月を見て太陽を想う(過去を越えて未来へ)
M6363
第1話 セイ(禍のめざめ)
僕は,学校の図書館で数ある本の中の一冊に
眼を引いた
天使の絵が描いてある埃まみれの本を
見つけ読んでいた
本の題名は(記録の書 月と太陽と星語り)
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「初めまして、こんにちは」
私の名前は、(ハミエル)この世界の記録者
私は,滅んだ世界や時間
そして世界救った者を記録し後世に遺す者。
私は,あなたに知って欲しい世界がある。
その世界は,本来ならば滅びの道を歩み
破滅する運命にあった。
だが二人の青年とその仲間達が
破滅の運命を塗り替え、世界に希望を与えた
だがその事実は私以外誰も知らない…
あなたには全てを知る権利がある
そしてこれから話すのは
見た,少年達の闘いの記録である……
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走る度にガタガタと鳴る,白く古い車の
窓から ,見える永遠と広がる里山の景色と
収穫が終わった、田園の風景に飽きて、
僕は,走り過ぎ去る電柱の数を数えて
気を紛らわしていた。
助手席に座ってうなだれながらそんなことをしている僕の姿を見て
運転をしている叔父さんが首を降りながら
ため息をしていた
僕だけ,何でこんな目に合わないと
いけないのだろう…
僕は,絶望と思春期特有のイライラが
交わり複雑な感情,が胸に渦巻いていた。
この青年の名前は、(
捜査中に犯罪者の手によって殺害される
殺害される
彼は天涯孤独になった
彼は母方の祖母に引き取られる事となった
彼の様な人間は,2025年には沢山いる。
この世界は,様々な厄災により深い闇に染まっていた。
自然災害は、生者の瞳から,光を奪い
食糧危機は虚ろな闇を広げ,飢えた獣の様に
互いの物資を睨み奪い合う
犯罪は我が身を守る為に肉親すらも,見捨てて逃げる者もいる。
正にこの世界は,神に見放されたかの様な
絶望という漆黒の深い闇が,人々の心を染め
混沌と光をも飲み込む,深く暗い世界が
広がっていた…
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遠くからボロボロの看板が見える
「
僕はため息をしながら窓から空を眺めて
家族のことを考えていた
「寂しい、皆に会いたい…」
むくれている僕に叔父さんが
「元気出せ必ず良いことがあるから」と
お菓子をくれた
この優しい叔父さんは,母親の同僚の警察官で
「
僕は優しい藤堂さんに
「ありがとうございます」といって
笑顔でお菓子をほおばった
藤堂さんが寝ていた,僕の肩を優しくを
揺らし
「着いたぞ,起きろ!」
僕は,気が付いたら寝ていたのかと
口から出ている涎を腕で拭い
ボサボサの髪の毛を手で整え
欠伸をしながら車から降りた。
ずっと座り心地の悪い,助手席に座っていたので,深呼吸をしながら背筋を伸ばした。
近くから川のせせらぎと風が吹く度に揺れる木々の音が聞こえる。
僕は辺りを見渡すと土の香りと
肥料の牛糞の匂いが鼻の奥に入りむせていた
遠くで鳥が鳴いているおそらく鳩だろう…
「クックッポッポー」と鳴き電線に止まり
同じ鳩に語り掛けていた。
僕は、一つの看板を見つける。
あれは何だろうと、飛んでくる虫達を、
手で払い、その看板の近くへ向かった。
僕は,看板に書いてある文字を読んで見た。
(全日本イタコ協会会長推薦清めの水)と
書いてある…
その横に永い間放置されていたのだろうか
雑草が生い茂り、そこに
隠されていたかの様に
怪しげな自動販売機が設置されていた。
そこには500mlの水しか売っていなかった。
しかし貴重な水が何と50円で売っていた。
温暖化の関係で世界規模での干ばつがあり
水はとても貴重な資源だった。
その水が50円で,売っている事に驚いた。
僕がいた町なら水は貴重で50円では
とても買えなかった。
藤堂さんも「安ッ」と言いながら
ジーンズのポケットから,財布をだして
ありったけの小銭で,自動販売機の水を
買いだめしていた。
僕は、目的地に関する情報が,無いかと
辺りを見渡すと幼い頃,母親から聞いた
昔話みたいな見覚えのある藁葺き屋根の建物がそこに建っていた
僕は,幼い頃に片手で数える程しか,来た事が
ないが,この場所が何故か懐かしく
心が安らいだ。
玄関入口へ歩いて行くと
筆で書かれたいるのだろうか
達筆な大きな文字で表札に
(全日本イタコ協会会長 日髙
僕は、ばあちゃん家についた
僕の母親の家系は,代々陰陽師の血を
引いていて
特殊な能力を持っている人達がいるが
今は,その能力も失われつつある…
と僕は母親から聞いていた。
僕にはその能力は受け継がれていなかった…
母親は陰陽道の能力で式神を使役し洗濯等,家事をしていた。
僕には普通の事だったが、母からよく 「この事は誰にも言っちゃ,いけないよ」
「知らない人はとても驚くから」
と笑いながら話していた事を
想いだしていた。
僕は,藤堂さんの車から自分の荷物と
三人の遺骨を下ろし,重そうに抱えていると,
藤堂さんは,僕の頭を撫でながら
「お前は,家族だけ連れていけ,後は俺が運んでくから」と僕の服と学校の教材等の荷物をひょいと持ち上げ玄関まで運んでくれた。
僕は,ばあちゃんが僕の事を覚えているか
不安に思いつつ少し緊張しながら祖母の家のインターホンを鳴らした。
(ピンポーン)と音が鳴る
パタパタ足音が聞こえ此方に近付いてくる
すると優しい声で
「は~い少々お待ち下さい,今開けますね」
引き戸からガラガラと開く音が聞こえ
白髪頭のとても優しいそうな女性が出てきた
僕の
僕は,緊張しながら会釈をすると,それを見た
祖母が,温かく優しい笑顔を浮かべて
「遠くからよく来たね、カズちゃん辛かったね、ここにずっといればいいよ」
と優しく僕の頭を撫でなから言った。
僕は,何故か涙が眼から溢れ
気が付いたら大声で泣いていた。
泣いている僕を見つめ
祖母はずっと優しい瞳で僕を見ながら
温かく手を握ってくれていた…
しばらくすると僕は落ち着き
ばあちゃんが優しい声で
手をふり ,(こっちこっち)と僕達の方を 見ながら
「ほら遠くから疲れたでしょ」 「ミーちゃん《藤堂未琴》も」
「お疲れでしょう,お茶でも飲んで行きましょ」
と奥の和室に誘っていた
藤堂さんは「ミーちゃんは止めて下さい」と苦笑いをしながら会釈をして
僕の荷物,を和室まで運んでくれた
僕は三人の遺骨を持って和室に向かった…
三人の遺骨を
するために仏壇に納めた。
雪ばあちゃんが,お経を唱え
僕と藤堂さんは三人に御線香をあげ
手を合わせる。
ばあちゃんが三人に向かって
「お帰りなさい」と語りかける…
ばあちゃんが,藤堂さんの方を向いて,
「この度は孫と家族を無事に連れて来てくれてありがとうございました。」
とばあちゃんが頭を下げて言う。
藤堂さんは「いえ俺は何も出来なかった」 「海里さんや夢莉ちゃんを守れなくて 」 「すみませんでした」
と唇を噛み締め、自分の手を握り締めて
ばあちゃんに深々と頭を下げながら言った。
ばあちゃんは藤堂さんに
「あんたのせいでは無いよ」
「余り自分を追い詰めちゃいけないよ」
と話し自分の膝を叩き「ヨシ」と言いながら
「カズちゃんとミーちゃんもお腹が空いたでしょ」
「今日はご馳走作らないとね」
とばあちゃんは台所に行こうと立ち上がると
藤堂さんは
「俺は良いですこの後、署に 戻らないと いけないので…」
とばあちゃんに会釈して三人の遺骨に一礼をしながら立ち上がり帰ろうとした
ばあちゃんは藤堂さんを呼び止め
「ミーちゃん」
「ちょっと待ってて」
とばあちゃんが台所に向かう
スリッパの音がパタパタと鳴る
風呂敷に包まれた物を藤堂さんに渡して
ばあちゃんが「これ帰りに食べな」と
おにぎりと漬け物を渡した
藤堂さんは,ばあちゃんに会釈をしながら
風呂敷を受け取り「ありがとうございます」
と言い,また古い車に乗りこみ
エンジンを掛けると、ガタガタと
変な音がする
車にのって帰って行った。
僕とばあちゃんは,藤堂さんの見送りを
終えると
ばあちゃんが僕に「じゃあ一緒に夕御飯作るかね。」と言ったので僕は「うん」と頷き
ばあちゃんの後ろを追いかけて歩いた。
夕御飯が出来た
(芋の煮っころがし)と
(野沢菜の漬物)と
(山菜の味噌汁)
そして僕の大好きな(甘い卵焼き)が
食卓に 並んだ
僕は,ばあちゃんのとなりに座り
久し振りの一人だけではない食事に喜びを
感じていた。
僕は箸を持ち
好きな卵焼きを食べようとしたら
ばあちゃんが笑いながら
「こら、いただきます言ってからだわね」
と言った。
僕は「いただきます」と言って久しぶりの 温かいご飯を口一杯に頬張り食べる。
ばあちゃんが作ってくれた温かいご飯を
お腹が膨れる程,食べ幸せを
噛み締めていた…
今僕は、両親と妹がいる和室でゴロゴロと
寝転がっている。
畳の匂いと御線香の香りが僕の心を穏やかにする。
ふと辺りを見ると和室の柱に傷が見えた。
母親が幼い頃,背比べをした時の傷で,僕も
ばあちゃん家に遊びに来た時,妹と一緒に
背比べをしてた事を,懐かしく思っていた。
「カズちゃん、お風呂に入っといで」
ばあちゃんが慣れた手付きで夕御飯の
後片づけをしながら僕に言った。
僕は「は~い」と言ってお風呂場に行った
ばあちゃん家のお風呂は、外の外観と違い、 湯沸し器がついている。浴槽は洋式で足を
伸ばせる広いお風呂だ。
ばあちゃんはいつも僕と妹がお風呂に入る時黄色いアヒルのガーガーちゃんを
浮かべてくれた。
ばあちゃんにとっては僕は、いまだに幼い頃のままなのだろう,浴槽に黄色いアヒルを
浮かべてくれてあった。
僕は、身体を洗い流し,浴槽へ沈むと
黄色いアヒルを手に取り眺めていた。
(ぴちゃん)
お風呂の天井から水滴が滴りおでこに落ちて
僕は、はっと眼が覚める
「そうか寝ていたのか」と思い、のぼせる前にお風呂から出て脱衣場に行く。
脱衣場は二帖半位の広さに洗濯機と洗面所
がある。
竹で出来た籠に,寝間着が置いてくれてある
ばあちゃんが用意してくれたのだろう…
僕は,冬物の寝間着に着替え
ばあちゃんの手作りの
廊下に出た。
廊下は,薄暗く外の木々が風に揺れる音だけ
が聞こえる。
僕は,少し心細くなりばあちゃんを探して
廊下を歩く。
ばあちゃん家は,築150年の古民家なので
歩く度に床がギィギィとなる。
部屋の奥の角部屋から明かりが覗く
「ばあちゃんの部屋だ」と僕は思い,
部屋の前に立つ。
僕は,ばあちゃんにお風呂とご飯のお礼を
言いたいが、何て声を掛ければ良いのだろうと悩んでいたら、
ばあちゃんが「カズちゃんかい?」
「部屋に入りなね」と声を掛けてくれた。
僕は障子を開けるとばあちゃんは、
座椅子に座りながら編み物をしていた。
僕は,ばあちゃんに笑いながら
