三話「勉強会とテストと、ほんの少しの痛みと」
「ありがとう。これで残りの部分は作れる、いやー二人に任せて良かった。」
「うん。」
「色々ありましたけどね。」
ミカン先輩の怒涛のコールの対応を終えた放課後。
後数日で中間テストなのもあり、部活などはお休み。一部の運動部は大会が近いとかで続くが、俺達のような生徒は基本的に下校か、図書室で勉強だ。
「家で勉強しよ。」
「教えてくれ。」
かくいう俺は勉強が出来ない側、
テストで悪い点数を取れば、成績に影響して夏休みに夏期講習が入る。それを避ける為、皆頑張るのだ。
俺の場合、それ以外にも頑張らないといけないわけだが。
そんな訳で、俺の家で勉強会をすることになった。
*
「分からん。」
俺の部屋で
教科書や参考書を何度も見比べる。それでも初歩で毎回躓くので、その度に彼女に教えてもらう。
「中学の時はどうしたの。」
「クラスの頭の良い人に教えて貰った。」
「そうなんだ。」
疎遠になっていた時期、お互いにどうしてたかなんて知るはずもない。
シャーペンの芯が切れ、入れようと筆箱を取る。中を探るが、何故かお目当ての物が見つからない。使い切ったのだろうか。
「これ?」
「
「全然頼ってくれないから。」
「勉強なんてそんなもんだろ。」
対面で座っているから、表情がよく見える。不貞腐れてる。
そもそも勉強してる時は、喋る時間の方が少ないのが普通だ。お喋りしてたら、それはただの集まりなのだから。
とは言っても、気になりはする。
制服のまま勉強するのかと思いきや、
本来なら気にすることじゃないのだが、胸元のガードが甘いタイプ。男なら否応なく視線が行ってしまう。しかも当人が気づいていないのも拍車をかけている。
故に、変な思考にならない為に、より集中する羽目になった。
「なぁ、ここの文章なんだけど。」
赤ペンで引いた部分を見せようと、教科書を彼女側に向けようとした。
「そこはね。」
それよりも早く、
「このページの現代翻訳が・・・・。」
全然頭に入って来ない。表情に出さないことで精一杯、いくらなんでも無防備すぎないか。
「頑張れ。」
「はい。」
少し落ち着きを取り戻せたので、先程の彼女の言葉を反復しながら進める。
絶対に、俺の隣で俺の頬をツンツンしてる
「
自分の勉強をしろと言いたいが、多分しなくても大丈夫ぐらいには点数が取れる自信があるようだ。羨ましいと思う反面、そうじゃないと俺に教えられないとも思う。
彼女のおかげで、少しずつ分かる部分も増えた。これなら当日まで欠かさず勉強しておけば、赤点は確実に回避出来る。
「・・・
後ろから急に抱きつかれる。背中に柔らかい感触が二つ、
「
「全然話してくれない。」
今日の彼女は、やけに甘えん坊だ。話すようになってから、こんなことは無かった。むしろ小学生の頃の彼女に似ている。ずっと一緒にいて、いつも手を握っていた彼女にだ。
「勉強に集中出来ない。俺が赤点取って、夏休みに海に行けなくなっても良いのか。」
「そ、それはダメ。でももう少し一緒にいたい。」
「つうかどうした、今日の
「家にいる時ぐらいは、良いかなって。」
「いやもうちょっと接し方があると思うのだが。」
顔を真っ赤にしながら、モジモジしている
そんな顔をされると、なんか悪いことをしてる気分になる。
シャーペンを置き、ベッドに寄り掛かりながら、
恥ずかしいが、
「ほら、休憩するから来い。」
「うん。」
俺にもたれ掛かりながら、彼女は俺の腕を動かし、抱き締めている形にする。
「満足。」
「10分だけな、休んだら戻る。」
「分かった。」
俺の気を知らないで、腕を触ったり、鼻歌を歌ったりと楽しそうだ。
しかし、この角度は不味い。下を向けば
生殺しすぎる。これで手を出すなとなんて、無理なんて話じゃない。
「
「全然大丈夫じゃない。体が固定されてるせいで、痺れてきた。」
