第15章②



帰りの車の中


助手席で私は静かに外の景色を眺めてた


夜の高速道路

流れていく街の灯りがキラキラして綺麗だった


けど

胸の奥は、さっきまでの幸せと違って

少しずつザワザワし始めてた


 


──このまま、ずっとこうしていたい


でも

本当に”このまま”でいられるのかな?


 


ふと

自分でも抑えきれずに口を開いた


「ねえ…悠」


「ん?」


運転席の横顔が、穏やかに振り返る


「…卒業してもさ」


「…うん」


「ほんとに…ずっと一緒にいられるのかな?」


 


自分でも言葉にした瞬間

胸が少し痛くなった


 


悠は少し黙って運転に集中しながら

ゆっくりと答えた


「玲那が嫌じゃなければ…俺はずっと一緒にいたいよ」


 


その言葉だけで

胸がじわっと温かくなる


けど

私が聞きたかったのは、それだけじゃなかった


 


「でも…周りは?世間は?

私が高校卒業しても…未成年と付き合ってたってバレたら…」


 


言葉が詰まったまま

私は指先をギュッと握りしめた


「…怖くなるときあるの」


 


悠はしばらく何も言わずに前を見たまま走ってた


だけどゆっくりと私の手を片手で握ってくれた


「俺も…怖くなるよ」


低い声で静かに呟く


「正直、全部が楽じゃないって分かってる

でも…それでも俺は、玲那を離したくない」


 


その言葉に

また涙が浮かびそうになった


「…私も…」


 


車内にしばらく静かな空気が流れる


でもその沈黙は

どこか心地よくて、ふたりをまた繋いでくれてた


 


──どんなに不安でも

私には悠しかいない


 


助手席でそっと手を握り返したまま

私は静かに目を閉じた

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