「ご飯美味しかったありがとう」
「お風呂も気持ち良くて寝ちゃった」
と伝える。
ばあちゃんが優しい瞳を僕に向け
「そうかい,それは良かった、今日はつかれたでしょ,遅くなったでね,もう寝なさい。」
と言い僕の頭を優しく撫でた。
僕は「ばあちゃんおやすみなさい」と言って
和室に向かい布団へ潜ると直ぐに
深い眠りについた。
強く冷たい北風が吹く
障子がガタガタと鳴り、僕は目が覚めた。
1月下旬の水鏡村は、とても寒く水道も
すぐに凍結する。
ばあちゃん家も雨戸をしっかり閉めて
寒さ対策をしているが隙間風が入り
僕が寝ている部屋も冷えきっていた
今僕は、尿意にさいなまれ、布団から出るのをためらっていた。
いよいよ我慢出来ず渋々布団から出ると
冷気が僕の身体に刺激を与え尿意が
差し迫ってきた。
流石にこの歳で漏らす訳にはいかないと
トイレに急いで向かう
吐く息が寒さで白くなる。
トイレは、昔と同じ作りで庭の離れに
有るので雨戸をガタガタと開け
庭のサンダルに履き替え
トイレに向かって走った。
トイレにたどりつき扉を開ける
何故か水洗の洋式トイレだが
そんなことは、どうでも良いと
座り用をすます。
凄まじい勢いで出てくる,尿を見て
誰にも言えない秘密が,生まれなくて
良かったと僕は,安堵した。
用を足し終え,身体がぶるぶると震えた。
何故人は,用を足したら震えるのだろう?とどうでも良い事を考えていた。
僕は、手を洗いトイレから出ると強い北風が吹き,周りの枯れ木が風でざわざわと揺れる
芯まで冷えきった身体を擦りながら庭を歩いていると…
何処からか「こっちだよ,こっちに来て」と
誰かが、呼ぶ様な声が聞こえる。
僕は、辺りを見渡すが周りに灯りが一つもないが人の気配を感じた。
また「こっちこっちだよ」と声が聞こえる。
声のする方を見ると、静寂と深い暗闇の中に
蒼白い月の光りを浴びた。
綺麗な蝶が目の前をひらひらと舞っている。
まるで誘われるかの様に僕は不思議な蝶々の後を歩いた。
離れの小さな物置小屋にたどり着く。
また強い北風が吹く木々"がさがさ"と
ざわめき、蒼い月が雲に隠れて
さっきの蝶が物置小屋の中に消えて行った。
僕は物置小屋の扉を開け様とするが
立て付けが悪いのか上手く開かず
ゴトゴトと音が辺りに響く
やっと開けると中は埃が舞っていて
それを吸い込み、僕はむせていた。
雲のせいで月が隠れ、深い暗闇で
周りが全く見えない。
灯りがないかと手探りで辺りを触ると
紐らしき物が手に何か当たる。
紐を僕は、試しで引っ張った。
カチャと音がすると、物置小屋に
薄暗い明かりがつく
薄暗いのであまり見えず,目を凝らすと
埃が舞い目に入る。
僕は,目を手で擦りながら目を開けると
そこには、埃が被っている机があり
小さい女の子と一緒に写る
僕と同い年位の、青年の写真が
飾ってあった。
「引き出しを開けて」とまた声が聞こえる。
机の上から二番目の引き出しが蒼白く光り
僕は、蒼白く光る引き出しの取っ手を掴み
開けるそこには…
[古いノート],[禍々しい漆黒の穴の空いた本]
[一振の脇差]が引き出しに入っていた。
僕は、何かに操られたかの様に
見るからに禍々しい本を手に取る
この本は漆黒の表紙に赤く不規則な線が
張り巡らされ、生き物の血管の様に見えた
その本は、ドクン、ドクン、と脈を打つ度に
蒼い光りを放つ
僕は、本の赤黒く錆びた留め金を外し
本を開く
そこには読めない赤黒い文字が書いてあり
その本から不気味な低いうめき声が聞こえ
腐敗臭が鼻の奥に刺激を与える
黒い膿の様な物が出てくる、本を閉じる事が出来ない。
黒い膿は,僕の手を
引っ張り本の中へ引きずりこもうとする
僕は,何の抵抗も出来ずに
本の中に引きずりこまれた…
◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼
気が付くと僕は、何処かの山奥にいた。
辺りは、不気味な程の静けさが漂っていた。
危険だと僕の心が叫んでいる。
だが手足に木々が絡み付き動けない、
息苦しく重々しい空気が漂い
何か腐った臭いと鉄と血生臭さが強くなる。
ザクッザクッと足音が聞こえる。
僕の方に向かって足音が近付いてくる。
足音が大きくなるが僕は,全く動けない、
足音の正体が見える。
それは右目が蒼白く光り、
左目は光をも飲み込む様な,漆黒の瞳
が僕の方を睨みながら、深い暗闇を
歩いて来る。
姿は良く見えず、8m程の黒い塊が
じりじりと僕に近づく,その生き物には
闇の世界を覆うかの様な,黒い羽を
背中にたずさえていた…
その生き物は、低く不気味に響く声で
「我は,闇の門番ケルベロス、闇の門と生者の門そして狭間を守りし者」
「汝が新たな闇の審理書の盟約者か?」
と血生臭い息を僕に吐きかけながら言った。
僕は声を、出そうとするが何も話せない。
ケルベロスは、不気味に轟く重々しい声で
「汝は、まだ盟約の資格はない」と
話す、空気が震える様な雄叫びを上げて
僕の,まぶたを鋭い爪で切り裂く
鋭い爪が僕の眼の窪みに,合わせて
ズブズブと深く突き刺さる。
焼ける様な激しい痛みと
生暖かい物が、瞳のある窪みから吹き出す。
ケルベロスはそのまま僕の眼球を
ゆっくりとくり貫く…ゴリゴリと何かを
噛み砕く様な音が聞こえる
僕は激しい痛みと、死の恐怖で
半狂乱になる。
生暖かい物が顔から流れる。
おそらく血液だろう。
だか僕には確認する事ができない…
僕は激しい痛みと恐怖の中で一つの
強い想いが脳裏をよぎる。
「僕は、まだ死ぬ訳にはいかない母と妹を
殺した犯人を捕まえて復讐してやる。」
ケルベロスは不気味に響く声で
「汝は,もう悪魔に家族を奪われたのか?」
「復讐したいのなら力を貸してやろう」と
僕に語りかける。
僕は、頭の中で(悪魔に家族を奪われた)と
ケルベロスが話していた事に,
疑問に思う、するとケルベロスは、
僕の心を読んでいるのかの様に答える。
「闇の審理書は、悪魔と深く関わり持ち,
大切な何かを悪魔に奪われた者達だけが、
この本に触れる事が出来る。」
「それ以外は触れるだけで,心は奪われ、
肉体は腐り落ち、滅ぶ。」
僕の顔を血生臭く、濡れた何かが顔を覆い
激しい痛みが取れていく。
ケルベロスが重々しい声で「汝の名は?」
と僕に語りかける。
僕は薄れゆく意識の中で「月詠一希だ」と
名前を告げる。
ケルベロスは、空と大地が揺れる程の
咆哮を上げ、僕の頭に語りかけた。
「月詠一希、汝に我の一部と試練を授けるる。」
「その力を使い悪魔共を祓い地獄に戻せ。」
「さすれば汝の望みも叶うだろう…」
僕は、その言葉を聞いてそのまま
意識を失った…
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「お兄ちゃん起きて大丈夫?」と誰かに
身体を揺さぶられる。
僕は、頭の痛みを感じながら
目を開けるが良く見えず、ぼやけて見える
徐々に視界が開け、僕の方を心配そうに
している一人の女の子がそこにいた
僕は思わず「夢莉」と叫んでいた。
夢莉は、「お兄ちゃん、やっと視れる様に
なったんだね、ずっと話したかった。」と
泣きながら僕に抱き付く、僕も一緒に
「会いたかった」と泣いていた。
僕は、もしかして夢では無いかと
頬をつねり痛みを感じるが、
それでも目の前に
床に座っていた。
僕は現実だと分かり
抱きしめようとするが,夢莉の身体を
すり抜け触れる事は出来なかった。
すると夢莉が
「当たり前じゃんだって私、幽霊だもん」と笑いながら言った。
「良かったねぇゆうちゃん」と背後から
聞こえ,振り向くとばあちゃん《日髙雪》が立っていた。
夢莉が「うん,やっとお兄ちゃんと、話が
できるから嬉しい」とばあちゃんと会話を
していた。
僕は,「ばあちゃん前から夢莉と会話出来てたの?」と聞くと
ばあちゃんは,頷き「そうだよ,ゆうちゃん
とは,亡くなってからも、ずっとお話してたよ。」
と言う
僕は辺りを視て,母親と父親がいないか
確かめるが見当たらず、ばあちゃんが
僕の様子をみかねて、
「ここには二人共いないよ、もしかしたら
成仏したのかも知れないね。」
と悲しそうに話した。
バキーンと雷の様な音がなる
たまらず僕は、耳を塞ぐと一振の脇差が
淡く光り出し此方の方に飛んで来た。
僕の目の前で脇差が止まり
暖かく淡い光に包まれた脇差がその場にいる者達の心に向けて語り出す…
「拙者は,森蘭丸と申す者」
「故あって此のような姿になり申した」
「貴殿は,闇の審理書に認められし者、と
見込んで某の願い聞き届けては下さらぬか?」
僕は、淡く光る脇差から言葉が聞こえる事に
驚き、夢莉は大きな声で「森蘭丸!」
と叫び跳び跳ねて喜んでいた。
夢莉は戦国武将が大好きでいつも僕と二人で戦国武将のゲームをしていた。
特に
(森蘭丸)と
性格が
僕は森蘭丸と名乗る淡く光る脇差に
頬を赤らめ照れながら話す、
姿を鼻で笑いながら
「森様の願いとは何ですか?」
と尋ねる。
すると、淡く光る脇差(森蘭丸)の空気が
重くなり、物置小屋の薄暗く照らす照明が
チカチカと点滅する。
森蘭丸と名乗る脇差が
「実は,水鏡村の星見沼に織田信長様の眠る聖域があるのです。」
「封印が破られ闇の鬼に襲われたお
「その場所は,新たな結界によって封じられており力を持つ者のみしか入る事が出来ません」
「どうかお
と誠実でまっすぐな優しい声で話し終えると
急にばあちゃんが悲壮に満ちた顔で
「ごめんなさい多分、封印を解いたのは私なの…」と語りぎゅっと手を握り締めていた。
どういう事か理由を尋ねる。
ばあちゃんは、何か決心を決めたのか頷き
ゆっくり僕達の方を向いて
「それは、今から50年位前になるかね…」
と昔を思い出すかのように語りだす。
◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻
昔の水鏡村は,人の往来が少ない事もあり
とても平和でした…
(おさげ)が似合う可愛い10歳の子供だった。
あの時の子供達は、水鏡村の心霊スポットに行って自分の名前を身近にある
石や木に刻む(星刻み)が流行っていてね。
私も,同級生の
通称(しげちゃん)と
心霊スポットに行くか学校の帰り道で
笑いながら話していた。
(しげちゃん)「なぁ今度の日曜日にどこかで星刻みしねぇ」
(メーちゃん)「でも村の,ほとんどの場所は,皆(星刻み)したよ。」
(日髙雪)「そうよね,それに水鏡村はあんまり心霊スポットて無いし。」
(しげちゃん)「俺のじいちゃんが毎日神様の
祈祷をしてるからあんまりそういう場所は
無いかもな…」
三人で悩んでいるとその内の1人が
(メーちゃん)「1ヵ所だけあるよ、誰も
行ってない所」
私としげちゃんが二人で声を揃え
「それって何処?」
と言うとメーちゃんは自信満々に「雪ちゃんの家の裏山にある(星見沼)だよあそこなら誰も行ってないよ。」と話す。
私の家は代々、土地神様を奉っていて
