空を飛んだペンギン

nogi2

佐渡島生まれのペンギン

「お前、出身はどこだ!」

「はっ! 北極でございます!」

 ペンギンは勇ましく嘘をついた。

 そういう訳で、いま私は北の海で鯨漁をすることになった。

 船にはnezumiのnezumi、バカ猫の𓃠、アホの鳥アホウドリ。素晴らしい船員達だ。多様性って素晴らしいだろ。おらっ!

 船はオホーツク海を突っ切って、更に北に進む予定だった。しかし、あいにく南樺太の環境保護家が船を勝手に使って、こっちにぶつけてくるんで、仕方なく、アラスカ方面から北大西洋に進むことになった。くそ人間め、くたばれ! こっちも密漁なんだ、静かにしとけ!

 俺は船の寝室の、ぼろっちいベッドで唾を吐いた。心の中でだ! すると、バカ猫のバカが、いかにもな頭の悪そうな語りで、こっちに言葉を話してきた。しゃんと喋れよ、このあほばか!

「曲がっちゃったね、あんたも」

「ちっ、なんだこのクソッ! お前が勝手に連れ出さなきゃ、俺はこんなになってないんだい!」

 すると、𓃠は嫌な顔をして出ていった。俺の方が嫌な顔をしたいんだ。

 しっかし、よくできた寝室だ。まるでホテルだ。流石は船の予算の半分を集中させただけはある。寝床には足元にブラウン管のテレビがついてあり、そこからアニメーションが流れる。ネズミと猫が乗った船だ。蒸気機関で上流から下流に流れていく。何と面白い世界なんだ。俺もあんな船旅ができればな……。

 そう思いながら、ペンギンは眠りについていった。














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