最終話「男嫌いな幼馴染、貴方のことがずっと好き」

道園みちぞの先輩にも言ったように、そらの誕生日に私は彼に告白する。

クリスマスとかハロウィンとか、世間でも特別な日にするかも悩んだ。でもやっぱり当人にとって誰にか代えられない特別な日に伝えたかった。

「いやまさかあの小僧の誕生日が一週間後とは。プレゼント決めてない。」

「もっと早くに教えてくれたら良かったのに。」

「聞かれなかったから。」

部室で三人でプレゼントを考える。昔はプレゼントを交換していた、だから私も凄い楽しみにしていたのを覚えている。

(交換....交換!?)

「忘れてた。私の誕生日、そらの次の日だった。」

「「えっ!?」

プレゼントで思い出すまで完全に忘れていた。一日違いだったから、両家族で私の日に一緒に誕生日プレゼントを貰っていた。二人で仲良く包装紙を開けていたのを思い出す。それでその日はずっと二人で遊んでいた、それが私にとっての誕生日だった。

「まぁまかない君が彼に渡すプレゼントは楽でいいよね。」

まかないゆずはそうだな。」

「どういうことですか?」

「『私がプレゼント』で終わりじゃん。どうせ誕生日の日に食べられるだろうし、勝負下着とか着ていけば完璧よ。」

「・・・・・それで喜んでくれるのかな。」

道園みちぞの白峰しらみねは目を合わせ、全く同じことを考えた。

「早く付き合ってくれないかな」と。

「ミカン先輩、ゆずの誕生日プレゼントで相談が・・・どういう状況?」

後から合流した彼だけ置いてけぼりだったのは言うまでもない。

「つうかそらちゃんはつまらないね〜。普通に欲しい物聞くとかサプライズ意識は無いのかい、このこのー。」

「要らない物貰って嬉しいと思える人は少ないと思いますよ。特に女性の場合は顕著でしょ。クリスマスとかになると配信者がサイト回ってクリスマスプレゼント売られているのを見る配信とかあるほどですし。」

「悲しい世界だ。」

プレゼントの話だが、ゆずとしてはそらからなら何を貰っても嬉しいけど、やはりここは身につけられるアクセサリーとかが一番嬉しい。自分が彼のものと言ってくれてる感じがするから。でも高いのよりかは普段使い出来るような物の方が嬉しいとも思ってしまう。そう考えると欲しい物とは難しい。

うちの高校はある程度のオシャレは許可されている。流石に制服を改造とかアウトだけど、髪を染めたりとは許されている。それならイヤリングとかいいかもしれない。

「そういう南雲なぐもは何が欲しいのさ。」

「中間と期末の点数。」

「切実すぎない。いや私も欲しいけど。」

そらそらで難しい話なのは確か。欲しいものは今の彼には存在していなかった。四月からの半年間があまりにも充実していたし、ずっと疎遠だったゆずとも関係が修復出来た。これ以上何を求めろと言うのか。これ以上求めたら、それ以上の不幸に見舞われそうで怖い。

「本当になんでもいいですよ。まず貰えるとか思ってなかったので。」

「じゃあ好きに選ぶよ。」

「先輩もそうするとしよう。私の趣味詰め込んだ癖本セットとかいる?」

「要らないです。」

「即答だね。」

放課後最後のチャイムが鳴り解散する。

いつものように二人で帰る。ゆずにとっては後一週間で良くも悪くも普通ではいられなくなる。それだけで心臓の音がうるさくなる。断れないと分かっていても、やはり恐怖と緊張が日に日に強くなっている。彼は誕生日に告白するのは知らない、ある意味それがサプライズプレゼントになるかもしれない。だからこそ、この気持ちはその日まで隠し通してみせよう。

駅のホームに着き、電車を待っていると彼が知らない曲を歌っていた。

「知らない曲。」

「6年ぐらい前の曲だから。偶然流れてきてさ、この曲なんだけど。」

イヤホンを借りて聴くと、なんだか親近感が湧く曲。二人が傷つき、すれ違うけど手を取り合う。そんな等身大の男女の歌。

「なんだか私達みたいだね。」

「そうだな。だから俺もこの曲にハマったんだと思う。」

やっぱり私達は似たもの同士だ。

「誕生日パーティーするから夜間までの活動継続の許可を出せと。」

「そういうこと。小金こがねちゃんが一言『OK』と言えば終わり。」

「それで後ろの二人も着いてきたと。はぁ...何故今年の一年生の二大美女が一人の男子の誕生日の為にそこまでする。彼の活動は寛美かんみから聞いているけど、夜間活動は運動部ぐらいじゃないと通せないし、ちゃんとした理由が無いと。」