星見沼は異界との世界を繋ぐ通り道だと
言い伝えられそこを通り抜けて
現世に悪い事を企む,闇の鬼達や邪気が外に
漏れない様にとそこの周辺に結界を張られ
護られていると言われていた。
なので,私の両親からも入ると
闇の者達に拐かされるので
決して入る事はいけないときつく言われていた。
私はメーちゃん達に星見沼に行くと両親に
怒られる事や闇の者達の言い伝えを話すと
しげちゃんが「そんなの迷信だろ、行こうぜ
誰も行ってないから自慢になる。いざとなったら俺が守ってやるよ。」と笑いながら話す。
メーちゃんも「大丈夫だよ黙って行けば怒られる事は無いよ、ただ行って星刻みするだけだもん。」
私自身も興味があったのだろう、
結局二人の言うとおりに
日曜日の朝に星見沼ヘ星刻みをする事に
同意をした。
日曜日の早朝、私が自分の部屋で
星見沼に出かける準備をしていると
廊下から「雪さん入っても良いですか?」
と静かな湖の様な声が聞こえる
私が「うん良いよ」と返事をすると
障子が開き、狐眼の少年が部屋に入ってくる
私の
私達の祖先は有名な陰陽師だったらしく
私もその血を受け継いでいるのか
幽霊が見える。
私の兄は,陰陽師の血を濃く受け継ぐので、
私の両親も使えない力も行使する事が出来る
勉強も常に成績がトップクラスで
性格も冷静で礼儀作法もしっかりしていた。
周りからは、日髙家の次期当主になる人だと良く言われていた。
だか私は、何でも出来る有能な
兄が疎ましく苦手だった。
兄は,いつも遠くをみていて何を
感じているのか、つかみどころがないが
私の事を全て見透かす様に理解していた。
その兄上が私に「雪さんは、何処かへ出かけるのですか?」と冷静に淡々と話す。
私は,兄上に星見沼に行く事を悟られない様に準備をしながら
「今日は、友達のメーちゃん家へ遊びに行くの。」と
「今日は,星刻みをしに星見沼に行くのでしょう。」
「それは,とても危険ですので駄目ですよ。」
と私をなだめる様に優しく言った。
私は,全てを見透かされた事を驚き
それでも必死に隠そうと
「違うよ、兄上、星見沼は行っては行けないと何度も言われてるし怒られるから絶対行かないよ!」と兄に伝える。
兄上は鋭い狐眼から優しい瞳を覗かせ
その視線を私にむけて
「雪さんは本当に嘘が下手ですね、そこが良いところなんですけどね…」
と私の頭を優しく撫でながら言った。
私は,作戦を変更して兄上に
「兄上、嘘をついてごめんなさい」
「本当は星刻みをやりに星見沼に行こうとしたのだけど…」
「やっぱり怖いから止める。」
「だけどしげちゃんとメーちゃんに約束を、しちゃったから。」
「謝るのに兄上、心細いから一緒についてきて。」と瞳に涙を潤ませて伝えた。
すると兄上は私の涙をみて少しあわてて
「分かったよ、一緒に謝ろうね。」
と話した。
私は,兄上に喉が渇いたから一緒にカルピスを飲もうと和室に誘う。
「兄上ここに座っててカルピス入れてくる」
と伝え座布団を畳に引くが
台所に私が行こうとすると,兄が
一緒に作ろうとついて来ようとするので
私は,笑顔で兄上の顔を見つめ手を握り
「良いの私が作って兄上に飲んで欲しいの!」と話すと
兄上は、「雪さんありがとう、私は、ここで待っていますね。」と言い
用意した座布団に腰を落とし座る。
それを見届けると私は、作戦を実行する為の準備に台所へ向かった…
私の考えた作戦は,父上のウイスキーが
入ったカルピスを兄上に飲ませて
そのまま寝てもらおうという作戦である。
兄上は,お酒に物凄く弱い,お酒を飲んでいる
親戚と会話しているだけで酔い
そのまま倒れている。
私は準備したお酒入りと普通のカルピスを確認しながら、兄上のいる和室に行くと
兄上は背筋を伸ばし置物の様に座布団の上に座っていた。
私は「兄上、遅くなりました」と
兄上にお酒入りカルピスを渡すと
「雪さん、ありがとう、いただきます。」と嬉しそうに私の顔を見ながら飲んでいた。
私は、その姿をみて少し心が傷んだ…
バタンと音がして兄上は倒れる。
倒れている、兄上が呼吸をしているか念の為
確認を行い、息をしている事が分かると
私は,兄上が風邪をひかないように毛布を
引き出しから出しそうっと身体に
毛布を掛けて出掛けた。
皆で集まる場所は
門の名前とは違い裏山から流れる風が
森の木々を揺らし心地好い音が響く。
日の光が木々の隙間から射し込み
お昼寝には、最高の場所だと感じていた。
そこでなかなか来ない二人を待つ…
遠くから声が聞こえる。
戦隊ヒーローが印刷されている半袖と
半ズボンの服を着た男の子と
水玉模様のワンピースを,着た女の子がこちらに手をふりながら向かい走り出した。
「ごめん遅くなった、こいつが支度に時間かかってよ。」としげちゃんがメーちゃんの
方を向いて文句を言う。
メーちゃんは、しげちゃんに必死で
「女の子は、色々準備があるの」と
反論していた。
私は二人のケンカしている姿を
見ながらずっとこの幸せが
続くものだと思っていた…
しげちゃんが「さてと、星見沼まで冒険だ
行くぞー」と叫ぶと私達も「おー」と
言いながら禍魔封門の鳥居を抜けた。
抜けた先は外の雰囲気と違い、風も吹かず木々にも苔が生い茂り薄暗くカビの臭いが
立ち込めていた。
メーちゃんが「何か怖い感じがするね。」
と笑いながら歩いていた。
何処からか生き物の気配を感じ呼吸する音が聞こえる。
しげちゃんが「ここは本当に何かあるな。」と私達に話すと、どんどん暗い森の奥へ
と向かって歩く。
私達は,とれだけ歩いたのだろうか…
何処まで歩いても同じ薄暗く
苔の生い茂る木々が広がる同じ景色が続く
私は、「もしかして、遭難したかも」と
二人に言うと
しげちゃんが「いや多分違う、先に辿り着けない様に結界が張られているのだと思う。」と真剣な顔をして私達に話す。
しげちゃんが「これは,
と私達に言うと肩を落とす。
メーちゃんが辺りを見渡して「声が聞こえる」と言うなりそっちへ走り出した。
するとしげちゃんが「そっちに行くな!」
叫びながらと怖い顔して
メーちゃんの後を追いかける。
私もしげちゃん達を追いかけた…
メーちゃん達が見える。
森の奥の開けた場所にたどり着いた。
そこは、透き通った池があり
空から日の光りが池に射し込み神秘的に
光り輝いている…
私は走っていたので心臓がバクバクとなり
呼吸が苦しくなった
一息ついて呼吸を整えると先に着いていた
しげちゃんの声が聞こえる…
「危ないだろ一人で走っていくな!」とメーちゃんを怒っていた。
するとメーちゃんは「こっちの方から誰かが呼んでいたの。」
私は周りを見て「誰もいないよ気のせいじゃない?」
とメーちゃんに伝えると
「ううんまだ誰か私を呼んでる。」
と言うと池の中に飛び込む。
しげちゃんは慌ててメーちゃんを追いかけて池の中に入る。
私は、念のためにロープを持って来たので
それを近くの太い木にくくりつけて
深く息を吸い池の中に入る。
池の中は、光の粒が散りばめられ星屑の中を泳いでいるかの様な、錯覚に陥る。
息が苦しい水面に戻ろうとするが
かなり深く泳いで来たので間に合わない
意識が薄れていく、水が口の中に入る
すると大きな水の流れが
私を押し流して池の底へ導く
池の底からは、蒼白い光りが見えて
そこへ向かう…
蒼白い光りを抜けると水面から顔が出る
ぷはぁと口の中に入っていた水を吐き出して呼吸をする。
近くに陸地が見える。そこまで何とか
泳いでたどり着くと、倒れ込み
私は、肺に入った水のせいで咳き込んでいた
呼吸をなんとか整えて辺りを見渡すと
そこは闇夜の蒼白い満月が様々な花を照らし
その花が淡く光り輝く不思議な空間だった
ただひとつ違和感があった、
風も無いのに花や木々が揺れたまま動かないまるで時が、止まっている様だった。
私は、二人の姿を探し歩いた。
すると大きな石碑の前で2人は立っていた…
私はしげちゃん,メーちゃんと2人を呼ぶ
しげちゃんとメーちゃんが振り向く
しげちゃんが「良かった雪は、無事か、
だけど
私は,メーちゃんの方を見るとぶつぶつ何かを呟きながら不気味な本に深く突き刺さる小刀を引き抜こうとしていた。
「メーちゃんどうしたの何があったの?」
と身体を揺さぶるが、手を払いのけられ脇差を抜こうとする。
しげちゃんは「じゃあ俺が抜くから退け」とメーちゃんを退かして、本ごと深く突き刺さる脇差を引き抜こうと踏ん張るが、
びくともせず、全く抜ける気配がない。
しげちゃんは握った脇差が濡れた手で滑り
しりもちを付いて
「これは抜けねぇな家に帰るか。」
とメーちゃんと私にと提案してきた。
メーちゃんが「駄目この本の中に閉じ込められている人がいてずっと"助けて"と叫んでる。」と
言ってまた怪我をして傷だらけの手で錆びた脇差を抜こうとする。
じゃあ今度は、私がやってみるとメーちゃんに言い、メーちゃんに退いてもらうと
私は脇差を握り締め力一杯に引っ張る、
するとスルッと簡単に抜けた。
その瞬間、突然に突風が吹き雷雲が立ち込め
石碑に雷が落ちドカーンと音が鳴り石碑が
真っ二つに割れる。
私が驚いて眼を閉じると"ぶしゃ"と音が
聞こえると同時に雨とは違う生暖かいものが
顔にかかり,それが口に入る鉄の味か舌の中に広がる。
私は,眼をあけると目の前に知らない
少年が立っているとてもその少年は美しく
月夜に光る金色の髪が風で揺れて
夜の星空の様に輝き。
空を漆黒に染めるかの様な大きい翼が背中を覆い。
白く透き通った肌は、天使を想い浮かべる。
だか右の瞳は蒼白く輝いているが,左の瞳は光りをも飲み込む様な深い闇を抱えていた。
そして真っ赤に染まる手を獣の様に舐めながら少年は,私の方に近付き耳元で
「お嬢さん本から、出してくれて,
ありがとうおかげで久し振りの食事を楽しめたよ」
「お礼に君は一番最後に,殺してあげる。」
私は,その言葉を聞いて濡れた顔についているものを拭うと手が赤黒く染まる。
これは誰かの血液だ。私は周りを見渡すと
少年の後ろには,真っ赤に染まり胸に
大きな穴が空いているメーちゃんを
抱き抱えて泣いている
しげちゃんがそこにいた。
全身に死の恐怖が襲い震えて声も出ない。
少年の背後から「美保を返せ」としげちゃんが叫びながら少年に木の棒で殴り掛かる。
少年は,赤く染まった右手上げると
しげちゃんはふわりと,宙に浮き
右手を握り締め地面に,下ろすと
しげちゃんは
地面に叩き付けられた。
その瞬間に、悲痛に叫ぶしげちゃんの
悲鳴が響く。
しげちゃんは両足の関節が
逆に曲がり皮膚が割けて
そこから骨が見える。
私は動けず思わず耳を塞ぐすると
少年がゆっくりとしげちゃんに
近付いて髪の毛をつかみ
蒼白く光る瞳でしげちゃんを見つめ
「君は,確かここに来る前に何かあったら
彼女達を守ると言っていたよね。」
「結果、君は彼女達を守れたかい?」
と無力感に苛まれる子供を嘲笑う
しげちゃんは「うるせぇー」と叫び黄色く
