九話「寂しい三日間」
夏休み初日から、
「部活の手伝いで、三泊四日の合宿いく事になったんで。」
まさかの予定が入り、完全に出鼻をくじかれた。堂々と告白したし、二人やクラスメイトに相談して、予め
「み、三日耐えるだけだし。行く前に、
お互いに好きを自覚したのもあって、歯止めが壊れかけてるのもあるけど、単純に
暇を潰す為に、親が契約してるサブスクで、映画でも見ようとリビングに降りる。
お勧めが彼が好きそうな映画ばかりで、クラスメイトが言っていた「彼氏に染められる」発言を思い出した。
途端に顔が熱くなり、電源ボタンを押してしまう。真っ暗な画面に私の顔が反射して、悶える。私だけの時は、どうやって時間を潰していたのか、もう思い出せない。
「それもこれも全部
好きな人のことで頭がいっぱいになってしまうのは、普通のはず、多分。
「課題やろう。」
高校生だからといって、課題が無いわけではない。小中に比べたら量は少ないが、後回しにすれば痛い目をみる。彼がいないこの三日間で一気に終わらせて、帰ってきたらいっぱい遊べばいい。
そう思うと俄然やる気も出てきたので、シャーペンを動かす。
始めてから一時間ほど経ったタイミング、
【君の想い人、おすそわけ。】
見れば、サッカー部の生徒と汗水流している
「私なら、彼のカッコいいところ、これ以上に見たことあるし。」
届くわけないが、口にしてしまう。
「
*
「パスの練習頼む。」
「了解。」
俺が通う高校はバスケ部以外は軒並み弱小。公立なのもあり、合宿とかになると合同で行われる。しかも俺が手伝いに参加しているサッカー部にいたっては、部員がギリギリ試合出来る9人なので、部活内で練習しようとすると、どうあがいても外部の生徒に頼らざるおえない。俺もその一人。
参加費は出してくれるとのことで、喜んで参加したは良かった。
「
連絡を返せるのは夜遅くなのは伝えたけど、行く前の表情を思い出すと不安になる。
ボールの受け取り、部員に蹴り返す。
手伝いを始めた頃に比べれば、かなり返すのも上手くなった。でも部員になると、朝練とか毎日参加しないといけないから、俺は入るつもりはない。きっぱり断ったら、クラスメイトに泣き付かれた。あの時は正直焦ったのを覚えている。
休憩時間に体育館に顔を出せば、バスケ部が精を出して練習していて、合宿の為に呼ばれた専属のコーチまでいて、金のかかりかたが伺える。
「やっぱ強いんだな。」
「そうだよ。君もバスケ部に入れば、その恩恵を受けれるのにな。」
「辞めときます。
「言うようになったね。」
スポーツ用の服を着た
俺は綺麗なタオルを渡し、スポドリも持ってくる。
「ありがと。もう疲れたー、これが後三日も続くとなると、嫌になる。」
「合宿に参加した定めです。俺は楽させてもらいますけどね。」
「最終日はこっちの手助けをしてもらうけどね。その時は任せた。」
「酷使だけはやめてくださいね。」
練習の手伝いに、洗濯とかの雑多な作業をする。寝泊まりする場所はちゃんとしているので、体が痛くなったりとかしないで安心。隙間時間に課題をやれば、後が楽にもなる。
「毎回終わる一週間前に全てを終わらせようとして、痛い目にあってるからな。」
就寝時間は21時。ルールは定められているが、在って無いようものであり、こうして団体部屋で集まって、クラスメイトと課題をやっている。
「女子バスケ、皆可愛いよな。
「そんな思考だからモテないんだよ。
「そういう
「俺か、いないよ。」
全員掴まれ、色んな方向に引っ張られながら、言われ続ける。
「嘘だ!どうせ
「童貞同盟組んだ仲だったのに、裏切ったのか。」
「最近だと
「クソ、イケメンが多いから気づかぬ振りしてたけど、コイツも顔が良いんだ。イケメンに生まれたかった....。」
「呪うしかない。」
とばっちりすぎる。
