デリヘル呼んだらおかんが来た
国見 紀行
わくわく爆発煩悩ランド!?
ブラック企業と知らず入った会社で働くこと五年。
遂に心が折れた俺は、二十五連勤という偉業を達成して得た休みを、こともあろうにデリヘルを呼ぶことに決めた。
ソープには恥ずかしくて行けないし、かといって近場のアダルトショップでグッズを買うくらいでは足りない。
発散したい。
ものすごく発散したい。
そこで、近場のデリヘル広告からネット予約してそろそろ来る頃……
ピンポーン
「はーいはいはいはいはいはーーーーーい!!」
俺は慣れない手つきで内側から鍵を外す。
「待ってま「ちょっと章くん! 遅いじゃないの! 早く部屋に入れてよ!」お、おかん!?!?!?」
思わず俺の声におかんの声がかぶる。
「『おかん』? じゃないわよ! 予約したでしょ!? あーあー、まったく何その机の上のカップ麺! 部屋もキッタナイ! はいはいまず掃除!」
「ちょ、なんでおかんが!? っていうか、今から客が来るから帰れって!」
「バカ言うんじゃないよ! 客が来るならなおさら綺麗にしなきゃいけないでしょうが!」
「そ、それは……」
言うが早いか、おかんはササっとごみを拾い袋に詰め、床に転がる家具や食器を整えては洗い物をしに台所に行くと、どこからともなく取り出したタッパーから懐かしの煮物を皿に移し替えていく。
「ほら! どうせ普段碌なモノ食べてないでしょう! これ食べて元気出しなさい!」
「あ、お、おお……」
そう言えば最近は火の通ったものを食べた記憶が無いな。
俺は素朴な醤油と味噌の臭いにつられて一口食べると、気がついた時には皿の中身が消えていた。
「まったく、いくつになっても仕方のない息子だよ」
「お、おかん……」
お腹がふくれてきた俺は強い睡魔に襲われた。
「あ、やべぇ」
「疲れた時は、食べて寝る! ゆっくりおやすみ」
◇
目が覚めると、部屋は全く片付いていなかった。
「あれ、おかん?」
散らかった部屋のテーブルには、タッパーに入った煮物が置かれていた。
よく見るとメッセージカードが貼り付けられている。
『おはようございます。〇〇デリバリーヘルスの◇◇です。鍵が開いていたので入ってみたのですが、眠っておられたので帰ります。材料適当に使って作ったので、よかったら食べてください』
「……あれ、夢??」
ぐううう、と腹の虫が鳴ったので中身を一つまみする。
「うまい、な」
俺は手元のスマホを起動して、実家にコールをかけてみた。
「あ、おかん? いやいや、久しぶり……」
デリヘル呼んだらおかんが来た 国見 紀行 @nori_kunimi
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