手が光りだし複雑な手の動きをしながら、
「汝,森羅万象の神々よ我に力を宿したまえ」(
しげちゃんの両手からサッカーボール
位の火の玉が出て
目の前にいる少年の顔に向けて放つ
"ドン"と少年に直撃すると吹き飛び周辺が
聖なる炎で燃え広がる。
少年は,「凄いね、まだ子供なのに」と
炎の中を拍手をしながら
ゆっくりしげちゃんの方へと歩く
少年が手を上げると
しげちゃんの身体がまたふわりと浮く
少年がしげちゃんに顔を寄せると、
深い闇の瞳が不気味に赤黒く光り出し
しげちゃんの瞳を見詰めながら、
「君は子供なのに頑張ったよ素晴らしい」
「このまま死ぬには惜しい逸材だね」
「僕の言う事を聞けば救ってあげれるよ」
としげちゃんに諭す様に優しく語りかける。
しげちゃんは、まるで親しい肉親と会うかの様に笑顔を見せ少年の問に頷く
少年は、「とても賢く良い子だ。」
と言うとしげちゃんと少年が深い闇の渦に
飲まれる。
闇の渦が消えると
そこには漆黒の身体からは硫黄の臭いを放ち紅い不気味な瞳をもつ
異形の化け物と少年の姿がそこにあった。
異形の化け物が獣の様に咆哮を上げて
私の方へ向かい走って来る。
化け物は,紅い大きな口を開けて
牙を私に突き立てようとしていた。
私は,心の中で兄上にごめんと思いながら
眼を閉じていた。
すると小さな鈴の音が聞こえてポケットが
淡緑色に光り、化け
ポケットを見ると私の手鏡が
淡緑の光りに包まれ呪文が聞こえる。
私は,ポケットを覗き
光っている手鏡を外に出す。
すると鏡から兄上が出てくる。
「雪さん無事で良かったです。すみません気配がなかなか掴めず遅くなりました。」
と頭を抑えながら笑顔で私に言う。
「兄上約束を破ってごめんなさい!メーちゃんが死んじゃった。」
「しげちゃんは,化け物になってどうしたら良いかわからない。」
とホッとしたのか、涙が溢れ兄上の胸で
泣きじゃくった。それを聞いて
小さく頷くと少年の方を
冷たい視線と感情のない笑顔を
向けて睨みつける。
兄上の身体が淡緑の光に包まれ「汝、闇に染まりし者神々の元にて無へと滅せよ」と
唱えると異形の化け物になった
しげちゃんは,光の粒になって
消えて行った…
少年は,「へぇこの時代にも僕ら、悪魔を
滅するだけの力が有る者がいるのか。」と
驚いていた。
兄上は静かだが怒りに満ちた声で
「貴方は,何者ですか?」と少年に尋ねると
少年は,
「僕の名前はメフィストフェレス君達は,
僕達の事を悪魔や鬼と呼んでいるよね。君の名前は?」と深い闇の瞳が不気味に
こちらを睨み不敵な笑みを浮かべ言った。
兄上は淡々と「私は,日髙望と言います。初めまして」と氷の様な声でメフィストに
名前を伝えた。
「さて自己紹介は,終わりましたね、この世から消えて貰いますよ!」とメフィストの方を見て兄上が
「天地に眠る神々よ我に力を宿したまえ」と複雑な印を指で結ぶと
凄まじい風が吹き荒れメフィストを切り裂き
メフィストから蒼白く光る体液が飛び散る
風が止むとメフィストは,原形を留めない位の黒い肉の塊になる。
私は,「兄上やった倒したよ。」悪魔が死んだ事を喜ぶと
兄上は,「いいえまだですよ,雪さん」と言うと私の前に立ち、後ろに引くように
目で合図を送る。
足元にある肉の塊を見るとグニュグニュと
動きだし一つの場所に集まりだす。
目線をメフィストにやると黒い肉の塊が
消えて女の子の亡骸と一緒に消えていた。
空から冷たく赤黒い液体が落ちて来る
空を見上げると女の子の亡骸の首を手で
切り落とし
そこから滴り落ちる血液をメフィストは
旨そうにゴクゴクと飲んでいる。
飲み終えると無造作に女の子の首と
胴体を投げ捨てる。
地面にグチャリと音が響き少女の骸が
辺りに散らばると肉塊が腐りだす。
辺りに雷雲が,立ち込め石碑に
激しい雷が落ちる。砂煙が舞うその中に
一人の人影が見える。
メフィストは、白く透き通る肌を
真っ赤に染めて砂煙の方を見ながら
睨みつけ「信長!!」と叫ぶ。
すると砂煙が消えて白装束を着た
威厳と自信に満ち溢れた
一人の武将が腕を組み仁王立ちで
「此のクソガキが礼儀も知らずに偉そうにしおって。」とメフィストに悪態をつくと
一足飛びで武将は,走って此方に来る。
メフィストは白く透き通る肌が怒りで
血管が浮かび赤褐色に顔を染めるそして
漆黒の翼を広げ武将を追いかけ
「信長,貴様だけは、僕の手で切り裂いて
未来永劫の苦痛を与えてやる。」と
叫び鋭い爪を構える。
信長はメフィストの言葉を全く聞かずに
兄上と私に話しかける。
「我が名は織田信長である。お主達の名は,何と言う?」と聞いて来るが
武将の背後に
怒りに震えるメフィストが迫り
鋭い爪を信長を
めがけ振り下ろすが信長は,
軽くいなしメフィストは派手に転ぶ。
それを見て信長は「虫は引っ込んどれ,今は大切な話しをしているのが分からんか
此の
悪魔のメフィストに手を上下に降りながら
言い放つ。
メフィストが怒りを通り越して此方に
どす黒い殺意や憎しみを向けているのが
張り詰める空気で感じた。
兄上が「信長様このままだとゆっくり話しが出来ないので場所を変えましょう。」
と言い複雑な印を結びなから
「風の守り人よ邪なる者から我らを守りたまえ」と言うと凄まじい竜巻が起こり
辺りが砂嵐になる私達は,それに紛れて森の奥に入った…
深い森に入ると辺りは,不気味なほど静けさが漂う
また兄上が人差し指で三角を描くと
「汝,光りの精よ我らを闇の者から隠したまえ」
唱えるすると私達の身体が透明になる。
兄上が深呼吸をしながら「これでしばらくは見つからない筈です。」
「信長様、話しの続きをお願い致します。」と背筋を伸ばし信長に御辞儀をする。
兄上の礼儀作法を感心しながら信長が
「わしの名は織田信長、尾張の当主を,やっておるお主達の名は?」
と私達に地面に座るとあぐらになり尋ねる。
私は,兄上と信長様に自分の事,星見沼に来た時の事をその時に何があったのかを
全て伝える二人は,
私の話しを黙って頷きながら聞いていた。
その話しを終えると重苦しい空気になる。
兄上が
「雪さん、とても辛く怖い想いをさせたね、良く頑張ったよ。」と優しい瞳で言い。
そして信長は,私の頭をポンと優しく撫でた
兄上は「信長様,本題に入りましょう」
「メフィストは,恐らくここにいる全員で立ち向かっても倒せないのではないですか?」
と冷静に信長の方を見て話す。
それを聞いて
信長は悲しげに笑みを浮かべ
「流石にそちは気付いたか?」
「あれは《メフィスト》は,真の力に
目覚めた退魔刀星蘭でしか殺せぬ!」
「残念ながらここにいる者達は星蘭の本来の力を引き出せぬ…」
私は,それを聞いて
「何で?信長様と兄上は,さっきメフィストを簡単に退けたではないですか!」と言うと
兄上は,諭す様に
「雪さん攻撃を交わすのと相手を倒すのは別の話しですよ、私の最大の攻撃でもバラバラには出来ても止めを、させませんでした。」
「信長様は,わざとメフィストを怒らせて
攻撃を単調にさせて動きを読みやすくしていた。」
「だが星蘭を手にせず攻撃をしていない」
「つまり相手を倒す事が出来ないという事です。」
兄上の声からいつもとは違う緊張の様な物を感じるそして決意を固め私達を見て
「ならば一つだけしか方法がありませんね、信長様メフィストを足止め出来ますか?」
と信長に尋ねる。
信長は「何か妙案があるようだのう言うて
見よ」と兄上に向かい言うと兄上は
考えた作戦を話す。
この場所丸ごと時を止めてメフィストを
封印するという作戦でした。
しかしそれを行うには
空間の中心にいないといけないという事と
それをするにはメフィストに邪魔をされずに時止めの詠唱をする事の
二つの事柄を可能にしなければ実現が
出来ないと兄上が信長様にそれを伝えると
信長様は不敵な笑みを浮かべ私の方を見て
「お主の身体を使わせて貰おう、そうすれば多少は星蘭の力を使える。」
「お主は星蘭の持ち主に近い能力があるらしいだから"闇の審理書"に突き刺さる星蘭を抜く事が出来た。」
「その力を使えば時間稼ぎ位は出来るだろう。」と話す。
兄上は恐らく
,私を巻き込みたくないのだろう…
それを聞いて悩んでいた
私は二人を見て「しげちゃんとメーちゃんの仇を討ちたいの私はやるよ!」
と言うと信長が笑いながら「その意気やよし」膝を叩き叫ぶ
兄上は「仕方ないその作戦でいきますか。」と肩を落として言う。
遠くからメフィストが凄まじい獣の様な咆哮
をあげると大気震え雷雲が真っ二つに裂ける
信長が「戦じゃ者共,行くぞ!」と雄叫びを
あげる。
私達は各々の作戦場所に向かい自分達の運命を切り開く為の戦いに挑む…
私と信長様は,作戦場所にたどり着くと
そこには先程の容姿が
とても美しい少年の姿はなく
四つ足の漆黒の翼が大地を暗闇に染め
体長が30mはある,
巨大な獣と化していた。
口からは全てを腐り溶かす
紫色の息が出て,悪臭が辺りに立ち込め
思わず鼻を塞ぐ。
その姿は地獄の生き物に相応しい姿である。
私はその姿に圧倒され手足が震え額からは
汗が吹き出していた。
その様子を見た信長様は,私を見て
「安心せい!わしがついておるわ!」
「たかが鬼のクソガキに此の"第六天魔王"が引けを取らぬわ。」と高笑いをする。
何故かその一言で私は安心感が生まれた。
では"始めるぞ"と信長様が言うと
信長様は淡い光を放ち私の身体を包んだ。
すると,私の手の中にある錆びた脇差が
青く光り初め、錆びた刀身が伸びて
一振の刀となる。
私の意識と感覚が薄れていく
信長様と意識と五感が混ざり感覚が
精神が研ぎ澄まされる。
流れる空気も肌で感じられる。
そして私の眼光が鋭く光り
全身から凄まじい闘気が溢れ。
その姿はまるで"桶狭間での戦い"で今川義元を打ち破る時の様な自信に満ち溢れている。
「我は"
巨大な獣に言い放つ。
獣の姿になったメフィスト真っ赤に染まる瞳で此方の方を見て「信長見つけたぞ、約束
道理に切り裂いてやる。」と叫ぶと
巨大な翼を広げ凄まじい勢いで飛び
鋭く毒々しい爪を振り下ろし襲いかかる。
その一撃を軽くいなし「ふん貴様は,此の
程度か我の前に立つ資格すらないわ!」と
青く光る星蘭を軽く一振すると
巨大な獣となったメフィストが
木の葉の様に吹き飛ぶ。
そのまま雪長は星蘭をメフィストの不気味に赤く染まる瞳に突き刺さす。
メフィストの悲痛な雄叫びが大地を震わせ
突き刺さる瞳から大量の黒く蠢く液体が飛び散る。
私は,その姿を見て
「このままメフィスト倒せるかも」と
雪長の中で思っていると
私の頭の中に信長様の声が響く
「それは無理じゃな、奴を消滅させるには、力が全く足りんは。それに此の力は長くは、持たんからな。」と言う。
私はそれを聞いて兄上を探すと
遠くで兄上が時止めの儀式を行っていた。
「幾多の神々よ汝らに流れる時の刻みを我に託しその叡智を我に宿りたまえ」
激しく複雑な印を結び(踠,儘,封,澪,陽)と
詠唱を詠み始める。
来るぞ!
