転生したら双子の妹と弟が可愛すぎるので、頼られるお兄ちゃんを目指します!
芥の手でも
第一話 期待高まる異世界転生
苦しい、苦しい、いっそ――誰か――殺してくれ。
息ができない、苦しい、暗いしここはどこなんだ?
はっ、やっと、光が――。
「うぎゃああああ。おぎゃあああああ。」
え!? え!? 声は勝手に出るし、目はよく見えないし、俺、どうなってるの?! それに、ここはどこ?! どういう状況?!
もしかして――これ――
異世界転生ってやつかーーーーーー!!!!!!!
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――時は流れ、3年の月日が経った。
異世界転生をしてから、三年。俺は二日前、誕生日を迎え、三歳となった。
窓から射す燦燦とした陽光に目を細めながら、目を覚ます。今日もいい天気だ。何度か目を瞬かせてから、勢いを付けて起き上がる。
そして、俺はベットから降り、姿見の前で自分の姿を確認する。自分で自由になってからなんとなく始めたルーティーンだ。
三歳ゆえにまだ五頭身ぐらいの体。髪の毛は金色で少しくせがある。目の色は黄金色とでもいうのだろうか。我ながら綺麗な目の色をしている。顔だちも、この年から少しつり目なのが心配だが、なかなかに整っている。改めてこう見ると、自分が成長したことを実感する。
いやーしかし、この三年間は大変だった。慣れない赤ちゃん生活に、慣れない異世界生活。最初のうちは、目は見えづらいし、体は自由に動かせないし、自分の思い通りに行動できないし、で何もできないかった。
極めつけはそう、
加えて、問題だったのは……ご飯。いや、はっきり言おう、授乳だ。恥ずかしさはMAX!!! だけど、赤ちゃんだった俺にとってそれは滅茶苦茶魅力的で……抗えなかったんだよなぁ……。
でも、今は
そんな感じで順当に成長している俺。今の生活に不満は特にない。だけど、この
今までの生活に思いを馳せていると、扉をノックする音が聞こえる。
「エーブル様、起きていますか。入りますよ」
起きてるよと伝えると、艶のある黒髪で腰近くまで長く伸ばしているメイドが部屋に入ってくる。
「おはようございます。エーブル様」
「おはよう、リエラ。今日も髪が綺麗だね」
「あら、うふふ、ありがとうございます。エーブル様ぐらいですよ、褒めてくれるのは」
「みんな思っているけど、いわないだけだよ。言えばいいのにね」
この上品そうに笑う女の子は、メイドのリエラ。確か今年で十七歳になるとか。前世で言うと女子高生!? 自分で思って驚くが、全然大人びて見える。
今の自分は三歳だが、自分は前世で何歳まで生きたんだろうか。――思い出そうとするが、やっぱり思い出せない。
そう、これが不満点のひとつ目――前世の自分についての記憶がないのだ。前世は地球の日本で生活していたことや、学校などで得た知識などは思い出せるのだが、自分自身については、きれいさっぱり思い出せないのだ。名前も年齢も家族のことも、なにもかも。かろうじて、前世も男だっただろうってことぐらいしか思い出せない。それに加えて、不満点のふたつ目――何にも転生特典のようなものがないのだ。三年間の生活でこの世界に魔法が存在していることは知っているが、自分から魔力を感じるとか、何かものすごいスキルを発動できるとかもないのだ。こういう異世界転生って、トラックに撥ねられて死んで、神様に合って、空間魔法とか古代魔法とか魔力を滅茶苦茶貯められるとか、そういう転生特典を得るもんじゃないのか?! 神様に会うことがあったら文句を言ってやりたい!!
「エーブル様、大丈夫ですか?」
リエラに声を掛けられて、ハッと気付く。思考に耽りすぎたみたいだ。
リエラに大丈夫だよ、と返答する。リエラは安心したような顔をし、俺の朝の準備を手伝い始める。朝の準備は俺一人でも出来るのだが、前に一人で行ったらリエラに、私たちの仕事を奪わないでくださいと優しく諭された。それからは起きていても、メイド(専らリエラ)が来るまで何も準備せずに過ごすようにしている。
洗顔や着替えなど準備を終わらせたら、二階の私室から玄関ホールを通って、一階の食堂へと向かう。食堂の扉は開かれている。俺が到着するのを待っていたようだ。食堂へ入ると、もうすでに二人が食卓に着いていた。一人は食卓の短辺、いわゆるお誕生日席に座る、金髪を肩まで伸ばし、俺と同じ黄金色の瞳を持つ男性。もう一人は、男性のこちらから右手側に座る、長い金髪を頭の上で結っており、きれいな翠色の瞳を持つ女性。
「おはよう、エーブル」
「おはようございます、父様。――母様もおはようございます」
「ええ、おはよう、エーブル」
そうこの二人が俺の今世の父と母であるゲンスト・オブバーン・サイスティンと、ヴィッシェル・オブバーンである。
俺が母様の正面に移動すると、リエラが椅子を引いて、俺が座りやすいように踏み台まで用意してくれる。至れり尽くせりだ。リエラに感謝を伝えながら、俺専用の背の高い椅子に座ると、メイドたちが給仕を行っていく。この世界の貴族の朝食は日本のようにすべての料理を一人分ずつすべてテーブルの上に置くスタイルだ。慣れている形での食事なのは、とても嬉しい。食事の最初には、日本における「いただきます」に当たる、祈りをささげる。
「二人とも手を、それでは」
「「「命の神イフラヘーヴンよ、賜りし命に感謝します」」」
食事の時間は情報交換の時間だ。今日の予定やらを共有する。まぁ、三歳児の俺には共有することなんてほぼないのだが。
食事を食べ始めるとすぐに、父様がわざとらしい咳ばらいをする。俺は父様の方に体を向ける。すると、父様は「食べながらでいいから聞きなさい」と言って話始めた。
「今日はお前の授命式だからな、朝食後準備をして教会に向かうぞ」
「じゅめいしき……?」
じゅめいしき、なんだろうそれは。聞いたことがない単語に首をかしげる。
「あら、そういえば説明してなかったわね。エーブル。授命式というのは、神様に生まれましたよ、とお伝えする式のことよ。これをして初めて、あなたはこの世界の住人と認められるの」
「それに授命式では、魔法の適性と魔力量が分かる。これは将来に関わる大切なものだぞ」
魔法の適性と魔力量!? なんという興味がそそられる甘美な響き! もしかしたら、それで転生特典が分かるんじゃないか!?
「は、早く行きましょう、父様! 教会へ!」
早く、早く! 俺の最強異世界ライフが待っている!
「まぁ、待て。教会の方へ大まかな行く時刻を伝えてある。ご飯はゆっくり食べなさい」
父様に苦笑されながらそう言われ、しぶしぶ納得して、残りの朝食を最低限礼節を保って素早く平らげる。だけど、うちで出される白パンは、前世のものに比べても引けを取らないおいしさで、無意識に味わって食べてしまう。
マジで、貴族に転生してよかった! 父様が治めるこの領については詳しく知らないが、でも毎日焼き立ての白パンが出てくるってことは、穀倉地帯はあるはず。この世界の料理も色々食べたいけど、前世の料理を再現出来たりしたら嬉しいなぁ。
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