部屋から出て、気分転換に外の空気を吸う。完全に宿から出なければ怒られないので、ありがたい。
【おやすみ。】
スマホでそれだけ送り、大きく体を伸ばす。明日は速い、全員参加のランニングもあるので、寝不足になるわけにはいかない。
【おやすみなさい。】
彼女の返信を見て、部屋に戻った。
*
夏休みに入ったからといって、生活リズムを壊すわけにはいかない。
「
彼女から、何枚も彼の写真が届いており、しっかり盗撮である。だが、文句とは別で保存し、何度も見直す。好きな人って、なんであんなにカッコよく見えるのだろう。
「あっ、おはようございます。」
「おはようね、
ゴミ出しに出れば、
「息子がいつも面倒かけてるでしょ。そのお礼をいつかしたいと思ってたのに、あのバカ急に合宿行っちゃうんだもん。何か良いお礼考えないとと、思ってた矢先に。」
「お礼なんて、私も方こそお世話になってますので。」
「そう言わずに。」
考えてる間に、何かを握らされる。
「あ、あの。これ、鍵ですよね。」
「そうよ、うちの鍵。
「二人で食べる日も多いでしょ」と付け加えられるけど、普通渡されるような物ではない。信頼されてるのは嬉しいけど、渡された物が物なので、私も慌てる。
「一人の時、偏った食事ばかりしてるらしいの。だから
「そうなんですか?」
私と食べる時、凄いしっかりと色取り取りの食事を出されている。偏っている食事の一文字すら存在していない。
二人で買い出し行ってるし、ちゃんと食事の相談もして、晩御飯とかを決めていた。
「面倒」とか口にしながらも、手を抜くことなんてしたことはない。
「息子がちゃんと作る時って、食べて欲しい人がいる時ぐらいなのよ。私と夫がいる時ぐらいじゃない、しっかり作る時って。」
つまりだ、私がいる時にあの食事が出るということは。
「あわわわわわわ。」
「顔真っ赤!もしてかして暑さにやられちゃった、ごめんなさいね早く戻りましょ。」
私の内心に気づけるはずもなく、鍵を渡されたまま解散となる。
無くさないように鍵にキーホルダーを付ける。
「
彼の自室の鍵ではないのだが、現実なのか疑ってしまう。自分が待ってもらってる側なのに、何故か周りが外堀を埋めて来てる感じがして、若干の焦りを覚える。
無くさない為にも、鍵かけを机の見える場所に置き、そこに預ける。なんか婚約済みみたいな感覚になってきた。そんなことは無いのだけど。
「これ、
一応確認しよう。
*
「
「たった今、まともでいられる状況では無くなった。」
クラスメイトと連絡とれるようにスマホは常備していたのだが、
見間違えるはずがない、どう見たって我が家の鍵です。何を考えたら、鍵渡すんだよ。俺の親、セキュリティどうなってるのか聞きたい。
渡されたのはもう仕方ないので、「持っていて構わない」と伝え、胃痛を抱えたまま手伝いに戻る。両親、
空気を入れてる間も、クラスメイトに心配されるぐらいには、顔に出ていたようで、要らぬ負担をかけてしまう。合宿に行かなければ、こんなに事にならなかったかもしれないが、それはもう後の祭りとしか言いようがない。
ボールを片付けていると、近くの男子の手が止まってることに気づき、視線の先を見る。女子バスケ部が丁度お昼休憩に入ろうとしていて、我先にと、声をかけていく。
女子バスケ部自体が、割と学内の花になっている節はあるので、気持ちは分かる。
そして皆、綺麗に振られて轟沈していく。バカだ。
「
「いや、見てる分には楽しい。」
「あっはい。」
二人でベンチに座りながら、玉砕していく野郎共を見る。中には、成功してる人もいるので、一概に皆ダメというわけではない。
パンを加えようとしたタイミングで、横からパシャっと音が聞こえた。
「飯食ってるところ撮らないでください。」
「いいじゃん、
「・・・・まぁ、それなら良いのか?」