「じゃあ終わりだね。」
嘘つくのは気が引けるが、
(心臓の音、バクバクだったな。)
彼にはこうして甘えられる。それは、
中学生の頃より、精神的に大人になった。それでも、自分へ向けられる視線が性的なものだと、今でも冷や汗が出るし、気分が悪くなる。なぜなら、向けてくる人たちは『向けても構わない』と思ってるからだ。
私に対して性的な感情を抱いているのは気づいている。それを抱いた上で隠す努力をし、昔と変わらないように見せている。
それがたまらなく嬉しいのだ。
「次はどれ。」
「英語。」
平静を装っている彼を見て、もう少しだけイタズラしたい気持ちが沸いた。
*
日も落ちたので解散となり、玄関まで
「忘れてた。これ、無くさないでね。」
あの日、彼女が当てたペアチケットの一つを渡される。
「テスト終わりの週末行くから。」
「もう予約入れたのかよ。俺に予定入ってたらどうするんだ。」
「行くでしょ?」
「行くよ!」
「やった」と笑顔で
時間が時間なので、晩飯の際に母さんに伝える。両親共に、遠出する予定がなかったので結果的に良かった。
「ちゃんと行くときは避妊具持ちなさいよ。出来たりしたら、お互い大変なんだし。」
「
「しないに決まってるでしょ!男であるあんたがしっかりしないとダメなんだから。」
「なんでヤる前提で話が進んでるんだよーーー。」
「ママ、この週の終わり空いてるよね。」
「空いてるよ。
「うん、
「
ショッピングモールの一件を伝えると、ママは頭に手を当てながら話す。
「衝撃的だったけど分かったわ。パパにも私の方で話しておくから、ちゃんと準備は怠らないようにね。」
「準備?」
「ママ、娘が子供持つことなんてなったら、泡吹いて倒れちゃうから。」
その発言で、
「
恥ずかしさが限界を超え、捨て台詞と共に自室に逃げ込む。
「『まだ』なんて言っちゃって。でも良かった、元気そうで。」
中学の時はいつも暗かった娘が、あんなに明るくなった。母親としてはそれだけで嬉しいものだ。しかし、それはそれ、これはこれだ。
「
知ってか知らずか、両親間で着実に外堀が埋められていた。
*
テストまで後三日となった頃、俺はミカン先輩に相談していた。
「
「おう、惚気なら他でやってくれ。」
「いや本当に助けて欲しくて。」
テスト前なのに何故か解放されている新聞部で、勉強しながら事を話す。
距離感の話をする前に、彼女との関係性を話したところ、ミカン先輩が食いついた。
「それって幼馴染ってことでしょ。うわー甘酸っぱくて好き。」
「今の
「はっ!?」
そんなの彼女が君の事が好きだからに他ならない。あまりにも分かりきっていることに、彼は疑問を呈することの方に驚きを隠せない。
「中学の時は全然話さなかったから、今になって急に昔みたいに戻る方が変だし。」
「中学の時の話を詳しく。」
自分が覚えている限りのことを教えると、ミカン先輩は少し真面目な表情になる。
(想像の域を出ないけど、今の彼女の発育の良さを考えるとあり得そうだな。)
それなら、普通に接し続けている
「まぁ大丈夫。坊主が考えてるよりも、ことは重くない。」
「それならいいのですが。」
話し終えたタイミングで、コンコンと扉がノックされる。
「どうぞ〜。」
「
「
お辞儀をして、
しっかりと私に「何もしてませんよね」と視線を送るあたり、これは重い女だ。
安心して欲しい。私は彼のことは好きだが、付き合いたいとは微塵も思っていない。
「ほら帰ろ、英語大変なんでしょ。」
「そうだな。ミカン先輩もありがとうございました。」
「うむ、赤点取るんじゃないぞ。」
これ以上私も部室にいる理由も無いので、電気を消して鍵を閉める。顧問の先生から「鍵は持っていい」と許可はもらっているので楽ちんで助かる。
