レスバ弱すぎる勇者
ちびまるフォイ
最後の戦いのレスバ
「なぜ人間などに味方するのだ勇者よ!
人間は貴様に感謝したのか? 世界を平和にしたのか?
貴様が世界を救ったとして、けして幸福にはならない!
この手を汚しても幸福を手にしなければ!
愚かな人間どもはけして世界を平和にしないぞ!!」
「うるせぇぇぇ!! 死ねぇぇ!!!!」
「グアアアアーー!!」
勇者のはなった必殺技がラスボス四天王のラスボスを倒した。
これで病欠のラスボスを除き、残りのラスボスは2体となる。
「ふう、今回も厳しい戦いだった」
「勇者様、ちょっと言いにくいことが……」
「早口言葉を今いう必要あったっけ?」
「ではなく。勇者様の支持率のお話です」
「お、聞きたいね。どれくらい愚民から支持されてるの?」
「支持率マイナス200%です」
「うそぉ!? もはやアンチじゃん!!」
「すべては勇者様のレスバによるものです」
「レスバ……?」
「ラスボスってたいてい何か自分の主張を言うじゃないですか」
「ああ、まあ……」
「で勇者様、それに対するアンサーを出さずに切るじゃないですか」
「うん」
「で支持率が下がる」
「わからないわからない!」
「勇者というからには道を示してほしいんですよ。
パッと聞いた感じラスボスの方が正しそうだなって思っても
勇者側のアンサーでもって正義の道の正しさに気づく。
そうでありたいとみんな思ってるんですよ」
「ええ……? 強いだけじゃだめなの……?」
「当たり前です。レスバに勝てないのに強い勇者なんて、
うでっぷしの強いだけのならず者でしかない」
「わかったよ、レスバで勝てば良いんだろう……?」
「あとラスボス四天王は残り2人です、気を引き締めていきましょう」
そして勇者一行は村の人々から石を投げつけられながらも
ついに次のラスボスの元へとたどり着いた。
「ふふふ。よくここまでたどり着いたな勇者よ……」
「これがぐるぐるMAPの力だ!!!」
「貴様の力は認めよう。だがこの戦いの果てに何を見る?
行き過ぎた力はやがて打倒する力の源となる。
今でこそ貴様は勇者だが、この後は勇者であり続けるのか?
度を超えた力を持つただの害獣になるのではないか」
「ふふん、そうか。そうか」
勇者は必死で学んできたレスバ攻略法を早速実践した。
「それって、なにかデータあるんですか?」
再び勇者の必殺技でラスボスは両断された。
帰りの馬車ではふたたび仲間の糾弾にさらされる。
「勇者様、アレはないですよ。支持率また下がってます」
「レスバには勝っただろう?」
「はためには論点ズラしたようにしか見えてないんですよ!」
「それってデータあr……」
「うるさいな!!」
なんにでも使える論破慣用句だったはずが、
支持率の下落だけでなく仲間の信用を落とすデメリットがあるとは。
「勇者様、今は普通にこうして話してるじゃないですか」
「ああ」
「なんで戦いになるとあんなにレスバ弱いんです?」
「なんか……戦いになるとスイッチ入っちゃうんだよ」
「スイッチ?」
「俺はひとつのことしかできない。
料理しながら歌は歌えないし、考え事しながら食事もできない」
「そんなタイプだなって顔してます」
「戦いなんて相手の一挙手一投足に目を光らせるだろ。
それなのに相手の話を聞いて、それを論破しろと要求するなんてムリだ。
なんなら話している間に攻撃打ち込みたいくらいだ」
「それやると絶対支持率さがるからやらないでくださいね」
「ただ倒すだけじゃダメなんて難しすぎる!!
修行しかしてこなかったのに、どうすればレスバ強くなれるんだ!!」
「勇者様、ひとつだけ方法があります」
「方法……?」
「ラップバトルをはじめましょう!!」
それから勇者はもちまえの生真面目さをラップに活かして、
さまざまなストリートでラップバトルを挑んだ。
ラップ武者修行の結果、勝率は脅威の100%。
勇者が負けたら相手を斬り伏せるので、
記録に残った戦いは勇者の勝利しかないのは誰も知らない。
もちろん読者だって知らない。
やがて勇者は誰にも負けないディスリ
「勇者様、ついにここまで……!」
「ああ、今度はどんなレスバにも負ける気がしない。Yeah」
勇者一行はついに最後のラスボスの砦へと足を踏み入れる。
3人のラスボス四天王のうちでも圧倒的な武闘派にして実力主義。
ほかのラスボスたちと一線を画す最後のラスボス。
その姿がぼんやりとした明かりの奥から現れる。
「来ましたよ、勇者様……」
「ああ」
勇者はキャップを逆さに被り、金色のネックレスを首から下げる。
だぼだぼズボンをさらに腰までさげてレスバ最終形態の戦闘モードを取る。
「さあ、ラスボスかかってこい!!
どんなレスバでも負けるつもりはない!!」
臨戦態勢の勇者にラスボスはその主張をはじめる!!
「えっと……貴様に話したいことが、ええと、ある。
今世界はこう……えーと、上がったり下がったりしてて
文明の興亡がたぶん思想?が……なんかぶつかってる。
それで、なんだったっけ。資料……資料……。
ああ、そう。そうだ犠牲と秩序が必要とかが必要で。
でも支配には力と統治が必要なんだよね。たぶん。
だから……つまり、そう。それを人間が理解する必要があるのだ!!」
ラスボスの要領を得ない主張を聞いて、勇者一行はすぐに気づいた。
「このラスボス、プレゼン苦手なタイプかっ……!!」
やがて言葉に詰まったラスボスによる強力な必殺技で勇者は倒された。
レスバ弱すぎる勇者 ちびまるフォイ @firestorage
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