私の頭に響く声で前に意識を向ける。
巨大な獣が姿形を変え始める
不気味に骨の軋む音かめりめりと辺りに響く
今度はメフィストが四体の黒い塊に分かれる
各々が黒く蠢き別の生き物へと姿を変える
一つめは、複数の赤く光る眼が此方を睨み八つの足が足踏みをすると大地が揺れ
禍々しい牙からは,垂れる液体は地面に触れる度に草花を溶かす。、不気味な生き物は、古来の日本にいたとされる妖怪(土蜘蛛)である。
二つめは、巨大な身体に大きな深淵の瞳が
鋭く睨みつけ全身筋肉で覆われた
赤黒い生き物は右手に大木を
へし折った様な太さで
不規則に並んだ突起物に
血に染まった様な赤銅色のこん棒を振り回す
その見た目は「赤鬼」である。
三つめは、9本の尻尾に金色に輝く毛並み
そして瞳は,蒼白く妖艶で見たものを魅了する、美しさがあるが、
背後に死の匂いを感じる
その口からは、鋭く牙が赤く光り、
全てを飲み込める程の巨大な大口を開ける。正に「九尾の狐」その者に違いない。
最後は,先程の絹のように白く透き通る肌に金色の髪が風になびかせる少年の姿だった。
そのメフィストは背中には空を覆い尽くさんとする漆黒の翼を持ち,
蒼白い瞳と全てを飲み込む様な
深淵の瞳の二つの眼を持つ
その見た目とは違い,獣の様に
魂を食らい尽くそうと舌舐りをして
此方を見ていた。
それらは此方を睨みつけ「貴様らは,ここで我の糧となる運命にある。ありがたいと思い受け入れよ。」と不気味な声で辺りに響く
雪長は不敵な笑みを浮かべ「是非もなし」と退魔刀星蘭を構える。
辺りに緊張が走り空気が張り詰める。
すると土蜘蛛から先に襲いかかる。
口から燃える糸を此方に吐き出し動きを止めようとする。
それを見た雪長は星蘭で一振すると凄まじい剣閃で切り裂き
風圧で土蜘蛛を真っ二つにする。
激しい断末魔が轟き、大気が震える。
黒く蠢く液体が割けた土蜘蛛から飛び散る
星蘭を掲げた雪長は「滅せよ」と一言放つと黒い液体と土蜘蛛の残骸が塵となり消えて
行った…
メフィストは「忌々しい星蘭の継ぎ人が!だかそれも限界らしいな。」と此方を見ながら笑っていた。
雪長は息が乱れ地面に片膝をついていた。
憑依が解けて私から信長が離れる。
私は、心配そうに信長見ていると
信長は,「奴の言うとおり限界が近い。だが安心せい,時間を稼げれば、良いだけの話しよ。」と兄上の方を見て指を差し、
私に話す。
すると白く光り輝いている兄上が
時止めの儀式を終え私達の方を見て。
「雪さん逃げて下さい!」と大声で叫ぶ
周りの全てが石の様に固まっていく。
他の化け物達も次々と冷たい石像に変わっていった。
メフィストも身体の一部で石化が始まり動きが鈍くなる。するとメフィストは、自分の首を鋭い爪で切り落としメフィストの顔が
私にめがけて飛んでくる。
私は、恐怖で動けず眼をつむると
"ドン"と鈍い音と衝撃が身体に伝わる
私が眼を開けると、私を庇い
信長がメフィストに噛まれる。
噛まれた場所から異形の獣に変わっていく…
メフィストは完全に石になる前に
切り離した首が黒い霧となり消えていく…
信長が薄れいく意識の中,闇の審理書と星蘭を私に投げて「雪お主は、生きてここから逃げよそしてその星蘭と闇の審理書を継ぐ者を見つけよ。」
と言いのこし石像となる。
私は、来た道を必死で戻る。
気が付くと星見沼のほとりにいた
私が星見沼を覗くと沼は完全に大きな岩と
なっていた。
私は、走って家に帰り両親に星見沼での出来事を全て話すと父親は
「月詠家とも相談せねばならんな、」
「とにかくこの事は他言無用だ言いな!」と言って外に出る。
母親は,ただ泣いていた。
今回の出来事は(日髙望),(吉田栄、しげちゃん)(川八木美保,ミーちゃん)は、山で遭難して行方不明と言う事となり
水鏡村で起きた悲しい事件として時間と共に忘れられていった…
◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻
ばあちゃんは、自身に起きた事を語り終えると僕達の方を見て「少し疲れたよ。」と言ってゆっくり床に座る。
僕は、ばあちゃんの身に起きた出来事に驚き
今後自分は、どうしたら良いのか
分からなかった。
ばあちゃんは、「それに兄上の行った時止めの儀式は、自分の魂を犠牲にして行う物だからもう兄上は、助けれない…」
重い沈黙がしばらく続く……
すると一人の夢莉が立ち上がり
「ばあちゃん、もしかしたら何とかなるかも知れない!」と夢莉は、
みんなに昔の出来事を語り終えて
憔悴している祖母に向かって言う。
僕達は、夢莉にその方法を尋ねる。
すると夢莉は,「私の能力を使えば過去に戻れるから闇の審理書に選ばれたお兄ちゃん《月詠一希》と星蘭を持ってばあちゃんの
お兄ちゃん《日髙望》を助けに行けば
良いんだよ!」と自信満々に話す。
その作戦を聞いて僕とばあちゃんと星蘭の
森蘭丸が驚いていると夢莉は,話しを続ける
「問題は,ばあちゃんその事が起きた正確な日付と時間と西暦何年か分かればその日の此の場所へ行けるの!」
「私はその力が悪魔に知られて殺されたの!」
「だからばあちゃんお願い教えて?」と夢莉が真剣な面差しで祖母に聞いていた。
するとばあちゃんが「ゆうちゃん、ありがとねでも過去に戻れるとしても、星蘭を
使いこなせなければ何にも変わらないよ」
と悲しそうに話す。
今度は脇差の森蘭丸が
「その事なら大丈夫です。闇の審理書に選ばれたの者ならば、」
「私が星蘭の能力を使用するのをお手伝い出来ますから。」と言うと、
僕の瞳に向けて脇差の刀身を突き刺す。
ズブズブと音がして
星蘭が僕の右目に呑み込まれる。
僕の頭から直接的に
溢れてくる。
僕は,「星詠みの時より来る神具よ闇の盟約者の月詠一希の命により目覚めよ!」と
叫ぶと
僕の手が赤黒く光りそこから
一振の大鎌が出てくる。
その鎌の刃は,不気味に紅く脈をドクン,ドクンと打つ度に鈍い不気味な紅い光りを放つ
それを握り締めると何故か手に馴染み
いとも簡単に振り回せる。
そして白い翼と黒い翼が
僕の背中に生え
僕の意思で動かせる
翼を広げ動かすと鳥の様に飛べた。
そして森蘭丸の声がまた頭に響く
「某の記憶を全て継承致しました。」
「後は,一希殿、次第でございます。」
と言うとそのまま頭から声が途絶える。
ばあちゃんと夢莉は僕の姿に驚きそれと同時にばあちゃんの瞳からは希望の光が宿る。
ばあちゃんは,重い腰をあげて
古い机から埃の被った本を出して手で
埃を払うと表紙に(日髙呪式太陽の書)と古い文字で書かれている。
本の裏表紙に蒼白く輝く太陽と麒麟が
描かれている
その本を出してページをめくり何かを
探していた。
ばあちゃんが目的の物を見つけると僕と夢莉に見せながら話しをする。
「ゆうちゃんが過去に戻れると言う能力は(星帰りの呪式)と言ってね。日髙家や月詠家でも特殊な力でかなりの霊力がないと使えないの今はゆうちゃん肉体がなくて魂だけだよね。」
「それだと呪式が定まらずにゆうちゃんの魂も消滅するし何処に飛ばされるかわからないの、」
「だからそんな怖い事はしないで、」
「ばあちゃんは,これでゆうちゃんやカズちゃんに何かあるとばあちゃんは,もう生きていられない。」と悲しそうに話す。
すると僕は,凄まじい量の呪式に関する知識が頭を巡る。すると"御霊呼び"呼ばれる
儀式を行えば可能だとばあちゃんに伝える。
御霊呼びとは,自分の肉体を幽霊に貸す憑依と違い
強い絆で結ばれた魂同士を,
一つの肉体に宿す事によりお互いの能力を
全て使える上に効果が倍増する儀式であるが霊力の巡りを上手く操る必要性が
ありかなり困難な儀式の一つなのだ。
ちなみにばあちゃんと織田信長が行った事は,信長主体の憑依である。
僕は決意を固めるそして真剣な眼差しばあちゃんに向けその事を伝える。
そして僕達《夢莉と一希》にしか
出来ない事だと確信した。
ばあちゃんは
感じると「わかった必ず無事に帰ってくるだよ。」と言い、
僕達を慈愛に満ちた表情で見詰める。
何かを思い出したかの様にばあちゃんが
身に付けている小瓶を首から外し
僕の手に握らせると、
「それは,強力な浄めの水"強聖水"と
呼ばれる物でどんな呪いも浄化出来るから
いざとなった時に使いなさい。」と
心配そうに話す。
そして夢莉と僕は、
闇の審理書を持ち御霊呼びを行う。
僕が瞳を閉じて神経を全身に集中させて
「深き絆に結ばれし星を繋ぎ太陽の耀きを持つ我等を導きたまえ」と言いながら
複雑な印を結び床に放つと
僕の足元に複雑な
夢莉と僕が金色に耀き
霧上になると空から虹色の雨が
降り注ぎ1ヵ所に集まる。
辺り一面が眩しい光に包まれ光が収まると人影が映る後光が降り注ぎその姿はまるで
阿弥陀如来の様だった。
「我が名は,
星より来る、絆を結びし神である。」
と美しく響く声で語る。
ばあちゃんは,驚きながら
「カズちゃん,ゆうちゃん大丈夫?」と
宗守炎と名乗る者に声をかけると
宗守炎は、ばあちゃんに笑顔を向けて
「大丈夫!ちゃんと私達の意識が保たれているから。」
「必ず皆助けて無事に帰ってくるから。」
「ばあちゃん、メフィストに出会った日付と西暦を教えて!」と
ばあちゃんに伝えるとコクンと静かに頷き
「1957年6月2日9時20分頃だと思う。」
それを聞いて。
宗守炎は瞳を閉じて「星より戻り月へと帰る1957年6月2日9時20分に星よ流れ我を
導け」と念じると黒い渦が現れ
僕達を呑み込む。
◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻
渦の中は凄まじい風が吹き乱れ星屑が
いくつも流れては消えて行く
すると目の前に蒼白く輝く満月が目の前に
浮いている。
それに触れると激しい衝撃が身体中に巡り地面にぶつかる。"ズドーン"と音が辺りに響き
地面に穴が空く
そこから二人の人影が見える
痛いと頭を押さえながら夢莉と僕は穴から這い上がる御霊呼びが解けて二人が元の姿に戻る。
僕達は辺りを見渡すと(
夢莉は「ばあちゃんが言ってたのはアレじゃない?」と鳥居を指差す。
僕達は,走り鳥居をくぐる。
中は、薄暗く蛍が飛んでいる、まるで
夜空を歩いている感覚に陥る
幻想的な風景が広がっていた。
一つの蛍がまるで道案内をしているかの様に僕達の周りを飛んで舞っていた。蛍の
後を追って行くと拓けた場所につく
水面に木々の隙間から日射しが射し込み
反射して星屑の様に映る。
僕が「ここが星見沼だな」夢莉に言うと
夢莉が木に結ばれているロープを指差し
「これを追って行ければ、ばあちゃんの所に行けるかも。」と
話すと僕はロープを持ちながら池に飛び込む夢莉もその後を追いかける。
僕は,自分の能力に驚く水中なのに呼吸が出来て魚の様に速く泳げるあっという間に
星見沼の底についてロープを辿って行くと
僕は,池から顔を出す。
遠くで話しが聞こえる…
僕は眼を凝らすと二人の女の子と一人の男の子が言い争っている。
すると僕の後ろから「ブハァ」と夢莉も池から顔を出す。
僕は夢莉に「幽霊になっても水中は,息苦しいだ?」と聞くと夢莉が「ゴメンなんか癖で」と笑っていた。
急に辺りが深い闇に包まれ雷雲が立ち込める。
僕と夢莉はメフィストの封印が解けたと思い急いで声のする方へ向かって行った。
雷雲が石碑に落ちる。すると闇の審理書から黒い筋が女の子の心臓をめがけ伸びて行く。
僕は星蘭を呼び出し黒い筋を弾く"ピィィン"と音が聞こえ闇の審理書から黒い塊が"ジュルジュル"と滲み出る。
黒い塊は,蠢き、人の形になっていく。
すると深淵に染まる瞳が此方を睨み
「食事の邪魔をするのは君かな?」と
金色の髪をなびかせ僕にに話しかける。
僕は,「メフィストお前の思い道理にはさせない!」と叫び星蘭の封印を解く
僕の姿が変わり背中に黒と白の翼を携え
放たれる霊力で空気が震える。
僕の右手にドクン、ドクンと脈を打つ大鎌が獲物に飢えている。
僕は、メフィストに向けて睨み付けた。
メフィストは「君が新しい星蘭と闇の審理書の盟約者だね?」
