第16章②
夜のマンションの部屋
私は悠の腕に包まれながら
静かに横になってた
部屋の中は静かで
暖かい空気に包まれてるはずなのに
胸の奥はずっとソワソワしてた
「…いよいよ明日だな」
悠が静かに呟いた
私は小さく頷く
「…うん」
「卒業式、ちゃんと泣くなよ」
「泣かないよ」
少し笑って返したけど
実際はもう、ずっと胸が苦しかった
「やっとだな…」
「やっと?」
「やっと…少しだけ堂々とできる」
悠が優しく髪を撫でる
「でもまだ簡単じゃないけどな」
「うん…でも、少しは楽になるよね」
「玲那がやっと”高校生”じゃなくなる」
「…うん」
小さく呟いたその言葉に
涙がじわっと滲みそうになった
今まで、どれだけこの瞬間を夢見てたか
でも同時に
その先にある不安もずっと頭にあった
「…悠」
「ん?」
「私ね…すごく楽しみなのに、すごく怖いの」
「……」
「卒業しても…もし悠が私に飽きたらって…そんなことばっか考えちゃうの」
「玲那」
優しく私の頬を包む手が熱かった
「馬鹿だな…」
「……」
「俺がどれだけお前に引きずられてると思ってんだよ」
涙が浮かんだまま
私は笑った
「…ほんと?」
「ほんとだよ」
「…飽きない?」
「絶対に飽きない」
そのままそっと唇を重ねた
いつものキスより
少し長くて、優しくて、熱くて
胸の奥がじんわり溶けていった
「…じゃあ、明日…式が終わったら」
「ん?」
「すぐ会いたい」
「もちろん」
「…やっと”私たち”になれる気がする」
悠は微笑んだまま
もう一度、私を強く抱きしめてくれた
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