リバイバル・ライフ
杠葉琴
第1話
地面だ。
眼前に広がる、地面。身体の浮遊感。これは一体、何だ。どうして俺は落ちている。
おかしい。さっきまで屋上にいただけだった。自分から飛び降りた?いや、そんなわけはない。そうだ、誰かに突き落とされたんだ。
誰だ。誰だ。俺は、死ぬわけには行かないんだ。
──10月24日朝刊、高校一年生高校で飛び降り自殺か
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楽になりたい。その一心で僕はここまできた。フェンスを乗り越え、深呼吸。大丈夫。もうこれで楽になれる。悩むことなんて何もない。いざ、決心して一歩を踏み出そうとしたその時。
「おい、お前」
声を、かけられた。この場所はいつも施錠されていて誰もいなかったはずだ。なのにどこから。
「おい」
声をかけられた方を恐る恐る見てみると、そこにはぷかぷかと浮かんだ、男がいた。その男は僕が着ているのと同じ制服を着ている。
「え?」
ありえない状況に呆けた声を上げる。あまりに現実離れした、ある一つの可能性。
「ゆう、れい?」
「ああ、まあそうだな」
ふー、と深呼吸してこんな幽霊に耳を貸す必要はない、と先程の決意を思い出す。
「なぁ、お前死ぬのか?」
無視だ。無視。聞く必要はない。だってあの男は幽霊なのだから。こちらがだんまりで今にも一歩を踏み出そうとしているのを見て、男はにやりと笑って、こう言った。
「お前、死ぬ前に俺に身体貸してくれ」
「え、ちょ、まっ」
男が僕の肩に触れ、吸い込まれるように僕の中に入った。
『よし』
「うぇ!?」
男の声が頭に響く。何だ、これ。どうなっている。
『俺、宮元珀真。よろしくな。お前は?』
「……入江晴翔」
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桜が舞う。予定が狂ってしまったことに焦りと苛立ちを覚えながら、僕の視界のあちこちでぷかぷか浮いている珀真に問う。
「なあ、何が目的で僕に取り憑いたんだ?」
『あー、それね。そうだな、うーん』
珀真は幽霊のくせに頭をかきながら、曖昧な返答をする。その反応に僕はさらなる苛立ちを覚える。
「おい、何でそんな微妙な反応なんだよ」
『俺ってさ、死んでんじゃん?』
そんなことを聞くものだから、僕は軽く答えた。
「おお、そうだな。少なくとも生きてる人間はそんな風にぷかぷか浮かないな」
そう冗談めかした僕に、珀真は何やら真剣な面持ちで言った。
『俺、殺されたんだよ』
『で、俺を殺したやつを覚えてないわけ。わかる? 俺を殺したやつは今ものうのうと生きてんの』
だんだん熱が入ってきたのか、珀真の顔に憎悪の色が見える。
「まあ、そうだな?」
『そんなのむかつくだろ? だから』
ああ、嫌な予感がする。
『復讐するんだよ、そいつに』
リバイバル・ライフ 杠葉琴 @yuzuriha_koto
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