「来月の新聞、一切進んでいません。」

小金こがねは眉間に指を押し当て盛大にため息をつく。十中八九書き終えてるし、これで了承しないとどんな暴挙に出るか予想できない。かといってここで通すと他の部活も「それなら」と通そうとしてくる可能性は否定出来ない。

「まぁ今回だけ、次は絶対に無し。貴方がそこまでするのはまかないさんでしょ。あんな告白を見せられたもの、私も許すわ。」

「ありがとうございます!」

「お礼ならそこのアホに言いなさい。そんなのでも私の親友、世界で一番信頼出来る人だもん。あんたもこんなに良い後輩持ったんだから、卒業するまで面倒みなさい。」

「はーい。」

そんなわけで当日の場所も時間も確保し、今は三人でプレゼントとパーティー用の買い物に来ている。場所は前に来たショッピングモール、道園みちぞの先輩のお願いで来て以来ちょくちょく使わせもらっている。学生の財布に優しいお菓子専門店もあり、各自で決めたお金で選り取りのお菓子を選びカゴに入れる。こう見るとそれぞれ個性が出ていた。

先輩はポップコーンのような大きい袋に入ってるお菓子。白峰しらみねさんはシガレットといった安いけどよく口にしたお菓子。私はそらとよく食べていたわけられるタイプのお菓子。

「分かりやすいね〜。」

「昔から彼優しかったのね。」

私が選んだお菓子のせいで完全にバレバレで、後ろで思いっきりニヤニヤしている。そんなこと言われても仕方ないのは仕方ない。だって小さい頃はそらが隣にいるのが当然だと考えていたのだから。

二人の背中をポカポカ叩き、少し不貞腐れながら会計を済ませる。想像以上に量が多いけど果たして食べ切れるのか。食べ切れなかったら新聞部の恋愛相談中のつまみになるとは聞いた。

プレゼント選びは二人と相談しながらになるが、見繕うとすると皆悩んでしまう。

「私はイヤホンかなー。南雲なぐもFPSの話したことあるし、ゲーミング系のプレゼントすれば喜びそう。私コンビニ売ってるイヤホンで満足してるから何もわからないけど。」