「なら話しが早いここで君を殺せば地獄の門が開ける。」と
禍々しい魔力を放ち、嬉しそうに語る。
僕は,夢莉にばあちゃん達を守れと眼で合図を送りメフィストを大鎌を振り回し
メフィストに斬りかかる。
メフィストは,その一撃を片手で受け止めると僕に魔力の込めた凄まじい一撃を腹部に
放つ。僕は,30m位吹き飛び聖域に生えている木々にぶつかり地面へとめり込む。
更に追撃をしにメフィストが
両手に魔力を込め
「地獄の炎よ我に力を与え敵を滅せよ」
唱えると禍々しく黒い炎が
手から吹き上がり巨大な炎の塊が出来る。
あまりの熱で触れてもいないのに木々が黒く燃えるその見た目は"漆黒の太陽"みたいだ。
それを僕に振り下ろし「
僕に直撃する。地面がドロドロにとけて
周辺が炎に包まれ燃え広がる。
一方その頃夢莉は,ばあちゃん達に自分達が未来から来た事やこれからメフィストが行うであろう凶行を説明していた。
雪「本当に未来からきたの?」
しげちゃん「嘘つく理由が無いから本当だろう!」
メーちゃん「でも私達が,これから殺されるのは本当かもね。」
メーちゃん「だって私の心を,メフィストが操っていた時に、深く冷たい感情が流れてきたもん。」
夢莉「全部本当だって!」
夢莉「このままだと雪ばあちゃんの友達もお兄ちゃんも全部悪魔のメフィストにやられちゃうよ!」
と夢莉は、必死で話しをしていた。
辺りに雷雲が立ち込めまた石碑に雷が落ちる。
すると砂煙の中から人影が見え「そこの童達ここはどこであるか?」と聞いてくる。
夢莉は、祖母から聞いていた話しを思いだしあれは織田信長だと思い「信長さんここは、聖域です。」
「今お兄ちゃんがメフィストと戦っているから手伝って!」と人影に話すと
「そなたは、何者じゃ」
「何故わしの事を知っている?」
と聞いてくるので夢莉は、
織田信長にも祖母から聞いたことを
全て伝える。
信長は,膝を叩きながら「これは愉快じゃ
わしは,あのクソガキ《メフィスト》に
やられて、そなたの大伯父は,魂を犠牲にしてここを封印するから、それを未来から助けにきたと申すか!」
夢莉は,織田信長にも真剣な眼差しで信じて欲しいと伝えた。
織田信長は、「安心せい大体の事は、分かったわ!」と言うと
ズガーンと地響きがする辺りが、急に熱くなる。音のする方向を見ると辺り一面が黒い炎が立ち上ぼり焼き付くされていた。
信長が「ほぅ,向こうで誰かクソガキ《メフィスト》と
戦っているのぉ」「しかもあのクソガキ《メフィスト》が本気の力を使っているところを見ると盟約者が近くにいるな。」
信長は,「よし助太刀致そう!」と
月詠一希の方向に走って行った。
夢莉はその姿を見届けると今度は、
ばあちゃん達の方が淡緑に光り耀いていたのでそちらに向かう。
すると雪のポケットある手鏡から淡緑の光りを放ち
「雪さん,無事ですか?」と心配そうに聞いていた。
夢莉は
「夢莉さん分かりました。危険を承知で過去に来てくれたことを感謝致します。」とお辞儀をした後に
日髙望が気を集中させて地面を触れながら
「大地の神々よ此の地に邪を退ける盾を授けよ」
(
お札を張る。
すると雪ばあちゃんの周りにゴツゴツとした岩が集まり巨大な結界が出来る。
「夢莉さん私は,メフィストを倒しに行くので妹達を宜しくお願いいたします。」と深々と頭を下げて。
「歩空」と叫びメフィストの方向へ飛んで行った。
僕はメフィストが放つ巨大な炎の塊が直撃して気を失っていた。
メフィストが止めと鋭い爪を僕の喉にめがけ突き刺そうとする。
すると一人と武将が勢いよく走って、
メフィストめがけ飛び蹴りをすると
メフィストの横っ腹に当たりメフィストは、
吹き飛び地面を転がる。
その武将は,,自信の威厳に満ちて立っている
腕を組ながら僕の方を見て
「軟弱じゃのうお主は,それでも盟約者か?情けない。」
と倒れている僕の頭を拳で殴り服をつまんで僕を持ち上げながら「星蘭の持ち主ならば
あの様な味噌っかすの攻撃が当たる訳が無い」とまた僕を握り拳で殴る。
蹴られたお腹を押さえてメフィストが「信長!貴様も封印が解けたのか?」
「盟約者より先に"信長"お前を切り刻み、肥溜めに捨ててやる。」と叫ぶ。
信長は,「黙れクソガキ、今は、此のはな垂れ小僧と話しを、しておる邪魔をするな!」
とメフィストに言い放つ。
僕は,不条理に人の頭を殴る信長に対して苛立ちを感じて同じように拳で殴りかかる。
信長は,僕の一撃を軽く交わして鼻をほじくり僕の手に鼻くそをつけ笑い
「なんじゃその屁みたいな攻撃は、目をつむっても当たらんわ!」と言いながら僕の頭を殴る。
僕は,コイツ《信長》を助けに来たことを後悔する。
そして僕の心が怒り、憎悪、憎しみで黒く
染めて燃え広がる。
僕の気持ちと呼応するかの様に
星蘭の脈が速くなりその度に力が
僕は嫌な予感がして感情を抑え様と
するが感情の制御が出来ない。
僕の背中に生えている白い翼の部分が
全て漆黒の色に染まっていく。
メフィストの白い肌が怒りで赤褐色になり血管が浮かび上がらせて「僕を無視するな!」とメフィストが叫びながら僕に鋭い爪を
突き立て襲いかかる。
僕はメフィストの声を聞くと苛立ちが
募り「耳障りだ黙れ!」と軽く星蘭を
振るうと巨大な紅い閃光が放たれ
メフィストに当たると下半身が消し飛ぶ。
メフィストは急に下半身が無くなりバランスを崩して地面に転がる。
メフィストは,一瞬の出来事に反応が出来ずしばらく動けないでいた。
僕はメフィストに近付き怒りに任せて
殴り続ける。不気味に骨が折れる様な音と
肉が潰れる音が辺りに響く。
信長が僕の様子を見て「いかん!星蘭に心を奪われおった、このままでは,鬼になる!」と言って僕の手から星蘭を取ろうとする。
僕は,メフィストを殴るのを止めて信長の手を払い禍々しく光る星蘭を振り上げ
信長に斬りかかる。
信長は、ふわりと交わし「童、先程はすまん
星蘭は強い感情で力を発揮するので
お主を怒らせようとした。」
「お主は、星蘭に心を飲まれておる。昂る気持ちを抑えよ!このままではお主は、鬼になるぞ!」
と信長は,僕に向かって語りかける。
僕は,「うるさい全て滅んでしまえば
良い!」と叫び
不気味に脈を放つ紅く光る星蘭を掲げ
「無に潜む者達よこの世の全てを贄として
与える。」と唱え
左手から闇をも呑み込む深淵の塊を出して
地面に放とうとするが
僕の身体が急に動かせない。見えない力が
働き、僕を縛り付ける。深淵の塊が
消滅して力が入らずに倒れる。
僕は力を感じる方向へ振り向くとそこには宙に浮かびながら
何かを詠唱している
日髙望は、冷静に淡々と
「何とか間に合いましたね。」
「信長さん危ない所でしたね。」
信長の方を見て話しかける。
信長は,「お主のお陰で命びろいをしたわ!」と笑う
信長と望は、お互いに簡単な自己紹介をして望は僕の方を見ながら
「彼がメフィストですか?」と信長に尋ねる
信長は,「あやつは,違う星蘭の力に飲まれて暴走をしている、ただの阿呆じゃ!」
「メフィストは、その阿呆に消し飛ばされて其処らに転がっておるわ!」
と腕を組み仁王立ちで高笑いをしていた。
すると身動きが取れず倒れている僕に
ズルズルと這いずりながらメフィストが近付き僕の顔を邪悪な瞳で覗き
「君の力はすごいね僕の味方にならないかい?」
「そうすれば何でも君の望みは,叶うよ!」
優しい声で僕に囁く。
僕は,「なに言ってんだ!僕の望みは,悪を滅ぼす事、僕の家族を奪った奴らに復讐する事だよ!」
「お前もその悪の一つだ!必ず滅してやる!」
とメフィストを睨み付けて言い放つと
信長が手を叩きながら
近くにいるメフィストを蹴飛ばし僕に
「その意気やよし、お主の事が気に入った!」
と言った後に僕の身体を起こし
真っ直ぐに僕の瞳を見詰めながら
織田信長「お主名は何と言う?」
月詠一希「僕は月詠一希です。」
織田信長「わしは織田家、当主"織田信長"
じゃ、だか死んで月日が立つからのう お主の好きな様に呼べ!」
織田信長「お主,星蘭を使いこなせていないわしが心身共に鍛え上げてやろう!」
と自信と威厳に満ちた表情で僕に話す。
僕は,何故か懐かしいと感じる。
不思議と気持ちが穏やかになり
背中の漆黒の翼が元の白と黒の翼に戻る。
そして右手に有る星蘭の形が変わり大鎌から槍へと変わる。
「さっきから僕の事をこけにしている
愚かな人間共よ貴様らは,必ず僕の手で殺してやる!」
信長に蹴飛ばされたメフィストが蝙蝠の姿に化けて逃げようとする。
すると
徐々に石化していく。
ゴトッと音がして地面に落ちる。
僕は,終わったと安堵していた。
すると僕は何かに突き飛ばされ
近くで肉を切り裂く音が聞こえる。
よく見ると石化したはずのメフィストが
信長に噛みついていた。
メフィストは笑いながら
「油断したね!さっき石にされたのは僕の分身だよ。」
「本当は一希、君を狙ったのだけど信長に
邪魔されたよ。」
「信長は,これで悪魔に変わる。」
「此の勝負は引き分けだね。」と
言いメフィストは黒い霧になり消えていく。
紫色の禍々しく光る炎の渦に飲まれて
信長は,完全な悪魔へと変わる
悪魔になった信長は,凄まじい雄叫びを
上げると大地が震え
燃えて広がる炎も消し飛ぶ。
赤く光る鋭い眼光が此方に向き
身体中から腐敗臭が漂い、毒々しい
緑色の爪が伸びて襲いかかる。
僕は,交わして星蘭で攻撃を当てようとするが全てふわりと避けられ一撃も当たらない。
信長が奇声をあげ右手の指を
僕に向けると指先から見えない力が
飛んでくる。
身体に当たると僕は,森林の方へ吹き飛ばされる
僕は生えている木々にぶつかり地面に
めり込む。
空を飛び回る鬼が出てくる。
その姿と力は,風神に似ていた。
眼にも止まらぬ速さで信長に向かっていく。
風毬が信長に向かい風の塊を無数に放つ
信長も避けきれずに当たると脚がくだけ散る。
風毬は,凄まじい猛攻を信長に繰り出していた。
「歩空」と大伯父が唱え僕の方へ飛んでくる。
「一希さん大丈夫ですか?」と
地面にめり込んで動けない僕を持ち上げる
僕は,全身の激しい痛みでうずくまり
咳き込むと口から血液が流れ出ている。
意識が
すると
意識が,鮮明になり身体の痛みもとれる。
僕は,辺りを見渡すと遠くで砂煙と共に
地鳴りの様な激しい音が
立て続けに響きわたる。
恐らく風毬と信長が戦っている音だろう…
大伯父が《日髙望》「一希さん,残念ですが信長様は,完全な悪魔になりました。」
「祓う為にも一希さん、私に力を貸して下さい。」
僕は,ばあちゃんとの皆を助けると言う約束を守れない事に悔しくて拳を握り締めると
手から血が流れ滴り落ちる。
耳鳴りがキーンと聴こえると、
僕の頭に森蘭丸の声が響く
「信長様を救う方法が一つだけあります。」
「それは"強聖水"を、信長様に飲ませる事が出来れば元の信長様に戻せます。」
僕は,その事を大伯父に《日髙望》伝えると一緒にそれが可能なのかを悩んでいた。
望「今の信長様を抑えて強聖水を飲ませるのは難しいですね。」
一希「さっき僕に使った術で信長を縛れませんか?」
望「失礼を承知で言いますが、一希さんには隙がありましたので、私の拘束の儀が通用しました。信長様には恐らく当たらないでしょう。」
望「それにもし信長様を抑えれたにしても,強聖水の小瓶は一つだけなので、割られたらそこで終わりです。」
僕は心で,星蘭に語りかける…
すると膨大な陰陽道の知識が頭に流れ込む
僕は,何か方法がないかを知識の海を探していた。
知識の海に一つの光り輝く本が見える。
僕はそれに触れると表紙に(憑依による支配)と書かれた本を開くと
古代の文字が頭に流れこみ、
そして何故か古代の文字を読めていた。
憑依による支配とは、己の肉体に魂を憑依させて幽体の能力を行使する事が憑依だが基本的には幽体の精神が表に出る為に憑依された人間は自分の人格が一時的に喪失する。
しかし憑依させる魂よりも、憑依される者の
精神が強ければ、幽体の能力と肉体を操り支配出来る。と書いてある。
要は、信長に精神力で勝れば、
取り憑かれても信長を抑える事が
出来ると言うことだ!
