第15章
「たまにはさ」
スマホ越しの通話で、私は思い切って言ってみた
「どっか…遠く行きたい」
「ん?」
悠の声が少し驚いたように響く
「…学校の友達とか知ってる人いないとこ。堂々とできるとこ」
「……そっか」
少し黙ったあと
ふっと低く笑ってくれた
「じゃあ…ドライブでもするか」
「…ほんと?」
「たまにはいいだろ」
──それから数日後の休日
駅近くで待ち合わせた私は
悠の車の助手席に乗り込んだ瞬間
自然と胸が高鳴ってた
「よし、出発」
「どこ行くの?」
「んー…とりあえず海まで流すか」
「海…!」
ワクワクしながらシートベルトを締めた
高速に乗ってしばらく走ると
すっかり街の景色も消えていった
車内は静かで
悠の運転する横顔をずっと見ていたくなるくらい幸せだった
「ねえ悠」
「ん?」
「こうやってさ…普通に手繋いで隣にいられるの、すごいね」
「すごい?」
「だって…いつもは隠れてばっかだったから」
「…そうだな」
悠は片手で私の手を握りながら
信号待ちのたびに軽く親指で撫でてくれる
それだけで
胸がじんわり熱くなる
やがて車は海沿いの静かな道に出た
人も少なくて
本当にふたりきりみたいだった
車を停めて、ふたりで降りる
少し冷たい潮風に髪がなびいて
私は悠の腕に自然と絡んだ
「…なんか変な感じ」
「なにが?」
「普通のカップルみたいだなって」
「…普通のカップルだろ」
「…ふふ、そうだね」
笑いながら顔を上げると
悠が優しく私の頬に手を伸ばして撫でた
「玲那、ほんと可愛いよな」
「…そんなこと言わないでよ…」
顔が熱くなってまた腕に顔を埋めた
──誰も見てない
──誰にもバレない
こんな日は
いつまでも続いてほしいと思った
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