魔女の系譜

@derniersorciere

第3話

私はあとずさりながら、わけのわからない悲鳴をあげた。その人影は私のその声におびえたようにうろたえ、そのまま入ってきた窓から出て行った。私は呼吸を確保しながら冷静になろうと、精神を客観的に保とうと、かろうじてできつつあるところだった。

数十分、いや実際には数分だったろうが、人影の気配があきらかに消えたと思えたところで私はやっと動けるようになり、こわごわ窓に近寄った。外を覗く勇気はなかった。あわてて窓を強くしめるだけで精いっぱいだった。そのままうずくまり、頭を抱えた。サイドテーブルに置いてあるスマートフォンに手を伸ばし、母に電話をかけた。

「なに・・・こんな夜中に・・・」寝ぼけたような母の声が耳元で響いた。

普段は何のこともないのに、この時ばかりはどれだけありがたいと思ったかしれない。

「お母さん・・・ごめん、心配させたくないんだけど、なんか、泥棒みたいなのがいて・・・」

「泥棒?!どういうこと?!警察、警察に早く連絡して!」

「あ、あぁ、警察ね・・・すごく動揺してて、思いつかなかった・・・そうだね、呼ぶけど、逆恨みされたりしないかな・・・」

「あんた、だから私は反対したのに・・・あんな辺鄙な古い大きな家に女一人で住むなんて!明日にでも帰って来なさい!」

「お母さん、警察は呼ぶよ。セキュリティも考える。だからもう少し待ってよ。」

電話口で喚く母親の声に勝手ながらもうんざりしながら、私は疲れ切って眠いことを口実に電話を切った。

警察・・・ややこしいけど、そうだな、そして、セキュリティも、民間のそれを頼むか・・・しかし、こんなところに祖母はどうやってあんなに1人で何十年も暮らしていたのか?考えてみれば、これほど泥棒に入りやすいところもないだろう。私はいまさらながら、辺境の大屋敷に一人で住むことのリスクに思いをはせていた。

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