世界を変える気はないが、結果はいつも劇的だ ~死後、最弱で最強になった男の異世界再生録~

@kei_9

第1話  第一章①―神癒と断罪の少年―

 ――熱い。


 燃えるような胸の痛みに、意識が浮上する。視界はぼやけ、耳鳴りが木霊する。冷たい空気が肌を刺すのに、胸の奥は灼けるように熱い。


 (……なんだ、これ……?)


 息を吸うたびに、肺が針で突かれるように痛い。呻き声すら出ない。ただ、確かなことが一つ――胸に、何かが突き刺さっている。


 (槍……? 刺さってる? 俺の……胸に……?)


 意識は混濁していたが、そこだけははっきりと感じた。どす黒い痛みと共に、視界が赤黒く染まる。


 死が近いと、本当に分かる!!――。


 そんな現実味のない実感が、薄れゆく思考の中でぽつりと浮かぶ。


 その時、頭の中に声が響いた。


 『呪文を唱えなさい』


 声? 誰の? 幻聴? でも、なぜか……分かる。何を唱えるべきか。知識の海が、脳内に流れ込んでくる。コードのような、音のような、でも確かに――これは魔法だ。


 言葉が自然と口をついて出る。


《神癒の奏(カミイユノカナデ)》


階級:第五階級魔法(神聖系/支援術)

属性:聖音(せいおん)属性+光癒複合属性

形式:詠唱型・持続型(領域展開型)

効果範囲:約700メートル(空間内対象全員)


 その瞬間、世界が光に包まれた。


 眩しい。温かい。まるで神の福音が降り注いだかのような輝き。音が消え、空気が震える。胸に刺さっていた槍が――音もなく、消えた。


 傷が、痛みが、まるで爽やかな風を受けてるように消えていく。


 (……これ、俺が……?)


 周囲の騎士たちもまた、倒れていた者たちが、次々に起き上がる。裂けた鎧も、折れた骨も、焼けただれた皮膚さえも――何もかもが元に戻っていた。


 中には、一度絶命していたはずの者すらも……。


 信じられなかった。


 けれど、確かに目の前で起こった光景だ。


 (……いや、いやいやいや、いやいやいやいや!!!)


 これは夢か? 妄想か? だが、感触はリアルだった。地面は硬く冷たく、土の匂いが鼻を刺す。痛みも、震えも、恐怖も――あまりにも現実的だ。


 「少年!」


 声がした。血で濡れた白銀の甲冑を着た男が、盾を構えて近くまで駆け寄り目の前に立つ。顔の半分が血に染まり、片目は潰れていた――はずだった。今はもう、まるで何事もなかったかのように立っている。


 「この回復呪文を使ったのは、君か?」


 「えっ、えっと……わかりません💦」


 本当に、分からなかった。


 自分が唱えたことは覚えている。でも、まさかそれでこんな奇跡みたいなことが……?


 「では、質問を変える。君の周囲で、強い光が見えたのだ。何かしら“行った”か?」


 「……したみたいです💦」


 答えながら、自分でも戸惑う。


 そのとき、再び、頭の中に「それ」が流れ込んできた。


 新たな呪文。契約術式。


《煌天十翼(こうてんじゅうよく)》


階級:第六階級魔法(召喚/制裁/神命術)

属性:神光属性+召喚・律罰複合系

形式:詠唱型・制御型・自律行動型召喚


 唱えた瞬間、世界が凍りついた。


 空が白く輝き、音が止まり、ただ“存在の威圧”だけが空間を支配する。


 丘の上に、十人の騎士が現れる。


 白銀の鎧に、背中には光の翼。天界召喚部隊セラフィック・オーダー


 「……天命により、咎を正す」


 静かに告げた団長の言葉が、死の宣告のように響いた。


 ――詠唱、開始。


 天空が裂け、光の杭が降り注ぐ。


 盗賊たちは、反応する暇もなく貫かれ、消え去った。逃げる者も、天使の羽根に触れた瞬間、魂ごと浄化される。


 一瞬で、全滅。地面は焦土となり、そこには何一つ残らなかった。


 騎士たちは声も出せず、ただ呆然と立ち尽くしていた。


 その中で、私は。


 (なにこれ、俺、なんか……やっちゃった?)


 いやいやいや、ちょっと待て。これは、さすがに……。


 そんな戸惑いの中、ふらつく足で騎士の方へと近づく。


 「あの……騎士さんでいいですか? えっと……俺たち、助かったんですかね? それと、さっきの……あの神々しい方たち……俺が、なんかしたんですかね……?」


 騎士は、ただ目を見開いて、何も言えなかった。


 どこか遠くで馬の嘶きが聞こえる。どうやら護衛騎士たちが、集まってきたようだ。


 聡はふと、自分の身に着けているボロボロの服に気づいた。そして、他の子どもたちもまた同じ格好で、怯えた目をしている。


 (ああ……そうか。俺、“奴隷”だったんだ……)


 騎士たちも、状況を理解しきれていないようだった。だが、ひとまずは、生き延びた。そう判断した隊長が、帰還を決める。


 疲弊した身体と、荒れ果てた心を引きずって、護衛一行は帰路についた。


 ――斉藤聡の異世界譚は、ここから始まる。


 思わず空を見上げる。さっきまでいた


ランクや強さ魔法設定

第1階。人間レベル1〜5

一般人、農民、下級兵士など

・生活魔法の使用可(灯り、水、火起こしなど)・魔法スクロールの一部が使用可能・魔力量は微小で、鍛錬も未熟


第2階人間レベル5〜50

熟練戦士、中級魔法使い、衛兵長など

・四大元素魔法(地水火風)の基礎操作が可能・武芸・魔法ともに地域で尊敬されるレベル・一部の攻撃魔法・補助魔法を習得


第3階レベル51〜100

英雄、宮廷魔術師、地方領主など

・人間の到達可能な限界レベル・魔法の応用使用(複合属性、広範囲)も可・高位スクロールも自作・使用可


第4階レベル国家、稀人。人間に例えたら101〜1000

Lv.101〜1000(実質人間単独到達Lv120。国家レベルでLv200)

・国家単位で動員される魔法儀式級の力・複数人で陣を組み、数日〜数ヶ月の儀式魔法が可能・人間界ではLv200未満が限界


第5階レベル精霊王。魔獣王。レベル1000〜10000

・人間では存在不可能な領域・自然災害級の魔法発動が可能


第6階レベル神兵、天使、魔神

・天界・冥界などに住まう存在・人間界への顕現=天変地異クラスの影響・1存在で世界を滅ぼす力を持つ


第7階レベル高位神使、七大天使、七つの大罪

・神の使徒として神意を行使する存在・世界の理に干渉し、概念を改変する・契約・奇跡・禁呪すらも対象とする


第8階レベル。ゼウス。サタン

・全世界の創造・終焉に関与する存在・複数世界にまたがる次元の支配者・基本的に登場しない“座標そのもの”の存在

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