その事を
「それは,一希さん危険な賭けですね。」
「私は,反対です。何故なら、もし信長様に勝てなければ一希さん、貴方の肉体が信長様に奪われ星蘭の力を行使出来る、悪魔が誕生するのですよ。」
と真剣な眼差しで
僕に言う。
僕は,それしか方法がない事と、そして後悔だけは、したくないと大伯父《日髙望》に頭を下げて頼んだ。
すると大きなため息をして
優しく撫でた。
それは,大伯父《日髙望》が信長を弱らせ僕の心に隙を与えて取り憑かせる。
そして僕が万が一失敗した時には、
夢莉達に念波を飛ばし聖域から出るように
指示を出して
時止めの儀式を行い僕達を封印する。
その作戦は、シンプルだが失敗すると
夢莉は,未来に戻れずにこの世で彷徨い、
ばあちゃんは,また悲しい想いをする。
僕は,顔を平手で叩き気合いをいれ
ばあちゃんとの約束を果たすと心に誓う。
先程の地鳴りが聞こえず静けさが
辺りに広がる
すると何かを食べる音がする。それは,
風毬を食べ尽くすと
信長の肉体が変わり風毬の風を身に
此方に来る。
風毬の力が宿った信長が僕達の方に
風の塊を無数に放つ。
僕と
蝶の様に舞いながら、
「天と地に宿りし精霊達よ日の血を,受け継ぐ我の命に従え」と念じ
複雑な印を結び、八枚の白い依り代に
息を吹き掛けて(
唱えると八枚の依り代に
火の精霊、水の精霊、木の精霊、土の精霊、鉄の精霊、光の精霊、闇の精霊、無の精霊
が宿り巨大な翼竜に変化すると
耳を引き裂く様な咆哮挙げる、
すると空間が精霊達の波動によって歪み、
巨大な翼で羽ばたくと天候が乱れ、
聖なる炎の雨が降り注ぎ、
鋭い爪と足で大地を踏み鳴らすと、
鉄の木が地面から生えて雷鳴が轟き雷が走る
巨大な尾を振り回すと、光と闇がぶつかり
周辺に凄まじい重力波を放ち
各地にブラックホールが発生して
木々や草花を漆黒の闇に呑み込む
身体は、黒い鱗が全身を覆い、漆黒の魔力に
満ちていた。そのドラゴンは、人の言葉で語る。
「我が名はディアボロス、日の血を,受け継し者のみに従う。」
「汝、の命により此の地に来る、汝の望みは?」と黒縁に映る瞳を
向け命令を待っていた。
ディアボロスは,咆哮を上げて「承知した。」と一言発して悪魔と変わり果てた
信長に飛んで行く。
ディアボロスと悪魔になった織田信長の戦闘が始まる
ディアボロスが巨大な翼を広げ羽ばたく
聖なる炎の雨が信長に向かって降り注ぎ
全てを焼き付くそうとする。
悪魔信長は右手に力を込めて,降り注ぐ
炎の雨に向かい闇の衝撃波を放つと
聖なる炎を凄まじい轟音と共に弾き飛ばす。
僕は,"悪魔になった信長"と"ディアボロス"の
戦いを観ていて不思議な感覚に襲われる。
それは、恐怖を感じつつ"戦ってみたい"
という衝動が僕の心を覆い気分が
とても高揚していた。
大伯父が《日髙望》僕の心を見透かしているかの様に
「一希さん、それは星蘭の力によるものだと思いますよ。」と言うと
僕の方へ
顔を向けて思い出しながら話を続ける。
「日髙家の伝承に、"退魔刀星蘭"は,邪悪な者を、祓う代わりに力を行使する者も,また
闇に染める。と言われていますからね。
恐らく一希さんも,その関係で闘争本能が
昂っているのだと思います。」
手で印を結び"ディアボロス"を自分の霊力で
巧みに操りながら淡々と説明してくれた。
すると凄まじい轟音と共にけたたましい悲鳴が辺りに響く。
僕は,信長達の方を見ると悪魔になった信長をくわえているディアボロスが
雄叫びを上げている。
ディアボロスを精霊界に返すと
腹部に複数の牙の後がある
瀕死の悪魔になった信長が地面に落ちる。
僕は,急いで信長の方へ近づき自分の手首を星蘭で切ると,僕から生暖かくドクドクと
紅い血が流れる。
その血を信長の口に垂らすと信長の傷が
塞がっていく。
僕は、精神を集中させて「我が血を分けた
悪しき者よ,我に力と魂を此の身に宿せ。」と唱え、手を合わせて念じる。
すると信長が黒い霧となり僕の瞳に吸い込まれる。
僕は意識をなくして,倒れそうになるが大伯父が《支えて》そっと地面に僕をおいて
「後は,任せましたよ!」と僕の側で座る。
◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻
何かパキッパキッと燃える音が聴こえて
肉が焼ける焦げ臭いがする。
そして凄く暑く息をする度に
肺が焼けそうな感覚におちる。
僕は,目を開けると、沢山の矢が
突き刺さり倒れている武士と
何かに斬られた人達の亡骸が辺りに
転がり炎に包まれていた。
僕は,信長を探して歩く…
天井や壁全てが炎で焼かれその煙が
口を通して喉と肺を焦がす。僕は,咳き込みながらも燃え盛る所歩いて進む
メリメリと音がすると後ろの方で
天井が焼け落ちる。
すると前方から怒号と斬り合う音が聴こえる。僕は,音のする方へ走って行く。
金属同士がぶつかる音が響くそこには左手が悪魔になっている信長と邪悪な魔力を持っている武将が戦っていた。
織田信長「光秀、正気に戻れクソガキ《メフィスト》ごときに操られるでないわ!」
光秀「私は、正気ですよ確かにメフィストと名乗る鬼が私の中にいますが、本気の
織田信長「ふざけるでない!ならばわしだけに斬りかかれば良いではないか!」
織田信長「他の者まで、巻き込みおって此の阿呆が貴様が、斬った者の中には貴様の事を、慕っておる者もいたのだぞ!」
すると光秀と呼ばれている者の身体から黒い霧が吹き出し一つの形になると言葉を話す。
「やぁ信長,久し振り、比叡山の時以来だね。」深淵の瞳で信長を見詰めるメフィストが立っていた。
織田信長「此のクソガキ《メフィスト》がわしに怨みがあれば直接こい!