「全然決まらん。先輩だけどあの坊主の癖知ってれば性癖本セット送れたのに。」

「別の意味でそら泣きそう。」

三人とも真面目に異性に送るプレゼントなど選んだことが無い。店員さんに聞いてもピンと来ず、最終的に道園みちぞの先輩によるそらに質疑応答になった。

これなら当たらずとも絶対に外れない。サプライズには程遠いが。

『イヤホンとか、小物入れが欲しいです。外出増えてリュックサックとは別に入れる袋があったら便利だなと感じましたんで。』

「ほいきた。」

電話を切った後に三人は気づく、二個しか言わなかったと。最後の一個を悩んでいると、ゆずが手を上げた。

「私に任せてくだしゃ....さい。」

「そこで噛んだら不安しかないよまかない君。」

「まぁファイト〜。」

ゆずそらのプレゼントを選ぶのではなく、作ることを選んだ。二人でお揃いのお守りを身につけてるように、別の形のお揃いを渡せば喜んでくれると考えた。

パソコンとかで3Dで図案を作れるわけでもない。一から紙に書き上げて装飾などを付け足していく。材料や装飾は家族やネット、使えるものを全て使う。

自分の思いを告げるのだ、それならプレゼントに手を抜くなどあってはならない。

そらや二人には用事があるといって先に帰り、夜遅くまで机と向き合う。気付くと日付が変わっていたりもあった。失敗を沢山繰り返して一歩ずつ進めていく。

そうして約束の日は近づいていった。

ミカン先輩から【私服で18時半正門前集合】と連絡を受けた。

学校に私服で向かうのは新鮮だが、悪いことしてるような感じもして落ち着かない。

「やっほ、相変わらずのパーカーだね。まかない君に頼んでちゃんと服を見繕いなさい。」

「ミカン先輩こそ、既に頭にとんがり帽子被って準備万端じゃないですか。」

「君の誕生日パーティーだぜ!楽しまなきゃ損。」

「それもそうですね。」

警備員に生徒会の朱印が入った紙を見せるとすんなり通れた。時間が時間なので後者は真っ暗で、教職員用の出入り口を借りて校舎に入る。

先輩に背中を押されながら待ち合わせの部室の扉に手をかけ、開けた。

「「「誕生日、おめでとう!!」」」

パンッとクラッカーが鳴り響き、紙吹雪がそらの頭に降り積もる。

「ほら私の右腕、君が今日の主役だ。何か言わないと。」

南雲なぐも、ほらこっち来て。」

そら早く!」

二人に手を引かれ、一人に背中を押されてソファに座らされる。

「こんな祝われかた初めてで。」

絶対に今の自分の顔ははちゃめちゃに崩れている。

パーカーのフードで隠そうとして、その前に白峰しらみねさんに止められる。俺の顔を見てとびっきりの笑顔だ。他の二人も同様で。

「ほらほら食べるぞ。チキンやその他色々運んだし、締めにミニケーキもあるぞ。」

「ホールは無かったんですかミカン先輩。」

白峰しらみね助手、流石に怒られた。」

そらの好きな分だけ食べていいよ。あっ、そっちクッキー私の手作りだよ。」

ちゃっかり俺の分のとんがり帽子も揃えていて、隙を見せた瞬間に先輩と白峰しらみねさんに被せられる。ゆずは三人で並んでいる所を写真に収め、グループに送ってくれた。後でスマホのホーム画面にしておこう、そのぐらい嬉しかった。

テーブルに並べた料理とお菓子を摘みながら四人でパーティーゲームで笑い合い、時には対戦ゲームでガチガチな勝負を広げ、カラオケ大会中に警備員に注意されたりもした。こんな騒がしくて楽しい誕生日は人生で初めてで、きっとこの先もこんな日が来るのだと確信も持てた。

「そろそろプレゼンタイムじゃーーー。」

ミニケーキを皆で頬張っている最中、ミカン先輩が名乗りを上げた。

三人がテーブルにスペースを作って三つの箱が並べられる。一つが少し大きく、後の二つは同じぐらいの大きさ。二つは予想がつくけど、残り一つが分からない。

「因みに私達の方でシャッフルしてるから、君には絶対に誰のプレゼントかは分からないぞ。当てたら更に特別なプレゼントもあります。」

「それなら当てないと。」

道園みちぞの先輩、私そんなこと聞いてモゴモゴ。」

「シーですよまかないゆず。」

後ろで二人が取っ組み合いしてるけど気にせず一つを手に取る。

包装紙を破けばショルダーバッグが出てくる。ポーチのような小物入れを想定していたけど、リュックサックで生活しているのを見られていたせいか、勘違いしたらしい。でもこれはこれで嬉しい、少しの外出にはこいつを使おう。

「これはミカン先輩でしょ。ちょっと趣旨が外れてるので。」

「バレたか〜。男子はポーチとか持たないでしょ、だからそれかなーと。」

「あぁ....それは事実ですね。」

二つはイヤホン。これも簡単、白峰しらみねさんだ。前にゲームの話題でイヤホンが話に上がった。FPSとかをやる時は音が大事なのでしっかりしたのが欲しかったから嬉しい。しかも限定カラーで値段も高かっただろうに。

