狐と菫
里蔵 光
狐と菫
誰も來ない様な荒地で、
淋しいらしいのです、時々、大きな溜息を
そろそろと春が近付き、此の貧相の狐でさえも、何だか心が、浮き浮きして來ました。何故だか温かい予感がし、或る日彼は自分の塒を遠く離れ、人里近く迄下りて來ました。其の方に何かの用があった訳ではなく、唯何と莫し、そわそわして、足の向く
毎日菫を観に行く事も忘れません。美しさを
或る時彼は、少し遠い所迄食糧を獲りに行き、其の際他の狐達と派手な立ち回りをさえ演じて、そうして結局は敗退し、彼等の僅かな食べ殘し丈を手に入れて、
翌日は小雨が降りました。こんな天気でも、狐は毎日の日課を欠かせた事がありません。
(終わり)
一九九六(平成八)年、一月、十一日、木曜日、先勝。
狐と菫 里蔵 光 @satogura
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