彼女になら別に見られても構わないが、なんか言いくるめられている感じがする。
それにしても、色んな部活が合同で合宿に来てるとはいえ、思っていた以上に女子が多い。なんだかんだ女子マネージャーの数に驚いている。
「
「行きません。どうせ彼女から話は聞いてるんでしょ。」
「もちろん。」
少なくとも相談にのっていたであろう
結局、何の成果も得られなかった奴らの面倒を見ながら、その日の夜を迎えた。
大浴場で男子が集えば、やることは一つ。互いの○○を確認だ。
「お前ちっさ!」
「そういうお前はどうなんだよ。」
ターゲットにならないように、隅で静かに体を洗っていると、肩を掴まれる。
「
「どうせお前も俺達と・・・・・・うそん。」
「人生で初めてだ。ここまで惨めな思いをしたのは。」
「男として、お前は強すぎる。」
勝手に見られた挙句、自滅していったこいつらに、拳骨の一つぐらい喰らわせたい。
(俺のはそんな大きくないし、お前らが小さすぎるだけでは。)
そう考えたけど、平均サイズを知らないことに気づき、自分のも小さかったら、それはそれで傷つくので、言わないことにした。気持ちは理解出来るし、立ち直れないやつなのは間違いない。
湯に浸かり、疲れを癒す。熱いのでそんなに長くはいられないが、大きな湯舟で全身をゆったり出来るのはありがたい。
「そういえばさ、
急に聞かれたせいで、息が詰まる。男子からそんなことを聞かれるとは微塵も思っていなかった。
「俺は
どうやら、普通に気になっただけのようだ。
「付き合ってないよ。」
「そうなんだ、てっきり隠してるのかと思った。あの子、お前といる時は凄い笑顔になるから。あんな表情見たら、誰だって....うちの高校の男子を除いて、気づくよ。」
「ははは。でも、まだだよ。」
「ほうほう、まだねー。いいじゃん、一方的に好かれても互いを不幸にするだけだし、知らない仲から付き合い始めると大変だもんな。」
「そうだな。」
この人は、俺と彼女が幼馴染なのは知らないらしい。その上で、こうして話すのは、新鮮だ。大抵、恨みつらみを言われる。こういう人もいるのだな。
「合宿に来たから、彼女と会えないのが辛くてさー。こうして誰かに、俺の惚気を聞かせたいんだよ。頼むよー、聞いてくれない。」
「凄い嫌なんだか。」
「10分だけでいいからー。」
「分かった、分かったから引っ付くな。熱い!」
いつか俺も、こんな感じで誰かに話せる日が来るのだろうか。
のぼせてきたのか、ふわふわした感覚に包まれながら、未来のことを考える。
「好きって、大変だな。」
*
三日目、朝一で先生に呼ばれた。
「明日から、他校との練習試合が殆どでね。手伝いに参加してくれた生徒は、今日の午後、個別に車で最寄り駅まで送る算段になっている。それを伝えに来ただけだ。」
「分かりました。今日もしっかりとやり切りますね。」
一日早く戻れるのは嬉しい。手伝いの人だけ、帰れるのは早いと聞いてたけど、それ以上に早くなっただけ。部員の人には申し訳ないけど、お先に上がらせて貰おう。
「次これお願い。」
「それ終わったら、運んで。」
「あいつら...。」
ここぞとばかりに、俺に仕事を押し付けて来やがる。大会が近い部とかになると、断るのも無理な話。学内で変に知名度が高いので、他の奴に回る前に俺に来る。
夏休み終わったら、負けた事で弄り倒してやる。
汗を拭いながら、色んな場所を走る。今日は35°を超えると、天気コーナーでも言っていた。水分補給を怠ったら、倒れるのは間違いない。
「それにしても暑いな。サッカー部とか野球部、死ぬだろ。」
現に練習30分ごとに、10分の休憩を挟んでいる。マネージャーもスポドリ作りで忙しそうにしていた。それに、体育館はクーラーが効いてるから倒れる心配はないので、今は羨ましく感じる。
「バスケ部の手伝い行きたいけど、こいつらがな。」