「それにしても、あれで付き合ってないんだから恐ろしい。彼が後ろから刺されるのも時間の問題な気がしてきた。」
私としては二人の関係の進歩を見ていたい側なので、それは困る。
「頑張るかー。」
一応私は先輩なのでね。
*
「現代文難しい。」
「そう言いながら、俺より絶対点数良いんだから頑張れ。」
文句ありげに頭でグリグリしてくるが、事実だ。
俺が5教科の中で、比較的点数が取れるのは現代文。読めばなんとかなるし、問題文の前後を読めば大抵答えがある。
先生が意地悪でなければ、50点以上は確実に取れるあたり良心的と言える。
「『作者の気持ちを答えろ』嫌い。」
「問題作成者の気持ちだからな、人によって千差万別なのが大変だ。」
なんだかんだ
「このお話、男女の関係性が問題に出る。教えて。」
「それはだな。」
ペンを引いた俺の教科書を見せながら、整えられた彼女のノートを使って説明する。
ラブロマンス系のお話はあまり読まないが、これだけはテストに出るので何度も読み直した。正直、主人公が精神不安定過ぎて好きになれなかったが。
「結ばれるのかな、この二人は。」
「結ばれるぞ。教科書に載ってるのは一章だけだから、分からずじまいだが。」
「どうして知ってるの?」
「このお話、ネット上で無料公開されてるんだ。現代文とは言っても昔のだから。」
スマホでタイトルを検索し、読めるサイトを彼女に見せる。
「読むから貸して。」
「いいぞ。」
彼女は集中すると周りの音が聞こえなくなる。その間に数学の関数の分野を見直す。
(何度も疎遠になるお話なんだ。)
淡々とページをスライドして読み進める。くっついているせいか、
小説の二人は何度も出会い、そして不幸にも別れる。唯一の繋がりは手紙だけ。
お互いの苦しい気持ちが幾重にも綴られ、読んでいる私も胸が締め付けられる。
「有名なわけだ。」
教科書に載るのも納得出来る程の作品。これが無料で読めるなんて、凄い世の中だ。
時間にして一時間ほどで読み切った。満足感からか眠気も強くなる、このまま彼の背中で寝よう。
「すぅすぅ」と小声が聞こえ、
「寝やがった。しかも動けねぇ、体痛めるやつだこれ。」
ジリジリと体を横にズラし、ゆっくりと
気持ちよさそうに寝ている彼女を見ると、邪な感情など浮き立つことは無い。
「本当に顔綺麗だし、髪もサラサラ。」
彼女の頬を撫でると、少しの寝言と共に手に顔を押し付けてくる。
学校では絶対に見れない一面を独占出来てると思うと嬉しい。その反面、これを見せれる人が他にいないのかと不安にもなる。
「全然起きねぇ。」
時刻は19時、
体を揺するも起きる気配がまるで無い。仕方ない、面倒だけど家まで運ぼう。
こういう時、家が隣なのは大変楽だ。
お姫様抱っこの形になるが、何かあったら後で謝ろう。
起こさないようにゆっくりと運び、彼女の家のチャイムを鳴らす。
「あら、
「お久しぶりです。」
ベッドまで運ぶと、お礼と言われて夕食を頂くことになってしまった。
彼女の父親が急な出張で、食材を無駄にしたくないから食べて欲しいとのこと。
それならありがたく頂くとしよう。
「おはよう....。」
「もう出来てるわよ
「
目を擦りながらテーブルの方を見ると、気まずそうに彼が笑っていた。
視線を自分に移すと、上着は少しはだけて肌がいつも以上に見え、スカートがズレて下着が見えている。
「あわわわわわ。」
「まぁ、可愛いと思うぞ。」
「ばかーーーーーー。」
*
夕食の味は全然分からなかった。
「なんでいるの。」
「全く起きなかったから、家まで運んだんだよ。」
「そうよ
「本当?」
「うっ、嫌だったよな。」
全然嫌ではない。それどころか嬉しさで爆発しそう、何故その時に自分は起きなかったのか。過去の私を殴りたくなる。
「最近ずっと
「
「迷惑じゃない。」
「なら良いけど。」
食事の量自体はそこまで多くなく、完食する。
