第5章

夜__



部屋の電気を消して、ベッドの上に寝転がる


スマホの画面だけがぼんやり光ってた


友達からは今日も何件かメッセージが来てた

「次の休みにまたカラオケ行こうよ」

「この前のあの先輩、まだ玲那のこと狙ってるよ」


正直、全部どうでも良かった


 


“好きになれそうな人がいない”


それが、いつも私がみんなに言ってる言葉だった

今も、その答えは変わってない

誰にも言えないけど


 


──いや、違うかも


 


飛悠のことを考えると

胸の奥がキュッと締め付けられる


会えない時間も、頭の中に浮かんでくるのはあの人の顔だった


笑った顔

流すような視線

氷を回す指先


思い出すたびに

心臓がドクンと跳ねる


 


“なんでこんなに…”


自分でもわからない


仕事だから

お客だから

全部わかってるのに


でも、もっと知りたい

もっと見ていたい


今までの誰とも違う


本当に”大人”で

でもどこか冷たくて


その冷たさに

余計に惹かれてしまう自分がいた


 


スマホを胸に置いて

大きく息を吐いた




「……あーあ」




止まらなくなってる


自分でも気付いてた


 


___だけど



もう後戻りできない気がしてた

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