第一章-神殿巡りと依頼

記憶にかかった靄-ルア視点

私達_大魔法使い一同は、ゆっくり、道という道を歩いていた。

皆、顔が煙のようにぼんやりとしている。

「皆、どうしたんだ?」

気になって、皆に向かって問う。

私は昔から、気になることがあるとすぐ知りたくなる。

そう、

......昔?私の...幼少期?

私は...昔......なにか...あったような...とてつもない...なにかが...

「ルア!」

リムカに声をかけられて、はっとした。

「大丈夫?」

「あ...あぁ」

...私も、ぼんやりしてたようだ。

「みんな...ここから先は記憶靄町きおくもやちょうだよ...!」

マギアが、声を潜めて、私達に言った。

...。聞いたことがある。

ふと、まわりを見回してみると、古びた木の看板を見つけた。

そこには、何かが書かれていた。

× × ×

ここから先は、通るべからず

通ったら、自分の記憶を、1つ、失う

どうしても通りたくば、記憶を失う覚悟を決めろ

記憶がなくなっても、責任は、取らない

× × ×

......。意味がわからない。

なぜ、通ってはいけないのか...。

「...引き返したほうがいいのかな...?」

リムカが、震えた声を出す。

...怖いのか。

確かに、記憶がなくなるというのは、少々怖い気もする。

「...というか、ボクたち、どうやってここに来たの?」

マギアが、恐ろしげに言う。顔面蒼白だ。

「あの...どうやって来たかわからないなら...どうやって帰るんですか...?」

リエが、恐怖に怯えて、体を震わせる。

そういえば、リエは怖いのが苦手だったな...。

あ...れ?視界...が...揺れ...る。

目の前が...ぼやけて_。


× × ×

昔から私は、興味があることにはどんどん突っ込んでいく子だった。

「ねぇねぇ、これ、なんていうの?」


...私...?


「これはね、ルア。魔晶石ましょうせきって言うんだ。きれいだろう?」


...誰、だ?これは、幼い頃の記憶...なのか?


...!...ル......!

頭の中に誰かの声が響く。


「へぇ、綺麗だね!...お_」


× × ×

「ルア!!」

そこで、目がさめた。

......夢、なのか...?

「ルア、大丈夫...?」

横を見ると、心配そうに見下ろすリムカの姿があった。

「あぁ...大丈夫だ」

...さっきのは、なんなんだ...?

「良かったぁ...」

あれから、どうなったのだろう。

私が倒れてしまったあとに、皆は、移動したようだった。

戸惑っている私に、マギアがこう言った。

「今ボクたちがいるのは、アリニシア王国だよっ」

......アリニシア王国!?戻ってきてしまったのか...!?

私はひどく驚いた。

「なんで戻ってきたんだ!あのまま進んでいれば良かったものを...!」

堪忍袋の緒が切れてしまった。

「ルア...」

「時間が無駄になる!今だって、魔王の力が増しているんだぞ...!」

「あのね...ルア。リムカたちは、ルアが心配で、ここに戻ってきたんだ。」

ふんわりとした優しい声が、私を包み込んだ。

「この中で一番頼りになるルアが戦えなくなっちゃったら、リムカたち、負けちゃうかもしれないから。」

...そうか。リムカは、リムカたちは、そう思うんだな。

「そうか...ありがとう。」

感謝の気持ちを込めて。

......あれ、みんな、どうしてそんな目を丸く...

「ルアが笑うところ、私初めて見ちゃった☆」

ウィルがお茶目に笑う。

「ルアさんが笑うと、こっちも笑顔になってきますね」

リエも、優しく微笑んだ。

...そんなに、珍しいのか。

前はもっと笑ってたけどね...

前...前、か。

正直なことを言うと、私は、幼少期の私のことを覚えていなかった。

だが...さっきの夢は......一体...?

「みんなぁぁ!!」

クリスが高速で走ってくる。

...く、クリス...!?どうしたんだ...!?

「はぁ、はぁ...依頼ぃ...終わってぇ...ないよぉ....!..ふぁぁぁ...」

手には、大魔法使いへの依頼書が掴まれていた。

「うわぁぁぁそうじゃん!!!」

ウィルが頭を抱えて、わちゃわちゃと暴れ出す。

「ウィル、暴れるな」

すかさず、サンダが止めに入る。

...ふっ、いつも通りって、良いなぁ...。

「ボク、行ってくるぅ!!ええっと、まずは一番近いありにしあおうこくさーかすだんの依頼ってやつ?…って、さーかすだん?てどこにあるのぉぉぉぉぉ!?」

マギアが右往左往している。

「ここここ、こっちぃぃぃ!!」

リムカがサーカステントを指差し、マギアと一緒に走っていく。

「ちょ、まって!」

ウィンもそれを追いかける。

......これが"平和"なのか?

まぁ、この日常を、楽しいと思えることは事実だ。

...魔王を倒して、本当の"平和"が訪れたら...私は、みんなと一緒に笑えるだろうか...。

いや、笑顔になれるようにするんだ。

「おーい、ルア!早く早く〜!!」

マギアがにこにこしながら手をふっている。

「...分かった!」

私も、走り出した。

_仲間たちのいるところに向かって。


______________________________________

閲覧ありがとうございます!

今回、ルア視点でお届けしました。

続きをお楽しみに!

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レイニティでの普通とは違う冒険譚! 星宿はる @rimuka-314

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