第8話 加護マウント
「まあ!ジェフリー様の火魔法の威力はすごいんですのねぇ!」
ジョアンナ様が両手を前で組んで感激した様子で褒める。
「いや、それほどでも。すごく怒られたよ」
ジェフリー様が気まずげに言う。
「凄いですわよ!私が水魔法の加護を得たら、何かあっても消して差し上げますわ!」
ニコニコして胸を逸らすジョアンナ様。言った後、なぜかキリッとした目で私を見た。
「そういえば、アリア嬢も加護の儀を受けたんだよね。何だったの?」
ジェフリー様がそう言って私の顔を覗き込むように見ると、アレクシス様がジェフリー様の視線を遮るように手を広げた。
「加護は聞いてまわって良いものじゃない、と……思うよ……。マグノリアノでは、だけど……」
最後の方はボソボソと言っていたけれど、私を庇ってくれたらしい。
私はにこりとアレクシス様に微笑んだ。
「アレクシス様、お気遣いありがとうございます。
私は、素養はあまり高くなかったですけど水と光でした」
「え!」
私の言葉を聞いて大きく反応を示したのはジョアンナ様だった。
「お母様と同じ……!」
「へえ。光魔法って希少なんだってね」
ジェフリー様が感心したように私に向かってそういうと、ジョアンナ様が
キりッとまた強い目で私を見た。そして、ジェフリー様の方に向き直ってふんすっと胸をはる。
「わ、私だって、来年加護の儀を迎えてたら、きっと……。水と光の加護を得ますわ!」
あれ?もしかして、ジョアンナ様は私に何か対抗心を燃やしているんだろうか。
「ジョアンナ……」
ボソリと言いながらアレクシス様がジョアンナ様の袖を引っ張った。
「そう言うのは、加護マウントになるよ」
「え?」
カーッとジョアンナ様の顔が赤く染まった。きゅっと口の端に力を入れて目を伏せる。
「加護マウント?」
「……うん。この国では言わないのかな。自分の加護や家族の加護が凄いとか自慢することを言うんだ」
私が尋ねると、アレクシス様は答えてくれた。内向的な印象だったけど、妹にも注意をするし私のことも庇ってくれたし、良い人だ。
「えー!俺の火魔法すげぇだろう!って昨日言っちゃったよ!何なら、魔法も撃った!」
「ジェフリー、加護マウントも良くないけど、火事は洒落にならないから、気をつけた方が良いよ」
「ああ!気をつけるよ!」
ニカッと白い歯を見せてジェフリー様が笑う。
そして庭園の奥に進み、訓練場らしき場所を見せてくれた。アルバトロス家の訓練場のイメージとは全然違う。石造の倉庫みたいな場所だった。
「倉庫かと思いました」
「倉庫だよ。元はね!火魔法の練習ができるところがここしかないから」
倉庫かと思ったら元倉庫だった。ジェフリー様の練習用というより、パロット子爵家の火属性の素養が有る人が使い始めた場所らしい。
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