第2章 選択しない選択、或いは選択肢のない選択(9)

 駅前に着き、簡単にお礼などを伝えてナギが去ろうとしたところで、「あの!」とハヤテに呼び止められる

「……なんでしょう?」

「いや、急にこんなん言うのも、マジで突然すぎてアレなんすけど。タイミングとかもあるだろうけど、でもそういうの考えるの苦手なんで、だったら善は急げかなー、みたいなやつで」

 妙に歯切れの悪いハヤテの方に、改めてナギは向き直る。そして彼の言葉を待つ。

「ナギさん」

「なんでしょうか」

 少しの間を置いて、ナギの目を正面から見たまま、ハヤテは言葉を続ける。


「──惚れました。好きです。俺と、付き合ってくれませんか」


 ナギの肩の上に浮かぶMenDACoデバイスは、変わらずに動かない。余りに予想を外れたその言葉に、感情が動くことはなかった。それどころか、思考すらも停止していた。何も動かない。否、動けない。瞬きすらも忘れ、ただ、ハヤテを見つめ返すことしかできない。


 数秒間、たっぷりと時間をかけた後、ナギが唯一発する事が出来たのは、一文字だった。



「────は?」

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