天使の階段
まえとら
天使の階段
蜩の鳴く声が聞こえる、夏の日の夕暮れ。
雲の切れ間から、光がこぼれている。
薄明光線。
「天使の梯子」あるいは「天使の階段」とも呼ばれる、美しい自然現象だ。
光の柱は、放射状に地上の教会へ降り注いでいた。
教会の麓にある公園で、子供たちが遊んでいる。
なぜか子供に好かれる私は、スーパーでの買い物帰りに、子供たちに「遊ぼう」と誘われた。
遊びは、教会へ続く石段を使ったものだった。
じゃんけんで…
パーで勝ったら、「パイナツプル」と言いながら6段、
チョキなら、「チヨコレイト」と言いながら6段、
グーで勝ったら、「グ」から始まる栄養素の名を社名の由来にした、某食品メーカーの名前を言いながら3段。
そんなルールで階段を上る遊びだ。
「じゃんけんぽん!」
掛け声が何度も響く中、私は勝ち進み、“パイナツプ”と唱えながら、教会の階段の最上段にたどり着いた。
私が勝者だった。
勝負は終わった。
さて、帰って夕飯の支度をしよう…そう思った、そのとき。
「まだだよ」
子供たちが、さらに上の空を指さして、笑顔で言った。
冗談だろうと思いながら、一歩、足を踏み出す。
「……ル」
声が口から漏れた。確かに、もう一段、上れたのだ。
下を振り返ると、光の中で微笑む子供たちの背中に、
ふわりと揺れる、羽が見えた。
天使の階段 まえとら @mae10ra
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