第14章③

それから数日後、仕事終わりの悠と落ち合って

駅近くの小さなカフェにいた


まだ早めの時間帯で

街は人通りも少なくて安心してた


ほんの少しでも

店の外でふたりきりでいられるのが嬉しくて

私はずっと悠の隣に寄り添ってた


 


「最近…少し落ち着いてきたな」


悠がそう呟いて微笑む


「ね、やっと少しは楽になってきた?」


「いや、玲那のおかげだな」


「…うそばっか」


くすぐったくなるくらい嬉しくて

私は自然と笑ってた


 


──ほんとに幸せだなって思った瞬間だった


 


その時だった


カフェのドアが開いて

入ってきた数人の制服姿が目に入る


一瞬、心臓が跳ねた


──え…?


 


同じ学校の顔見知りだった


すぐに反射的に顔を伏せた


悠も気付いたのか

すぐに私の肩を軽く抱いて、さりげなく隠すように位置をずらしてくれた


 


「大丈夫…?」


低く小さく耳元で囁く悠の声が

今までになくドキッとする


「…うん」


私は顔を伏せたまま、小さく頷いた


 


そのまましばらく動けずにいたけど

幸い、向こうは私たちに気付く様子もなく

奥の席に座っていった


 


ほっと息を吐いた瞬間

今度は逆に手のひらが汗ばんでた


「今のは…危なかったな」


「……うん」


小声でそう呟きながらも

私は悠の手をぎゅっと強く握り返してた


 


──秘密の恋は甘いけど

やっぱり怖さも常に隣にいる


けど、それでもやっぱり

私は悠がいいんだと思った




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