第2話 夜の混沌

 サイコエネルギーの糸を伸ばし、一定の距離で空間に固定、縮む勢いで前に飛ぶ。空中で回転したり手を伸ばしたりして追い風を全身で感じ、大きく息を吸う。


(この世界を知っちゃうと、友達と飲みとか、遊び行くとかマジで無駄って思っちゃうね! まあそもそもそういう遊びに行く友達はいないんだけど)


 今向かっている方面は、サブカルチャーの街。アニメゲーム漫画、バンドに通信機器が一挙に集まっている場所だ。私はオタクと呼ばれるほどに熱意を持って関わっているわけではなく、普通に気になるアニメを見て、気になるゲームは普通にやる程度だ。その街の何が好きなのか、それは夜になるとイルミネーションかと見間違うほどに輝く看板や路上ライブ、振られるサイリウム、飲み屋の店たちを上から眺めるのが好きだからだ。私はサイコエネルギーを幅広めの足場にして空間に固定、足を乗せて私も空間に固定して下を眺める。


(まだこの感覚は慣れないな。いくら超能力は物理法則を無視出来るって言っても、すぐに慣れるわけないし)


 風が吹き、服や髪がなびく。ちょっとずつ場所を変えるために移動し、また空間に留まる。すると、どこからか、悲鳴らしき声が聞こえた。見てみると、明らかにひったくりにあったであろう女性と、明らかにひったくりをしたであろう慌てぶりの男が走っていた。と思った瞬間、男は一瞬にして消えた。


(まあテレポートが使えないとあんなひったくりしないよね)


 よくあるテレポート使いの窃盗事件だ。別に私がなんとかしようとする気持ちはあまりなかったが、私のすぐ近くにその男が現れたのを見ると、流石の私も見て見ぬふりは出来なかった。

 サイコエネルギーの糸を男のいる方向へと伸ばし、私は飛んだ。

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