Vサイン!〜VTuberにハマりました〜

@cat-the-sky

第1話 夢なんてない

『将来の夢はなんですか?』

 そう黒板に書かれた文字は私の頭痛の原因だ。

 だん!

 みんなの視線が一気に私に集まる。

「...」

 自分でも、やってしまったなぁとは思った。

「あ、頭が痛いので保健室に行ってきます。」




 4限目はほとんど保健室にいた。

「ゆうなぁー、頭だいじょぶそー?」

「うん!もう大丈夫ー。...ってか、私の頭おかしいみたいな言い方すんなよw」

「おー!確かに!w ごめんねぇー、、てか、さっきの授業で夢の話したんだけどさぁ、ゆうなの夢って何??聞いたことないよね」


「私の夢は――」


 私は言葉が詰まった。

 私は夢なんてない。昔は夢っていったら色んなものが頭に浮かんだのに、、

 大人になるにつれて人生って初めからから詰んでるなと思うようになって、生きるのに必死で『将来の夢』どころじゃなかった。



 最近は、心音(ここね)といつも過ごしてる。前回の席が近かったこと、趣味、推しが同じだったことから仲良くなった。



 心音が覗き込んでくる。夢について何も答えられない私は戸惑いながら謝ろうと思った。


「心音、ごめ――」

「え、まって!ゆうな、見てー!」

 心音が見せてきたスマホには水色の........水色のめっちゃキラキラしてる人が写っていた。正直キャラデザめっちゃ可愛い。

「正直キャラデザめっちゃ可愛い」

 あ、声に出た。

「だよねぇー!ここねも可愛いと思う!!」

 共感してもらえて嬉しかった。。。


 サムネには[空野 はる 初配信!]と書かれている。VTuberさんらしい。心音はその人のYouTubeの動画を再生した。配信開始待ちの音楽と映像が流れる。


「初配信か、にしては時間短くない?」

 私が気にしたのは配信時間。長さは23分。

「確かにー!ここね、配信って1時間以上あるもんだと思ってたぁ 」

 あ、わたしも。と言おうとした瞬間、配信が始まり、音量100パーだった心音のスマホからは大音量で[空野 はる]の自己紹介が流れた。


『いつでも どこでも晴れマーク!青空大好き、空野はるですっ!!!』


 心音がスマホの音量を下げ、動画を一時停止する。

「うるっっっっs――」

 耳を抑えている心音の横で、私は放心していた。

 私は今の一瞬で、[空野 はる]に心を奪われた。

 あの、髪の揺れ方、目のきゅるきゅる感、ふわふわ動く服、VTuberの特徴にかわいい声が重なってとても惹かれた。

「心音...」

「ん?なにぃ?」

 こっちを見てきた心音に私は飛びついた。

「っっちょーーーー、可愛くない!?今の![空野 はる]ちゃん!めっちゃ刺さったんだけど!」

 心音は驚いた顔でこっちを見た。

「...ゆうな、そんなに好みだった?」

 私は多少大袈裟に首を縦に降った。

「うんっ!!」

 私がキラキラした目で心音を見ていると、心音はジトーっとした目でこちらを見てきた。


「もしかして、りっくんより?」

 心音が言っているりっくんとは、私が好きなアイドルグループのうちのひとり、山川 陸という人で、心音と一緒に推している。でも、りっくんは現実、[空野 はる]はVTuber。絶対にそれぞれいい所はあるし違うことがおおい。

「りっくんとはるちゃんは、こう...なんか、違うじゃん?」

「はるちゃん呼びになってるしw例えばー、どう違うの?りっくんは2推しなの?」

 私は少し戸惑った。心音とライブとか行くのはちょー楽しい。だけど、はるちゃんは憧れ、、みたいな。なんて言おうか迷っていると、

「まあ、Loveとlikeはちがうもんねー」

 と、心音に言われた。あれ、なんか気を使われた?

「んー、でもそんな感じ?w」

「そっかァ?りっくんはLoveだもんねー?」

「うん、!」

 にこにこで話す私たち。すると、突然心音が手を叩いた。


「そういえば、ゆうな!今度のりっくんのライブのチケット2枚取れたんだけど一緒に行かない??」

 子犬みたいな目で見つめてくる心音に、勢いで頷いた。

「えっ!行きたーい!いついつ?」

「来週の土曜日!空いてる?」

「確か空いてると思う」


 と、まぁ、そんなどこにでもいるような高校生の私たちは、来週の土曜日に、とある紹介からとんでもないことに巻き込まれた。

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