スピンオフ:2025年、雷との再会

2025年に戻ってきた中川は、ふと雷のことを思い出した。あの情熱的で、まっすぐだった同級生は、今どこで何をしているのだろう。


パソコンを開いて検索する。

「矢上雷」「すにーかーず」

ヒットしたSNSアカウント――@rai.yagami。


そこにあったのは、年を重ねた雷の顔。でも、あの頃のままの笑顔が画面越しに輝いていた。プロフィール欄には「シンガーソングライター。来週、一夜限りのすにーかーず再結成ライブ!」の文字。


デビュー36周年記念ライブ――。


すぐにチケットをネットで購入した。行かない理由なんてなかった。


ライブ当日。場所はこぢんまりとしたライブハウス。ステージに立つ雷は、変わらぬ力強さで観客を圧倒していた。声の伸び、笑顔、合間のトーク……。まるで時が巻き戻ったかのようだった。


アンコールが終わった頃、会場スタッフに声を掛けられる。


「中川大哉さんですね? 雷さんが、楽屋にお通しするようにって。」


胸が高鳴った。


「久しぶりだね。大哉だよな?」


楽屋に入ると、雷が立ち上がり、にっこりと笑った。


「すぐわかったよ。ひとりだけ、いつまでも高校生だからさ、目立ってたよ(笑)。懐かしいな。」


握手を交わす手に、年月の重みと、変わらぬ友情を感じた。


その後、2人きりでじっくりと話をした。

雷は、今も音楽活動を続けていて、ソロでも地道にライブをしているという。結婚もして、子どもも2人いる。どこか照れたように、家族の話をしてくれた。


「ずっと思ってたんだよ。あの日、別れてから、また会えたらいいなって。36年もかかっちゃったけどな。」


年月を越えても、変わらないものがある。

夢を追った情熱。青春をともにした記憶。

そして、未来を知っている少年と、今を生き続けた歌手の――友情。


僕たちは、年代を超えた親友だ。

これからも、ずっと。


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未来泥棒~僕と君の未来のために~ @ayumix

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