第✕章 ✕

翌日。脱走はニュースになった。


不可解な記号。


つながっていない心音モニターに映る□○△。


その図形は日本全国に広がる。


信号機や、ありとあらゆるデジタル機器、クルマのタイヤ痕、さらには日本地図に至るまるでその図形が支配をするかのように瞬く間に広がった。


この記号が何かを推測する者がSNSに現れたがどれも的外れ。


一生出ない答えに苦しめばいい。


俺は誰にも止められない。


彼女に憑依したまま、俺は木材工場へ向かい、誰も入ってこない部屋で待機をする。


この工場は俺をうつ病になるまで追い込んだ場所だった。


指示通りの事をやったのに上司に殴られ…話しかけても無視をされ、そして毎日上司のストレスのはけ口にされる。

言葉の暴力をサンドバッグを殴るかの如く俺にぶつけてくる………


3年前、ここで技術を磨いて、いつかは一人前になり独立しようとしたのに…………気がつけば『孤立』していた。

周りは上司の復讐に怯え言いなりになり、俺の精神を壊していった。


俺の心の中はぽっかりと○い穴が空いた。


みっちりと詰まった積木も、穴を開ければ脆くなる……


開けた積木は、綺麗には元通りにはならない。



俺は彼女を乗っ取ったまま、深夜になるまで待つ。


***


深夜、ベルトコンベアの前で、立ち止まる。


俺の望む結末は、本当に――これで良いのか?

ほんのわずかに、ためらいがよぎった。


彼女の中から一度抜けて、その瞳を見つめる。

もう、光はなかった。

その奥には、誰の声も届かない闇だけがあった。

俺は静かに、そして深く息を吐いた。


……イイサ、ソレデイイ。


だったらもう、俺も行こう。

苦しみを“終わらせる”ために――いや、

“永遠に続ける”ために。

俺はカラスを使って図形を作る。



そして彼女と俺の声が被る。『ユウエンチデノッタ…ジェットコースターヲオモイダスヨ…タノシカッタネ………アノコロハ…………』と。




彼女が初めて喋った。「もう………いいでしょ………?やめよう?」と柔らかな声が俺を包むが、もう止められない。


そして最後に俺に抗うかのように一言「……で………出ていって………まだ………間に合うから………」と。


そして俺はベルトコンベアのスイッチをサイコキネシスで操作し、安全装置を解除する。

チッパーの刃の回転音が空気を切り裂く。


いつ聞いても無情な音だ…


ベルトコンベアにチップされた木屑とカラスが集まる。


そこに●▲●○△□と次々に形作られまたチッパーの刃でバラバラにされる。


まるで俺の二度目の苦しみを予言するかのように……


そしてそのまま、彼女と共に足からベルトコンベアの上に乗る。


彼女は何度も出ていって、止めて、止めてと繰り返している。


その声はコンベアの音にかき消される。


ゆっくりと動くベルトコンベアの上で俺はその『瞬間』を待った。


ミキが最後の抵抗をする。


止めてえぇぇぇ!!


無情に上がっていくコンベア…



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※この先、極めてショッキングな暴力描写と心理的に重い展開があります…読み進めるか……よくご検討ください………

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