「行かせねぇぞ。お前も道連れだ。」
「臭くなって、女子に嫌われろ。」
「なんか私怨交じってる奴いない?」
「気のせいだ。」
諦めてこいつらから解放されるまで手伝い、最終的に正午まで伸びてしまう。
荷物運ばせた後に、パス練習、そしてシュート練習までやらされた。嫌がらせにもほどがある。
部屋に戻り、荷物をまとめて終えたら、食堂に向かう。定食選んでテーブルに着くと、
「まさか帰るとは、教えてくれても良かったじゃん。」
「いや、俺もここまで早く帰れるとは思ってませんでしたから。」
「午後も酷使させようと考えてたのに。」
「すみませんね。俺は午後一番で帰らせていただきます。」
しょうもない話を続けると、
バスケをしている彼女は、俺でもカッコいいと思えた。カッコいい女性は、同性にもモテると聞くが、彼女も礼に漏れない。
「野球部で忙しいでしょ。私もバスケで忙しいし、時間が出来るのは夜なんだよね。」
「そしたら、夜お伺いしますね。お菓子持っていきます、楽しみにしててください。」
「うん、楽しみにしてる。」
俺はその間に、食べ終えた食器を預け口に戻す。
女子達は俺に目もくれずに、隣にごった返してるので、「がんばれ」と視線だけ送る。「逃げるな」と視線を送られた気がしたが、原因は
「
もう頭の中は帰ることでいっぱいだ。
*
「今日を耐えれば、
時間を潰しに遊びに出かけようとも考えたが、経験から、一人で出歩くとロクな目に遭わないのでやめてしまった。
なので、リビングのソファで完全に自堕落モードに入っており、彼がいない影響もあって、学校の生徒が見れば、夢を砕かれないレベルの服装になっていた。
家のチャイムが鳴り、親に頼まれて荷物を受け取る為に玄関の扉を開ける。
「た、ただいま。」
「そ、ら。」
「かわ、いい服着てるな。」
明日まで帰ってくるはずのない人が目の前にいて、尚且つ自分ははしたない服装をしていた。その二点で、
「あれ....いや今のは、もう少し言葉のチョイスあったか。」
「あら~
「早めに帰れることになって、お土産渡しに来たんですけど。」
「なら、今日は家で食べなさい。私の方で、お母さんには連絡しておくから。」
「いいんですか。」
お土産をテーブルに置き、彼女の部屋を訪ねる。
扉を開ければ、ベッドに潜り込んでいる
「連絡くれても良かったじゃん。」
「すまん。俺も今日急に言われてさ、クラスメイトに酷使されて、送る暇無かったんだよ。謝罪と言っちゃなんだけど、好きなお菓子、お土産で買ってきたから。」
「食べる。」
砂糖菓子なので、お茶を入れて二人で食べる。
口に入れるだけで解け始め、そのままお茶を口にすると、更に美味しさが広がる。
「そういえば、合宿でお前との関係性を聞かれてさ。」
「それで。」
「初めて、普通に話せた。そいつは元々彼女がいる奴だったのもあったけど、お前のことも応援してた。そういう人もいるんだって、思えた。」
「うん。」
俺も、校内で良くない目で見られてるのは気づいている。きっと、
「それではさ。」
思ったよりも以上に顔が近く、危うく触れそうになり、慌てて体を後ろに動かす。
「すまん。距離感ミスった。」
「・・・・・・。」
「
彼女はショートしていた。玄関の一件もあり、
(良い匂いした。)
着替えてるようだが、運動した後の彼の匂いが強く残っていて、それを間近で感じた。それは、今の
(相性が良い人は良い匂いがするとか、ネットで書いてあったような。)
もう一度彼を見るが、良い匂いがする。不味い、本当に我慢が出来なくなりそうだ。
「あ、あの。頭撫でて。」
他の欲求をぶつけることで、自分の中に満たしている性的欲求を抑える手段に出る。
「構わないけど。」
優しく撫でられる。自分の手より大きい彼の手、きっと襲われたら勝てない。
どんどん思考が悪い方向に向かい、好きな人がして欲しいことをしてもらっている事実に、
