メガネ越しにブラコンがうるさい
海音
青春とブラコンは、死んでも止まらない!
第1話 あおちゃんは、僕のヒーローだった。
「はるくん、おはよ!今日も可愛いねっ♡」
「ふぁ……おはよう、あおちゃん。今日も元気だねぇ……」
「そりゃあ、はるくんと一緒に学校行けるんだもん♡寝起きのはるくんを独り占めできるのも最高!」
「なにそれぇ……」
「え?当たり前でしょ??毎日が『Precious morning』なんだよっ♡」
「……英語、分かんない」
「んもう!それじゃはるくん、あおいとおんなじ高校に入れないよぉ?」
「え、あおちゃん女子校じゃん」
「バレた〜!でもでも、はるくんならロングのウィッグだけ被っとけば、
突然、僕の前に立ちはだかるあおちゃん。
その小さな両手で、そっと僕の前髪を整えてくれた。
「ほら、ここ。右側、ぴょんってハネてるの。よしよし……はいっ!今日も宇宙一可愛い(私だけの)中学1年生♡」
「あ、ありがと……」
多分、誰よりも僕の顔見てるなぁ。
さて、そろそろ行かないと――
「おーっと、まだまだ!荷物検査が終わってないでしょ!?」
「大丈夫だって。昨日もバッグの中身、写真送ったし……」
「(それは保存してるけど)だーめ!この前、お弁当のお箸忘れてたもん!もっかいチェックしまーす」
「わぁ!?ちょっと……近いってば!」
「ん?近くて問題ある??」
「ないけどさ……」
周りの人がすごい目で見てるよ、なんて言ったら……あぁ、恐ろしい。
あおちゃん、僕が中学に上がってから、なんかエスカレートしてるような気がする。
「ねぇ、よく聞いて?はるくんはね、すっごく可愛いの。だからね、あおいがこうやってお世話してないと、すぐ変な女に狙われちゃうんだよ??」
そう言って、あおちゃんはにっこり笑う。
うん……てかもう、既に狙われてるというより、捕まってるよね僕。
でも、あおちゃんだから、僕はそれが少し心地よかったりするんだ。
僕のことを心底愛おしそうに見つめて、いつも通りの調子で、いつも通りの朝が始まった。
やっと家の前から動き出した、あおちゃんと僕。
ここから、今日もお決まりの『思い出トーーーク!』が来るぞ……
「はるくんが幼稚園の頃さ、毎日のようにお熱出してたよねぇ……もう、あおい心配すぎて、あおいが風邪菌もらったらはるくんが治るんだーって、ずっと添い寝してたなぁ」
「……えーっと、ごめ――」
「ねっ?すっごいくっついて寝てたもんね?覚えてないわけないよね、はるくん?」
あおちゃんの、『思い出トーーク!』に対する評価はシビア。
でも普通、幼稚園の頃の話なんて覚えてないよ……とは、口が裂けても言えない。
「う、うん。おかげで、寂しくなかったよ……」
案の定、添い寝後のあおちゃんは毎回、風邪をもらって学校休んでたらしい。
あおちゃんママからの話、聞いといて良かった……!
「はるくんと私、3歳違うのがなぁ……だって、中学も高校もかぶらない!!最悪!!」
「(あれ、さっき最高〜とか言ってなかったっけ?)」
「でも、あおいには分かる。はるくんとは、何があっても一緒にいられるって!だから、これからもずっと、あおいの可愛い可愛いはるくんでいてね♡」
「うん、分かったから……ほら、遅刻するよ。あおちゃん」
「あっ!ほんとだ、やばい!!じゃあ放課後、速攻で迎えに行くから校門で待っててね♡いってきまーっす!」
「分かってます!……いってらっしゃい、あおちゃん」
これが、僕とあおちゃんの、最後の朝だった。
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