こんばんは!」


 そうそう、前もこんな感じで、緊張気味に話してたな。


「ドロップさん、DMありがとうございました」

「いえいえ。ムックさん、今日も良い声ですね」

「そう言ってもらえると嬉しいです、ありがとうございます」


 うん、だいぶ良い感じの滑り出しだぞ。


「あの、早速ですけど、恋愛相談に乗ってほしいです!」

「早くないですか」


 通話開始から二十秒で知らない男子に恋愛相談するなんてことあるの。そういえば前回もこんな感じだったから敬語のままだったんだよな……。


「あの、もし時間あったら、少し雑談しません? なんか、俺もドロップさんのこと、もう少し知った方がちゃんと相談乗れるかなって」


「あっ、それいいですね! じゃあ……今ムックさんって恋愛してますか?」

 話聞いてるのかこの人。



「いや、あの、恋愛以外の話どうです? 好きな食べ物の話とか。俺はベタだけどハンバーグ好きなんですけど、ドロップさんは何が好きですか?」


「そうですね、オムライスとか好きですね。昔ね、好きな人とデートに行ったときのお昼で食べて――」

「分かりました、俺の負けです」


 ダメだ、ドロップさんって恋愛の話してないと体が消えちゃうタイプの人なんだきっと。


「じゃあ、俺でよければ相談乗りますよ。別に恋愛経験とかほとんどないですけど……」

「ううん、男子の気持ちが分かるってだけで助かります! 小学校からの幼馴染で好きな人がいるって前にも話しましたよね? で、向こうも私のことが好きなことは分かってるんですけど、最近そっけなくて困ってるんですよね。それで、どうしたらいいか訊きたいんです」


 そう言えば、そんなこと言ってたな。思ったより真面目な相談だったから、真面目に答えるしかないだろう。


「ううん……なんか前も、相手が乗り気じゃないようなこと言ってたと思うんですよね。ドロップさん、こんなこと言ったらすごく失礼かもしれないんですけど、ひょっとして両想いじゃないってことは――」

「それはないんですよね! 好きだっていうのはちゃんと伝わってくるんです」


 彼女の思い過ごしかとも思ったけど、俺の言葉を遮ってまで自信満々に言うってことは本当に彼の方も好意があるのかもしれない。これ以上、彼女に否定もしづらいから、両想いの前提で話した方が良さそうだ。


「前にムックさんに話したとき、積極的にいくといいよって言われたんで、結構アプローチしてるんです。甘い物食べにいこうよ、とか何度も誘ってて。でも、反応が薄くて……これって、彼が妬いてるんですかね?」


「え、何にですか?」

「甘い物に」

「さすがに眼中にないでしょ」

 甘い物って連呼してるから妬かれてたらどうしようかと思いました、とドロップさん。

 マドレーヌやクッキーなら焼かれてるだろうけどさ。


「甘い物、興味ないんですかね。中学の頃は何回か食べに行ったんですけど……」

「まあ確かに。男子も高校生になると、甘い物食べる回数減ったりしますよ。カフェじゃなくてラーメンとか食べて帰ったりするし」


 俺も思い返してみると、中学の頃までは雫や他の男子と一緒にケーキやドーナッツを食べて帰ったりしたことはあったけど、今はしょっぱい物の方が好きだ。

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