「
「ひとまず、親に見られていることは言っていい?」
「えっ。」
指差された方を向くと、ママが「あら~」と頬に手を付きながら、私を見ていた。
「違うの!これは、えっと、いつもしてもらってて。」
「墓穴掘ってるぞ。」
自爆を繰り返す私。もう部屋に引きこもりたい。
「孫を見るのも、存外早くなりそうね。」
「ママーーーーーー。」
その後、自分の部屋で
この三日間で、二人で見たい作品を軒並みブックマークしておいた。これなら、いつ彼の家にお邪魔しても、口実を元に夜遅くまでいられる。
「刑事ドラマ、難しいね。」
「海外のやつ、名前覚えるの難しいから、尚更ね。」
白人と黒人の異色のコンビが次々と難事件を解決していくシリーズで、面白いのだが、かなりスラングが混じっていて、時折分からなくなる。
しかも独占放送の賜物で、グロいシーンに凄い力が入っていて、特に殺人現場が毎回血の気も引くシーンになっている。
でも、私が震える度に
「次で終わりかな。晩飯頂いたら、速攻で帰らないと。洗濯に出したいものが多い。」
「それは仕方ない。」
彼の肩に頭を預ける、やっぱりこれが一番安心する。
(もうこれ無しで、家で映画やドラマ見れないな。)
心も体も彼無しでは生きていけなくなってる気がして、心臓が少し高鳴る。
この時間がいつまでも続けばいいのにな。
そう思ったのもつかの間、勢いよく扉が開かれる。
「出来たわよ。
「してません!」
「まだ、そういう関係じゃないです!」
今日だけ、ママのこと嫌いになりそう。
*
彼も食べるにあたって、今日はカレーになった。ご飯を多く炊けばいいので、調節が簡単。昔、両家族で食べる時はいつもカレーだった気がする。
「うちの
「食事中!!!」
「ゴホッ。」
私よりも彼の方が顔を真っ赤にしていて、ママはそれを見て笑っている。
「なによ、鍵貰ったんでしょ。ある意味公認なんだから、しっかりと言っておかないと。安心して、ちゃんと家は空けるから。」
「ママーーー。」
鍵を貰ったのは事実なので、どうしようもない。
彼には既に伝えたけど、「持ってていい」と言われたので、絶対に返さない。あよくば「おかえりなさい」とか言う為に、家で待っていたい。
(それはもう、妻なのでは....。)
また自爆した
「あの鍵は、ただいつも家に遊びに来るからです。うちの親がそこまで考えてるわけないので、勘違いしないでください。俺も知らなかったんです。」
「あら、そう。」
彼は彼で、この母親を相手にしたら、想像を絶するほど疲れることを知る。この感じ、ミカン先輩に口で戦った時に似ていた。うん、変に口答えしない方が良さそう。
「二人がどんな関係でも、私は文句は言わない。でも、娘を泣かすのなら容赦はしないわ。」
「泣かしたことはな、いや最近一回あった。」
「泣かせたの!?」
「ママ、それは私が自分でね。」
誤解を解くのに相応の時間がかかった。私と彼との約束を隠しながら説明するのがとても大変で、最終的に『怖い人から助けてもらった』という嘘で通した。一応そんなこともあったので、あながち間違いでもない。
「男前になったわね。」
ママのあの言葉、聞いてて凄い嬉しかったのは秘密だ。
*
「じゃあ帰るわ。」
「また明日。」
「おう。」
彼を見送った後、部屋に戻り、部屋の鍵を閉め、ベッドに顔を埋める。
「カッコよかった!」
今日もまた、寝れそうにない。
「明日から、更に頑張ろう。」
自分の為にも、そして彼の為にも。ちゃんと隣で歩けるように、待っててくれている彼の為にも、この思いがより一層強まる。
だが、それはそれとして。
「明日、彼の家に泊まろう。」
自分の欲に素直になっていっていく
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