メフィスト「あぁ恐ろしいよ、比叡山の時も僕は,お前に星蘭で殺されかけたからね。」
メフィスト「でも、闇の真理書が手に入ったからもう怖くないけどね。」
織田信長「あの時,貴様を祓っておればこんな事には,ならんかった。それが一生の不覚じゃ。」
メフィスト「それは,しょうがないよだって僕が逃げる為に比叡山を闇の炎で焼いた時に、僕を祓う事、よりも火に焼かれる人を,助けようとするからだよ、愚かだね!」
メフィスト「だから隙があった信長、お前の大切な友と呼ばれる明智光秀に取り憑いてやったよ。」
メフィスト「明智光秀のおかげで沢山の悪魔を作る事が出来たよ、今度は,信長お前の命を貰おうか!」
織田信長の身体に突然激しい痛みが走り
苦痛に悶え星蘭を,落とす。
明智光秀は,信長の星蘭を奪い不気味に笑う
メフィストが「光秀、さぁ星蘭を,僕の方に持ってきなさい。」と
明智光秀に向けて女神の様な慈愛に満ちた
微笑みを浮かべ命じる。
明智光秀は,星蘭を持ってメフィストの方へ近づく
すると明智光秀は,星蘭を握り締めて
メフィストの心臓をめがけて突き刺す。
黒い液体が心臓から吹き出しメフィストが
けたたましい悲鳴を上げる。
明智光秀「私は,星蘭による呪いでお館様が苦しみながら鬼に変わる運命を変えたかった。メフィストさえいなければお館様は、星蘭を握る必要性がなくなります。」
明智光秀「お館様に仕える事が出来て私は,毎日が楽しく充実した日々を過ごせました。」
明智光秀「今川様に仕えていた私を拾って下さり様々な世界を見せて下さいました。お館様、あなたは,この先の時代にも必要な方です。平和な時代を築いて下さい。」
織田信長「たわけが、わしが築けなくとも
お主達や、その子孫が築けばよいことよ。」
すると星蘭から黒い炎が吹き出し明智光秀を包み込みこまれる。
明智光秀「お館様、さらばです。」
と信長に語り終えると光秀の背中にから鋭い爪が貫く赤い鮮血が飛び散り信長と明智を
紅く染める。
メフィストが「この僕が君の様な小者が扱う
星蘭に殺られる訳がないよ。」
と笑っている。
織田信長がさされ倒れる明智光秀を支えて声をかけるが明智光秀の瞳から命の光が消えかけていた。
信長は怒りと憎悪に染まり身体が異形の化け物に変貌していく明智光秀の持っている
星蘭を取りメフィストに斬りかかる。
しかし星蘭は,光りを発せずメフィストに
傷を一つもつけれない。
メフィストは,笑いながら
「星蘭に魂を汚された者が力を使いこなせる訳がないよ。」
と言い話し続ける。
「信長、もう終わりだね僕の仲間になりなよ共に魔王ルシファー様を封印から解き世界を滅ぼそう!」
と信長にメフィストは,右手を差し出す。
信長はメフィストの手を払いのけ「貴様の、手先にこの織田信長がなるわけなかろう!ドこの阿呆が!」と言ってメフィストが持っている闇の真理書ごと星蘭でメフィストを貫く。
すると時間が止まりメフィストも何もかも
動かない。闇の真理書から深く黒い塊が
脈を打ちながら滲み出る。
その塊は巨大で漆黒の翼を背中にたずさえた獣となり信長に語りかける。
「我は、闇の門と生者の門そして狭間を護るケルベロス。」
「汝は,盟約者か?」
と重々しい空気を出し睨みつけて
信長に尋ねる。
信長は「盟約者かどうかは、知らんがケルベロスよわしに力を貸せい!」
とケルベロスに睨み返しながら話す。
ケルベロスは,笑いながら
「我に全く怯まないのは汝が初めてだ。」
「汝を気に入った望みをいってみよ。」
と信長に問いかける。
信長は,「わしの望みは、友を救いメフィストを止める事じゃ!」
「ケルベロスよ、お主には,それができるのか?」
するとケルベロスは「出来るが汝の命と肉体を我に捧げよ。望みを叶えよう!」
と信長に話す。
信長は,血を流して倒れる
明智光秀の傷が塞がり
メフィストが闇の真理書に吸い込まれる。
ケルベロスは、「望みは,叶えた。」と
言って大きな口を開けて信長を
噛み砕き食べる。
その瞬間また景色が変わり今度は、
全てが深く暗い闇の空間に
僕は,たたずんでいた…
すると闇の向こうから何か近づく気配がする。
何かが風を斬り僕の左手に当たる。
ボトッと音がして激しい痛みが左手からして何か吹き出す。
僕は,星蘭を心で呼ぶと右手に収まる。
星蘭を,つよく握り締め掲げて
「闇を照らせ」と命じると
星蘭から光りの粒が複数出て辺りを照らす。
人影が見えるよく目を凝らすと悪魔になっている信長が僕の左手を貪り食べていた。
邪悪な信長は,獣の様な雄叫びを上げて僕に襲いかかる。僕は,星蘭で信長に激しく
斬りかかるが、全てかわされ
僕の右手に噛みつく。
右手が噛み砕かれ千切れ
鮮血が吹き出し邪悪な信長を
真っ赤に染める。
信長は僕の右手を貪り食べていた。
両手から鮮血が吹き出し激しい痛みが
僕の心を恐怖に染める。
信長は,右手を食べ終えるとまた僕に襲いかかる僕は,走って逃げるが追いつかれ左脚を捕まれ鋭い爪で切り裂かれ僕は,地面に倒れる。
焼ける様な痛みが僕を襲いドクドクと
切り裂かれた脚から血が流れる。
切り裂いた左脚を手でちぎりまた旨そうに食べている骨が砕かれる不気味な音が聴こえる。
僕は,死を,感じていた。
信長に食い殺されると諦めかけた時、
急に頭に懐かしい声が響く。
「お兄ちゃん負けないで、お願い、私を一人にしないで。」と泣く夢莉の声が聴こえる。
このまま死んではいけない
夢莉をまた守れないのか
それだけは嫌だという気持ちが沸き上がり
僕は,片足で這いずり
口に星蘭をくわえると左脚を
貪り尽くした織田信長が襲いかかる。
今度は僕の右脚を切り裂き手で引き裂き
食べようとしている。
僕は,激しい痛みに耐えながら口にくわえた星蘭に集中して念を送ると星蘭が
紅く光り大きな斧に変わる。
僕は口にくわえた斧が,重たすぎて
くわえていられずに、口から離す。
すると斧が僕の右脚に貪りついている信長の首に落ちて僕の右脚ごと切断する。
悪魔になった信長のけたたましい悲鳴が
響きわたる。それと同時に漆黒の闇に
覆われた空間がひび割れそこから
光がさし始める。
僕の,手足からおびただしい量の血液が
流れる。薄れ行く意識の中で夢莉の事を,想いながら、僕は,死んでたまるか!と
必死で光りのさす方へ這いずって行く。
すると僕の顔に何かがぴちゃっと落ちて
頬を伝い濡れる。
気が付くと僕の目の前に泣いている
夢莉の顔が映る。
「お兄ちゃん、良かった目が覚めて
もうダメかと思った!」と僕にしがみついていた。
すると「一希さん、早く強聖水を飲んで下さい!」と
僕は,慌てて強聖水の入っている小瓶を,
出そうとするが何故か焼けつく痛みと
共に手足が動かない。
ふと手足を,見ると僕の両手と両足が異形の禍々しい悪魔の形になっていた。
僕は,「手足が動かないから、日髙叔父さんお願い、僕に強聖水を,飲まして!」
というと
頷き僕のポケットを、
まさぐり小さい小瓶を見つけると
蓋を開けて僕の口に流し込む。
すると激しい痛みと焼けつく様な感覚が襲い全身からおびただしい量の黒い煙が僕の身体から出てくる。
眼から何か出て来ようとするが
僕は瞳を閉じて出さない様に目をつむる。
急に僕の身体が震え出して痙攣が起きる。
それでも僕は,何かが外に出ない様、に
身体中に精神を集中させて踏ん張る。
僕の身体から激しく焼けつく痛みが
徐々に引いていき、手足が動かせる。
キェーと高い鳴き声が聴こえる。
僕の身体から出てきた黒い煙が新たな
宿主を探して動き出す。
僕は,星蘭を握り締め念を込めると
淡く金色に光る一振の刀になり
そのまま僕は、黒い煙りに星蘭を振り
切り裂くすると黒い煙は,
光る星の粒となって
消滅した。
「やっと終わった!」と安堵した僕は
地面にバタンと倒れ込む。
夢莉達が倒れた僕を心配して近寄る。
夢莉「お兄ちゃん大丈夫?」
日髙望「一希さんよく頑張りましたね。」
日髙雪「助けてくれて有難うございます。」
と激しい戦闘が終わり僕は,
夢莉が「日髙叔父さんから作戦を聞いて、
雪ばあちゃん達と一緒に、星見沼の安全な
場所まで送って来たから大丈夫!」
「でもばあちゃん、日髙叔父さんの事が心配だからと言ってこっちヘ来ちゃったよ。」
とケラケラと笑いながら話す。
日髙望が「今回は,一希さん達に助けられましたおかげで私もまた家族と一緒にいられます。ありがとう!」右手を僕に差し出す
僕も右手を握り返し
「こちらこそ日髙叔父さんのおかげで何とか目的は,果たせましたありがとうございます。」と僕がいうと
少し憂鬱そうに
「確かに、一希さん達の大伯父なのですが
過去では、一応同い年なので、この時代
では、"望"と呼んで頂ければ幸いです。」
と真顔で僕に言うので「分かりました」と
頷いた。その言葉を聞いて
夢莉と雪が笑っていた。
「童よ誰かを忘れておらぬか?」
と声が聴こえ何か僕から飛びたそうとする。
僕の瞳から光りの玉が出てきて
眩しい光りを放つとそこには
元の織田信長が腕を組ながら
仁王立ちで浮いている。
織田信長「黙って聞いておれば、お主達、
一番活躍したのはわしだと忘れておるな!」
織田信長「わしが、庇ってやったからお主は助かったのだぞ感謝いたせい!」
僕は,面倒くさっと、思いながら織田信長に感謝すると感謝の念が
足りん!といきなり頭を殴った。
僕は,頭に来て信長に殴りかかるが
コテンパンに叩きのめされる。
織田信長は,「スッキリしたは!,愉快じゃ
、愉快じゃ」と笑っていた。
イライラしている僕をなだめながら望が
「メフィストを逃がしてしまったのは、失敗ですね。これから何が起こるか、わからないので注意しないといけませんね。」
と皆に話す。それを聞いて僕の頭から低く不気味な声が語りかける。
「汝の最初の試練は無事に終わった。」
「つぎの試練は,人々に襲いかかる
悪魔を祓い過去と未来を救え。」
「我は、ケルベロス、闇の門と生者の門と
狭間を護りし者。」
と言いのこして僕の頭から気配が消える。
僕は,その事を望や織田信長達に伝えると
日髙望が「分かりました。私も手伝える事があればいつでも連絡を下さい。」
と言って小さな月と太陽の飾りが
ついている手鏡を僕に手渡し
「これに向かい私の事を念じればここに繋がり過去の私と話しができます。大事に持っていて下さい。」と話しをして
今度は,織田信長に
「信長様は,これからどういたしますか?」
「もし宜しければ日髙家が、責任を持って、新たな石碑を築き信長様をお祀りしたいと、思いますが…」と伝えると
織田信長は,「望、お主の気持ちはありがたいがわしにもやらねばならぬ事 が出来た。」
「メフィストを捕らえ退治する事。」
「そして月詠一希をこれから、鍛え上げ星蘭の本来の力を、使いこなせる様に、性根から叩き直さなければならぬ!」
と決心をしたように拳を空に向けて話す。
「分かりましたでは,皆で元の世界に帰りますか。」と言い精神を集中させ
「星を刻みし者よ、我は日の血を受け継ぐ者なり、ここにいる者達を元の定めの星に届けよ。」と複雑な印を結ぶと
僕が持っている手鏡が光りその中に
僕達が吸い込まれると、
周りに沢山の星屑が流れて行く。
遠くで「本当にありがとう!」と
雪さんの嬉しそうな声が聴こえる…
◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻◼◻
凄まじい数の流星が、僕達の後ろに流れて行く。すると大きな淡く光る太陽が、僕達の前に現れ、それに触れると、"ガチャーン"と
音が響きわたる。
物置小屋の埃が舞い床に穴を開けて
出てくる人影が3つ見える。
穴から這い上がる。
僕は、穴から這い上がる夢莉達をみて
「幽霊なのに何で浮かないの?」
と二人に聞くと幽霊でも
集中しないと浮いていられないと
物凄く怒られる。
遠くからパタパタと足音が聞こえる。
「なんだい!こんなところに大きな穴を開けて三人とも、怪我はないかい?」
と雪ばあちゃんが心配そうに尋ねる。
僕達は、「雪ばあちゃん,約束守れたよ!」
と過去に行き自分達の身に起きた事を全て伝える。すると雪ばあちゃんは,「全部分かってるよ。カズちゃん、ゆうちゃん、ありがとね。」と僕達を"ぎゅっ"と抱き締めた。
「お主まさか、あの娘か、えらく年をとったのぉ。」と信長が雪ばあちゃんをみて言うと
雪ばあちゃんが「あれから40年経ちますからね…」と苦笑いをする。
今度は,僕達の方をみて「会って欲しい人達がいるから、カズちゃん達ちょっとこっちへ来て。」
と言うので雪ばあちゃんの後を
着いていくと、二人の老夫婦が囲炉裏の前で
お茶をすすっていた。
その二人は,とても仲がよく、おじいちゃんがお菓子を食べて、口の周りを汚していると
おばあちゃんがハンカチで
拭いて上げていた。
そして老夫婦は僕達に気付くとこちらに
向かい歩いて来る。
「あの時は,ありがとね!私の事を分かるかね?」とおばあちゃんが
言うので僕は「どなたですか?」と尋ねると
雪ばあちゃんが「私の古くからの、友人の
しげちゃんとメーちゃんだよ。」
「カズちゃん達が過去に来て、助けてくれたからお礼を言いたくて来てくれたんだよ。」
するとおじいちゃんが「美保さんやその人は、話していたカズ君かい?あの時は、本当にありがとうございました。おかげで今は、美保と一緒になり娘も出来てわしは、とても幸せですわい。」と笑って話した。
僕はその姿をみてほっとして、急に眠くなりそのまま眠った。
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