第16章

──卒業まで、あと少し


 


教室の空気が、どこか浮ついていた


卒業式が近づいてきて

みんなの話題は進路とか、制服の最後の写真とか

そんな話ばっかりになってた


「玲那、卒業式のあと写真撮ろうね!」


美結が明るく声をかけてくる


「うん…」


笑顔を作って返したけど

私の胸の奥は、今までとは違う重さを抱えてた


 


──あと少しで高校は終わる


それはずっと待ち望んでたはずなのに

いざその時が近づくと

妙な不安も一緒に膨らんでくる


 


放課後

帰り道を一人で歩きながら

スマホを見た


【悠】の名前を何度もタップしては閉じてを繰り返す


──堂々とできるまで、もうすぐだよね?


そう言い聞かせながらも

胸の奥がザワザワしてた


 


卒業すれば

もう未成年じゃなくなる

堂々と恋人って言ってもいいはず


…なのに、なんでこんなに不安なんだろう


 


悠がこの先も

ずっと私を好きでいてくれるか

どこかで呆れられたり

重たく思われたりしないか──


 


わかってる

悠が今まで私にどれだけ優しかったか

どれだけ守ってくれてきたか


でも、それでも

“現実”が迫ってくる感じが

だんだん怖くなってた


 


──早く会いたいな…


小さく呟いたその声は

夜の風に流れていった

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