15.5話:道の間に

 僕達はガレア王国を出て新な国を目的地に歩いていた。

 これはそんな道の間に起きた休息のお話。


────────◆◆◆◆◆◆───────


「そう言えばさトランの魔術書ってどなってるの?」

「これ?」


 僕は"無限収納庫アペイロス・レポノ"を発動させ、そこから魔術書を取り出す。


「そうそう、その本さ本って言うかもはや板だし、文字も書いてないのにどうやって魔術を使ってるの?」

「確かに。それ俺も気になってたわ」


 アデラが横から顔を覗かせてくる。

 確かにちゃんと説明したこと無いな、これから戦闘で連携することも考えて仕組みを説明しておくか。

 と言ってもなぁ…


「この本正直、僕もあんまり仕組みをよく理解していないんだ」

「なんだよ~分かんねぇのかよ」


 アデラが肩を落とす。

 しょうがないだろ、一応貰い物なんだから。


「せめて魔術の発動の仕方だけでも教えてよ」

「うん、いいよ」


 アルシアの言葉に応えて僕は説明をしながら魔術を発動させる。


「魔術書を使った魔術は普通書かれている文を読み上げて発動するんだけど、僕の場合は使う魔術を頭の中に記録しておくんだ」

「記録しておく?」


 アルシアが首をかしげる。

 分かりやすく言うのなら僕はPC本体で魔術書はUSBとでも言ったら良いんだけど…これをどう説明しようか。


「まぁ全部頭に入れてたらパンクしちゃうから基本は魔術書に魔術を記録しておくんだ」

「ーーん?」


 ますます険しい顔になってしまった…


「つまり使う魔術だけをトランの頭に入れてるってことだろ?」

「う、うん」

「んで、基本は魔術書に魔術の事が書いてあるって訳だ」


 アデラがあっさりと説明を終わらせる。

 説明を聞いたアルシアは"なるほどぉ~"と言うような顔をしていた。

 僕の説明は難しすぎたのか…なんだ少し悔しい気分だ。


「ま、それで頭の中にある魔術を発動させると」


《"拘束蔓ヅルクハイト"》


 僕は近場の岩をつるで持ち上げる。


「こんな感じ」

「お~!」


 目を輝かせる少女はパチパチと拍手をする。

 こうまっすぐに誉められるとなると少し照れくさい。


「そう言えばアデラも魔術を使えるんだよね?」

「ああ!と言っても俺は自分の強化魔術だけだけどな」


 アデラが強化魔術を使っているのは知っていたけど、自分にしか使えなかったのか。


「アルシアはどんな魔術を使えるの?」

「私は攻撃魔術は使えるけど、使いすぎたら制御が効かなくなっちゃうの。後は他に治癒魔術を使えるよ。自分には使えないんだけどね」


 治癒魔術…そう言えば幼い頃に小さな子の怪我を治したって言っていたな。


「治癒魔術って言っちゃかなり習得に難しいんだろ?」

「うん、何でも治せる訳ではないとは言え人体に関する事だからね」


 魔術と言って人体に関することだ、医者みたいに深く知る必要はないけどそれでも習得に時間が掛かるのは事実である。


「どうやって習得したの?」

「習得したと言っても両親の影響って言うか、安定して使えるのは魔力の暴走があってからだったから、何とも言えないんだよね…」


 アルシアは一度暴走し自身の両親を殺してしまっている。

 きっとこの時に魔力を一気に引き出した事により、治癒魔術を使えるようになったのであろう。


「ごめん辛いこと思い出させるような事聞いて」

「あぁ、悪かった」


 僕達は頭を下げる。

 僕達の配慮が完全に欠けていた、しっかりと反省せねばならない。


「ちょっと!?頭を上げてよ二人とも!」


 アルシアはあわあわとした様子でいる。


「二人が謝ること無いって、私は質問に答えただけなんだから」


 そう彼女は言ってくれるが正直罪悪感を強く感じてしまう。


「第一、二人なら私の事を考えてくれてるのも分かってるってだからほら、顔を上げて」

「そうか…ありがとうな」


 僕達は顔を上げ感謝を伝える。


「とにかく、これで全員どんな事が出来るかある程度分かったんだし連携とかも上手く出来そうだね!」

「だな!」

「僕としてはあまり戦いたくはないんだけどね…」


 すっかり元の調子に戻り、こんな他愛もない会話をしながら歩いていく。

 次の国を目指して。

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