峠道に行き交う人々の中で。陽炎の如き
揺らめきが立ち昇る。恐ろしい喧騒と共に
人が燃えていた。
橙色の焔の中で
その男は、泣いていた。
両手でまなこを塞いで涙を流しながら
陽炎の様にゆらり揺らめき歩いて行く。
苛烈な目に晒されて、泣きながら燃え
続ける男。
それでも、炎は消えない。
生きながらにして燃える心持ちは如何なる
地獄か。焔の中には幾つものまなこが
無垢なる中に邪悪な瞬きを繰り返す。
決して消える事のない焔は、男に何を
齎したのか。ここは地獄か極楽浄土か。
燃えながら彷徨い歩く。
未来永劫、橙色の炎の中で。
あな、恐ろしきは因果の熾火か。