旅行を楽しむ魔王の話

暗黒神ゼブラ

十年ぶりじゃ!!

十年ぶりじゃ!!


「ふははははっ、我はこの時を十年待ったのだ!!

あの頃は貴様の中に我が生まれたばかりでろくに景色を見られなかったからな」

「うるさい」

ドカッ

「叩くな!!」

「大声で叫ぶな、ここは船なんだから。他の人だって乗ってるんだ!! 迷惑だと思わないのか?」

「迷惑……だと? 貴様は誰に言っているのだ。我だぞ、この魔王ライヴィスに『迷惑だと思わないのか?』と聞いたのか? 答えは簡単だ迷惑ではない!! いずれこの世界も支配するのだ感謝こそされど迷惑だと思われることなどない!!」

そう、我は魔王ライヴィスだ。魔界にある人間界行きゲートを渡っていた時に身体の半分を何者かの攻撃により失った。

我は魔界では最弱と罵られる樹人族(じゅじんぞく)だ。

先代様は最期に自らの魔力を全てを使って魔樹(まき)を作り我に託した。

我は失った身体の半分を再生させる際この魔樹を使用した。

その時我を助けてくれたのがこの女だ。

こいつには『我はこの女の子供で前世の記憶を思い出している』と催眠をかけている。

「それで今日はどこ行くの?」

「我は果樹園に行きたい!!」

「いいよ、でもせっかくだから他にもたくさん行って思い出作ろう」

この時の我は思いもしなかった……これから行く島に魔界の住人がいることを。

そしてソイツが我が魔王であることに反対している反魔王勢力のリーダーの男であることも。

船に乗った我は船内放送で言っていた救命器具の使い方や禁止事項を確認した。

先ほど我は感謝こそされど迷惑だと思われることなどないと言ったが、さすがに限度はある。

我は船に乗せてもらっている立場だ。

船以外にそうだが、基本的にルールは守る。

ここは我がルールを決める魔界ではなく人間界なのだから。

「一時間二十分で着くって」

「そうか……だったら船を楽しむとするか!!」

「私は疲れたから待ってるね」

「……なら我一人で楽しんでやるからな!!」

我はそう言って船内を見て回った。

「ほう、十年前とだいぶ変わっているな……おっ、これは……そうかこのアニメはあの島が舞台であったな。屋上に行ってみるとするか!!」

テクテク

ゴォォォォォ

「風が気持ちいいな……昔やったあれをするか」

ゴォォォォォ

「うわー飛ばされるぅぅぅぅ」

そうこれが風が強くて飛ばされそうになった時にした遊び……というか飛ばされそうになった時楽しかったからまたやりたかっただけだ。

楽しさが変わっていないということは……まあ楽しむ心も変わってはいないということだな、そこが変わっていないかと不安だったが安心だ。

我が座っていると

「あのシャッター押してもらってもいいですか?」と聞かれたので快く了承した。

「ほら早く来て」

「えー私も写るの……はいはい」

「撮るぞー」

「「いえーい」」

カシャ……カシャ…………カシャ

「どうだ?」

「うん、いいね。ありがとう」

「それでお兄さんはあの島に実家があるの?」

「いや旅行だ。お二方楽しんでくれ」

「ありがとねそっちも楽しんでね」

そして我が座って待っているとあの女が来た。

「もうすぐ着くって降りる準備するよ」

我と女は降りる準備を済ませた。

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