可愛らしさ、いろんな感情の温度、その奥に広がる有限で無限な楽しい世界

初見時、キュートだ!と思いました。
コミカルであったり、切なかったり、勢いがあったり。さらっと読んだだけで、多様な感情を味わえ、色々な情景が見え、それを受けて自分の中からも感情がわいてきました。
そういった直感のままに受け取っても素敵な作品ですが、深読みするのもとても楽しかったです。
10首連作部門と違い、1首部門は方向性的なものが示されません。その分、読者はどこまでも自由に作品を解釈していくことができるのではないでしょうか。
一度思い込んだ解釈を手離して、いろんな角度から見つめ直すと、たった三十一文字からいくつもの世界が見えてきて、すごく面白かったです。
それは1首1首が選び抜かれた言葉で詠まれているからだと思うし、主観と客観・わかるとわからないのバランスが絶妙だからだと思います。
また、そうやって自由に読み取ったものを作者様が受け入れてくれ、返信をくださったことで、短歌ってすごく自由で楽しいものなんだな、双方向のものなんだな、ということを教えていただきました。

短歌の楽しさをいっぱい味わうことのできる歌集です。
ヨんでヨまれて、どこまでも広がっていく世界がここにはあります。

その他のおすすめレビュー

きみどりさんの他のおすすめレビュー898