逆転世界の幻想魔法使い~公爵家の落ちこぼれは英雄になる~

黒野マル

Chapter 1.予言と運命と反逆~兄に最大の愛を込めて~

第1話  人生、終わりました

「男の人権を保障しろ!!俺たちは子を産むための道具じゃない!!」

「女は男に暴力を振るうな!!魔力がなかったら人間にもなれないのか!!」



今日も図書館の外は平和だ。


相変わらず多くの男たちが集まって、頭に布を巻いて人権を訴えている。


何にせよ、俺が転生したここは逆転世界なのだ。


魔力適性の高い女性が男性を貪り、10:1という極悪な性比のせいで男が常にいやらしい目で見られるホラーな世界……!!



「神様……こんな世界で俺を蘇らせたのなら、せめて女にしてくれればよかったじゃないですか……!!」



いくら嘆いても現実は変わらないし、俺が魔法を使える奇跡も起こらない。


天井を仰ぎながらため息をつくと、間もなくして窓の外から悲鳴が聞こえてきた。


そう、正に今も人権を踏みにじられている男どもの悲鳴が!



「僕たちは女のペットじゃない!!家事の分担と男の社会進出を……って、な、何故騎士団がここに!?」

「皆の者!!この悪辣な男性主義者たちを全員逮捕しろ!!抵抗する者は無理やり押し倒しても構わない!!」

「に、逃げろぉお!!騎士団の牢獄に入れられたら終わりだ!!」

「くっ、なんで騎士団が……!!お前らには人間の心がないのか!性欲と支配欲に目が眩んだケダモノどもめ!!!」

「なにっ……!?先ずあいつから掴まえろ!!女性をケダモノ呼ばわりするなんて、これは国家体制に対する反逆だ!!」

「うわぁあああ!?!?な、何が反逆なんだ!!放せ、放せぇえ~~!!!!!」

「……………………」



これ以上見てたら気を失いそうで、俺は窓のカーテンを閉じて机に突っ伏した。


本当に、どうしてこんなところに転生したんだ……!!


この世界に来て10年も経ったけど未だに慣れないわ!!なんなんだよ、この世界!!



「ヤバい……ヤバいぞ、これは」



俺はぶるぶる震えながら、この先の未来を想像してみる。


このままずっと魔法を使えずにいたら、俺はきっと売り飛ばされてしまうだろう。


どこへ?中年太りのおばさんたちがいる貴族家に!


魔力による力の差で抵抗することもできず、好きでもないおばさんたちに搾取されながら毎日を生きて行くんだ……!!


誰も助けてはくれず、妹のセラにまで見捨てられて、結局はベッドの上でしか存在意義を見出せないやわなおもちゃにな――――



「ちょっと、アイン?」

「うわぁ!?!?」

「ひやっ!?な、なに!?」



白く燃え尽きた自分を想像した瞬間、後ろから声を掛けられる。妹のセラ―――セリアンヌ・ルクレインの姿が目に入ってきた。


赤い髪に金色の目。絵にかいたようなツンデレ格好をした我が妹は、びっくりしながら後ずさる。



「な、なんでそんなに驚くのよ!こっちまでびっくりしたじゃない!」

「あ……ごめん。ちょっと変な想像してたわ」

「アインがする想像って大体変なものでしょ?」

「兄に向ってなんてことを……!!お前には兄を敬うという気持ちがないのか!?」

「女が男を敬えるはずないでしょ、バカ」

「だから、なんなんだよこの世界……!!俺を日本に送り返してくれ!!」

「また変なこと言ってる……ほら、呼び出しだよ?アイン」

「えっ、誰に?」



俺が反射的に問うと、セラは少しだけ影が差した表情で言う。



「……お母様に」

「あ」




ーーーーーーーーーーーー




そして、1時間後。



「お前の婿入りが決まった。相手はルキフェル侯爵家で、2週間後に式を挙げることになっている――――――お前はもう、用済みだ」

「……ふぅ」



そうか、とうとうこの日が来てしまったのか。


何十回も、何百回も想像してきた場面だから驚きも悲しさもなかった。


落ちこぼれの俺が侯爵家に半ば追放されるのは、当たり前のこと。


しかし、俺は一縷の望みをかけて公爵に質問を投げた。



「お母様、侯爵様の年齢がおいくらなのか、教えていただけますでしょうか?」

「48だ」

「あ」



そして、俺の最後の希望も見事に打ち砕かれ。


俺より30歳年上の年増に搾取されるという最悪な未来が、俺の前に切り開かれた。






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お読みいただきありがとうございます!


2025/7/19に少し内容を修正いたしました!

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