最低クズ野郎と最凶刑事

ペンギン

第1話誘拐

警視庁捜査一課特別班係。通称特班。


ここには普通の刑事では手に負えないような凶悪事件が舞い込んでくる。


それは爆弾魔だったり拳銃乱射するような頭のおかしい奴だったり色々だ。


え?そんなより物騒な課に誰が入りたいんだって?


それはな。


「私だよ」


「え?どうしたんですか先輩」


「なんでもない。」


そう。ここに自ら志願して特班になった変わり者として扱われているのは紛れもなく特別班係班長のこの私。


冴月流南さえづき るなだ。


現在事件の後始末に追われて泊まり込み3日目を決めているところ。


そろそろ仕事も終わりだから帰って風呂入って飯食って寝て。


明日に備えるんだ。


「(流南先輩のストレスがたまってる。)先輩、そろそろ仕事終わりですから飲みに行きません?」


「行かないわよ。疲れたから寝るの。あんたも早く帰って明日に備えなさいよ、後輩君。」


「帰城です、先輩。いいかげん名前で呼んで下さいよぉ。」


「私に名前で呼ばせるだけの成果を上げたらね。ほら、もう一息だ!」


ぷくぅとか横で頬をふくらませて拗ねてるアピールをするのは私の後輩である帰城守きじょうまもる


こいつ、記憶力はズバ抜けていいけど体術面がてんでダメでなんでこの課に配属されたのかまるで分からない奴だ。


以前、犯罪組織に捕まったところを助けたがそれ以降懐くようになった犬みたいな忠犬。


まぁ。私は記憶力に自信ないし補い合えてるから別に面倒みるのはいいんだけどね。


そんな自己紹介を終えて数時間。


チクタクと時計の音だけが響いていたこのオフィスに後輩君の疲れきった声が溢れた。


「おわっ…たぁぁ…」


「はぁ。今回はしんどかったわね。さ、早く帰って寝るわよ。」


「ストイックだなぁ。途中まで一緒に帰りましょう!夜は怖いですし!」


「…私を護衛にしてるわね?」


「ぎくっ。そ、そんな事…。あっはは」


「はぁ、ったく。この私にそんな事言えるのあんただけよ。ほら行くよ忠犬」


「わん…」


耳なんか見えないはずなのに、垂れ下がってるのが見える。本当に、よくこんなので特班なんてなれたわね。



なんて思ってたのは昨日の事でした。


話が飛んでるようだけど、これまでの事は私の回想。


なぜ回想してるかって?それは私が知らない部屋に寝かされてたからよ。


「どこよココ。」


とても広い畳の部屋に襖で仕切られた和室。


寝かされている布団があるくらいで他は何があるわけでもない。


私昨日ちゃんと家に帰ったはずよね?布団にダイブしたところまでで記憶がないから寝落ちたと思うんだけど。


「拳銃は…ある。なら行けるか。」


鍵は絶対に締めるから考えられるとしたら合鍵を作られていたか、もしくは部屋の中に既に侵入していたか。


それにしても私が人の気配にも気づかないなんて。


疲れてたなんて言い訳だわ。よく首が繋がってたこと。


「襖の向こう、話し声?この家の奴らか。」


耳をすませば、ゴニョニョっと数人の声が聞こえる。おそらく私が逃げないよう見張りだろう。


だったらこの私を誘拐した事、骨の髄まで後悔させてやる。


ーバン!


「手を上げろ!!誰1人動くな!!」


「きゃ!?なに?あの人間?」


「起き抜けに元気だなぁ。まさに花嫁にピッタリだ!」


「それはまだ確定してないだろ。なんで人間なんかを」


「な、なんだ、その格好」


私が勢いよく襖を開けて拳銃を向ければ、たしかにそこには人がいた。


いや、人?なのか?


首がやたら長かったり角が生えていたり後頭部が長かったり。


これじゃまるで…妖怪みたいじゃないか。


「なによ失礼ね。ほら、そんな物騒な物しまってこっちに来なさいな」


「ふざけるな。お前達は何者だ。なんで私はここにいる。」


「もぉー。だから事情話して連れてきた方がいいって言ったのに。」


「信じんじゃろ、この小娘は。こっちの方が手っ取り早い。」


「で。誰が説明すんだよ」


「あんたでしょ?」「嫌じゃ。主いけ」「ざけんな。言い出しっぺはロクロだろ。お前いけ」


なんなんだ。拳銃向けられたこの状況で、目の前で喧嘩をしだした。


私の存在を無視している?見張りとかじゃないのか?誘拐犯…だよな??


「(逃げるなら今か。)」


アホそうだし逃げ切った後にいないって気づくだろ。アホそうだし。


とりあえずこの場を脱出して本格的に武器揃えて乗り込むか。


拳銃の弾、少ないしな。


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