白峰しらみねを見れば、「クリスマス楽しみにしておくよ」と先約を取られた。お金貯めておこう。

では最後だが、これが全く見当がつかない。ゆずのだけが残ったが、彼女が俺にプレゼントしてくる物が全然浮かばない。

考えても仕方がないので開ける。

「綺麗。」

それは皮に凝った装飾が施された見たことのないキーホルダー。

手に収まる大きさなのに、中央に空色と柔らかい黄色で花が刻み込まれていて、外周はピンクで覆われている。一眼で手作りだと分かった。

鞄とかにつけられるようにリングも付いている。これなら今の学校生活でも使える。

「どう、かな。」

「めっちゃ嬉しい。ありがとうゆず。」

嬉しさのあまり彼女を抱きしめ、そのまま回る。自分でもこんなことしてしまうんだと笑いたくなるほどに、今の俺は舞い上がっている。

「おめでとう!全問正解した南雲なぐもそらにはとっておきのプレゼントがあります。」

「貴方はやることあるので一旦借りるねー。」

白峰しらみねさんがゆずと一緒に隣の準備室に篭るやいなや、悲鳴が聞こえる。

何故だろう、デジャヴを感じる。

「ではどうぞー。」

白のドレスと、足を主張させるミニスカート。顔が全て見えるように髪を纏めている月形のヘアピン、そしてほんのりと赤い頬。

男なら誰が見ても恋に落ちる、月の女神が姿を見せた。

「ワタシガ、サイゴノプレゼントデス。」

ロボットと言われても頷くぐらいに片言なゆずの手を取り、素直に伝える。

「一番似合ってるよ、ゆず。」

「やった。」

「最後のプレゼントも渡したし、時間がヤバいのそろそろお開きだ。二人は先に帰ってくれ。白峰しらみね助手、片付け手伝って。」

「はぁ〜、分かりましたよ。」

道園みちぞの先輩が私の背中を優しく押し出す。その時耳元で彼に聞こえないように伝えてくれた。

「舞台は整えた、後は頑張れ。」

白峰しらみねさんもバキューんと手で撃ち抜いてくる。

ありがとう、二人がいてくれたからここまで来れました。

電車を降り、後少しで二人の家に着く。

そら、少し寄り道しよ。」

「いいぞ。」

小さい頃よく遊んでいた公園に道を曲げ、彼の手を握りながら進む。遊具は経年劣化で殆どがテープに巻かれて使えなくなっている。それぐらい一緒にいたあの頃から時間が流れた。

一等星と街灯だけが二人を照らす。

「ずっと待たせてごめんなさい。」

振り返って彼を見る。心臓が痛いほどに鼓動し、心は「逃げたい」と叫んでいる。

でも大丈夫、。恐怖に立ち向かえる。

何も言わずに彼は待っていてくれる。

「男の人が嫌いな理由はもう知ってるよね。」

「文化祭で知ったよ。ごめん、中学の時に気付けなくて。」

「私もまだ心の整理があの時はついてなかった。」

一つ、一つずつ過去を終わらせる。トラウマと向き合い、それを乗り越える。

「高校生になって、色んな人に出会って、私という一人の人間を見てくれる人を知りました。この気持ちには嘘じゃないと思う為に、あの日声をかけました。」

中学生から高校生に上がったばかりの僅か時間。でも世界が広がって、中学校のような人は少人数なんだと気づいた。だからもう一度やり直したいと思えた。

「ずっとこの気持ちがあった。自分で傷付けたのに、そらはそれでも私の手を取ってくれた、私の隣を歩いてくれた、私の心の支えになってくれた。」

この気持ちは日に日に強くなった。自分の体を許せる唯一の人になって、誘惑紛いのこともした。でも彼は何もせず、でいてくれた。

「もう大丈夫。胸を張ってそらの隣を歩けるよ。」

だから言おう。もうを終わらせよう。



「ずっと、ずっと貴方のことが好きでした。私と、まかないゆずと付き合ってください。」

「俺の方こそ、南雲なぐもそらも貴方の事がずっと好きでした。こんな俺でよければ、貴方の彼氏にさせてください。」



私はこの日、この時間。きっと世界で一番幸せな顔をしている。

だって。

「大好き、そら。」

貴方の彼女恋人になれたのだから。

「本当に付き合えたんだよね。」

「夢みたいだろ。俺も同じ気持ち。」

彼も同じなら安心。でもそんな夢みたいな時間は明日も明後日きっと続く。

この恋と愛の熱が続く限り、貴方の手を取って握り続ける。

「今日も一緒に寝よ。離れたくない。」

「いいのか。」

「え、あっ。」

恋人が同じ布団、ベッドで一緒になる意味。そんなの一つしかない。

「優しくしてください。」

「ごめん、絶対に我慢できない。」

次の日は二人一緒に学校を休むことにした。

理由は、言わないよ。

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