MAD

みっこごっこ

第1話

ウォーーーーーー

また、サイレンが鳴っている。

20‪✕‬‪✕‬年S区。

30年ほど前は繁華街だったらしいが今じゃ猫みたいなドブネズミが颯爽と徘徊するゴーストタウン。


住民の半数以上が生活保護を受けている。

数年前に完全崩壊した年金制度。

俺の親父40歳も生活保護受給者。

学校行っても生活保護受給者多すぎて、特に恥ずかしさも覚えない。


親父が子供の頃は、そりゃ生活保護と言えば落伍者みたいなイメージだったらしいが、

仕事もない、年金も崩壊、頼れるライフラインと言えばそこしかない。


昔は住居ありきの生活保護だったらしいが

今じゃ、住民票なんてものも存在しない。

あるんだろうが、あれは1部の特権階級の名刺みたいなもんだ。


じゃあ俺らはどうしてるかと言うと、ゴースト化した家だのアパートだの団地に居座る。勝手に荷物持ち込んで暮らしている。

役所が機能してないんだから、誰もなにも言わない。

ただ、住むエリアだの建物に派閥がある。

中華系は中華系、それぞれアジアの派閥、ヨーロッパ系、アメリカ系、アメリカでも元ニューヨーク系や東海岸系、の中の普通世帯、ギャング世帯、etc……細かく細かく細分化されてる。


俺と親父はA区からの流れ者なんで、下町から流れてきたエリアに住んでいる。


この世はMAD


親父は昔バントやってたらしい。

このMADという言葉が好きで、そんな歌を歌い、俺に窓という名を付けやがった。

世界への窓を開こうなんて適当な後付けの理由と共に。

MADって狂気だぜ?


俺まともに育つと思うか?


それが今んとこは割かし真面目に育ってる。

特技は賞味期限切れのパンを集めること。

それのどこが真面目だって?


この街ではライフラインを自分で開拓することが真面目に生きてくってことなんだ。

文句あるやつは2025年位に帰ってくれよな。

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