「ごちそうさまでした、美味しかったです。」
「今日は泊まっていく?前に
「いえ、流石に明日からテスト期間なので帰ります。」
「私の部屋で勉強出来るよ。」
「そういう問題じゃないの!」
そこ、「これなら娘を預けられる」と頷かないでください。口からも漏れてます。
「数学不味いでしょ。」
「それはそうだけど。」
「早く。」
「はい。」
女子が自分の部屋に誘う、事の重大さを
(俺が律すれば良いだけの話だよな。)
頑張ろう。
*
数学が頭に入ってこなかったのは、先生の授業が酷いのが原因だと知った。
「だからこの公式を使って。」
「それでこれの値が出るのか。それで、次にこの公式を使うと。」
「合ってる。」
あの数学の先生、変にプライドがあるのか授業の速度が早い。追いつけていない俺が悪いと思っていたが、
「あの先生、私は嫌い。下手だし面白くない。」
「科学の先生は分かりやすいし、面白いよな。人によってあんなに違うんだ?」
「私と
なんとかテスト範囲の復習を終えた。これなら、テストは赤点まみれにはならなそうだ。
才能の差に、心の中で涙を流しながら風呂に借りることにした。
「シャワーだけで済ませるか。」
先に入ったので、この後に彼女も入ることを考えると、少々気が引ける。
「それにしても沢山あるな。これ全部髪に使うのか、男の人も最近は使うとか聞くけど、いざ見ると分からん。」
使う気にもならないので、いつもと同じように体を洗って出る。前回の一件があるので、一応腰にタオルを巻いておく。
ふと気づく、自分の服を持ってきてないことに。
(裸で室内を移動するか無理、自分の家ならまだしも他の人の家だぞ。)
「スマホ持ってくれば良かった。」
生憎連絡できる物を全て自宅、万事休すとはこのことか。
「
「その一言で安心したわ。」
デジャヴを感じる場面だが、事なきを得れた。
「パパの服だから、大きいかと思ったけどピッタリ。」
「大きさは良いんだけど、この絵柄しか無かったのか。」
クマの人形が自分の頭を持ちながら、尻振ってるのがプリントされている服とか聞いたことないぞ。
「他にも色々あるよ。」
「趣味なんだな。」
「床で寝る。」
「一緒に寝よ。」
こうなると思ったから、泊まりたくなかった。
「お前な、思春期の男女が一つのベッドで寝る意味を考えろ!」
「『お前』って言った!」
「言いたくもなるわ。」
「
何がそこまで
*
(分かってはいたけど、寝れん。)
「そら、すい。」
寝言も聞こえる程度には熟睡してるのはせめてもの救い。
申し訳ない気持ちもありながらも、無理矢理彼女を引き剥がす。そのまま、音を鳴らさないように家の外に出る。
適当に歩いて、疲れによる眠気を誘う。
「こんな所にコンビニあったのか。」
普段使いしてる場所より近い場所にあることを知り、次から此処を使おう。
しかしお金を持ってきてないので、お店の中に入るわけにはいかない。
「暑いし、アイス食いてー。」
「分かる。」
「だよなー、えっ。」
ポールに腰を下ろしていた女性に独り言を聞かれていた。
自分と同じぐらいの年齢であろう女性、手にはコーヒー缶を持っている。
「買えばいいじゃん。」
「生憎お金を持ってきてなくて。」
「奢ろうか。」
「返せる保証が無いので、遠慮しておきます。」
「こんな時間に君は何してるのかな。」
「少し寝れなくて。まぁ早く寝ないと、明日のテストに響くんですけどね。」
「奇遇だね、私もテスト。数学全然分からなくて詰んでるんだよね。」
この人と何故か話が合う。まぁ、高校生なら何処の高校もこの時期に中間テストをやるはずだ。偶然の一致だろう。
「じゃあ私もそろそろ行くね。」
「お疲れ様です。」
「ばいばい、
「・・・・・あっ、ちょっとなんでそれ知って。」
既に彼女の姿は無く、夢と勘違いしそうになる。
「帰ろう。」
*
テスト期間は憂鬱でしかない。早く帰れるけど、帰っても勉強。それが二日間続く。
「つうか昨日の人、絶対にうちの高校だろうに、見つかんねぇ。」
「おや、愛しの彼女さん探してるのかい。」
「違いますよミカン先輩。」
気楽そうな彼女を見ると、悩みなんてどうでもいいかとなる。
「テストは大丈夫かい。君は赤点取ると、私の手伝いを任せられなくなるからさ。」
「俺の心配じゃないのはいつものことですね。」
「おや〜もしかして今までのテストのお題を教えて欲しいのかい。」
「持ってるのは知ってますけど、聞きません。バレたら一発で停学なんで。」
新聞部は過去のテスト問題を持っているので、昔からいる先生が出す問題の傾向を知ることが出来る。それに頼るほど、危機的状況じゃない。
それに一日目の手応えは良好、この感じなら明日も大丈夫そうではある。
「それにしても、噂はドンドン大きくなってるよ。」
「噂ですか。」
「君が
「噂流した奴を教えてください、殴りに行きます。」
「残念ながら、色んな噂が合わさって生まれた感じ。犯人はいないよ。」
今の彼女との関係も、時間が経過すればするほど、危ういものになってきている。
「テスト終わりの連休、君暇かい。実は手伝って欲しい案件があって。」
「すみません、
「連休全部かい?」
「はい。温泉旅行に行くので。」
絶句しながらも、興味の目を向けられる。
「ハメは外すなよボーイ。」
「しません。」
その為に勉強頑張ったのだから。
*
友達に誘われ、明日のテスト対策をする為、チェーン店の1テーブルを使って勉強していたのだが。
「
「無い無い、
この空気は好きじゃない。
女子だけだが、自分を無理矢理形作られている感覚があって気持ち悪くなる。
女子は恋愛沙汰が好きとはよく言ったものだ。嫌いな人もいるというのに。
「それで
「彼とは付き合ってないよ。でも今の所、一番落ち着くのは彼だね。」
「「「きゃーーー。」」」
楽しそうにしているクラスメイトを見て、息が苦しくなる。
(
そう思った瞬間、体が動いた。
「ごめん、予定あるの忘れてた。分からないところがあったら連絡して。」
静止の声なんて聞かず、一目散に最寄駅に向かう。ふと見知った背中が見えた。
「
「急にどうしたって、
私が何かを口にする前に、
手際よく炭酸水のペットボトルを渡され、当然のように横に座る。
「嫌なことがあった顔だ。ゆっくり飲んで、落ち着いてから彼と話すといい。」
「ありがとうございます。」
「ぎくしゃくしてたら、テスト終わりの楽しい旅行も大無しになる。どうせ、人間関係の恋愛話に絡まれたのだろう。女子はそういうの好きだからね。」
まるで見てきたかのように、先輩は語る。
「旅行の件知ってたんですね。」
「彼がポロっと話してくれた。仲が良くて、こちらとしても助かってる。ついでに、苦しいのは吐いておくに越したことはない。先輩が聞いて、まるっと解決してよう。」
カランと彼女が持っていた缶がベンチに当たり、心地よい高音が響く。
「
「ふむふむ。」
「
「確かにそうかもしれない。」
ポンポンと頭を優しく叩き、言葉にする。
「
「本当に?」
「本当だとも。大好きな女の子の為に、頑張って普通に接してくれるぐらいには惚れてるんだ。愛されてるね~このこの。」
「
「おや、まさかのお互いに鈍感パターンとは恐れ入った。ならもう安心だ。」
ベンチから降り、彼女が
「信頼し合ってるなら、余計な心配はしなくていい。もしまた辛い状況になったら頼るといい、なんてたって私は君の先輩なんだからね。」
「ありがとうございます。」
普段とはまるで違った。多分これが
「
「待って。」
いつものように彼の手を取る。優しく握り返してくれる、それだけ足は軽くなった。
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