第三十四話 ゲームの主催者(黒幕)が優しいんだが
『〇〇しないと出られない部屋に入って764日目』
凛々子の金銭感覚やら、将来のことやら、おっさんがチートすぎたことなど。
色々あったが、時間は勝手に過ぎていく。
そんなこんなで、翌日になった。
俺は食事用の椅子に座っておやつのウェハースを食べていた。もちろん目的はおまけのカードである。パンチラ☆娘がコラボしていたので、大量に購入したのだが……ウェハースって処理が一番大変なんだよな。もう二週間はおやつはこれなので、流石に飽きてきた。
一方、凛々子はモニターの前に座って何やらおっさんとオシャベリをしていた。
「おじぴ? このお洋服ほしいんだけど、ダメかなぁ」
『……三万円か。まぁ安いし良いだろう』
「ほんと!? じゃあ、こっちも買っていい?」
『それは先ほど見せてくれたものと大きな違いがなさそうだが』
「は? 全然違うんですけどっ」
『……五万円か。まぁ良いだろう、金ならいくらでもある』
凛々子は昨日の件があって、ちゃんと購入したいものを相談することに決めたらしい。
支払い主であるおっさんにスマホで画像を見せながら、先ほどからずっとこうやって交渉していた。
(三万も五万も高いだろっ)
昨日はおっさんが金銭感覚について説教してたが。
よくよく考えると、おっさんも金持ちなので金銭感覚がまともなわけないか。三十万は流石に高いと思ったらしいが、数万程度ならポンポン出す所存みたいだ。
『あ、ちょっと待ちなさい。いつの間にか購入額が十万を超えようとしているじゃないか。自重しなさい』
「……うぅ、あと一着ほしいよぉ。おじぴ、ダメ?」
『そんな顔してもダメだ。金銭感覚のズレは少しずつ直さないといけないよ……まずは十万円以上は買わない、ということから始めなさい』
「はーい。じゃあ、さっきのやつは買わないことにして、他のでもいい?」
『そうだね。そうやって悩むのはいいことだ』
なんだかんだ、しっかりしてるな。
モニター越しに会話している二人を眺めながら、ぼんやりとそんなことを考える。
俺たちを閉じ込めたにしては……あのおっさんって、いい人すぎる気がしていた。
(最初は、『趣味で俺たちを閉じ込めた』と言ってたけど……何か事情とか、目的がありそうだよなぁ)
こういう出られない部屋での生活って、もっと殺伐としているイメージがあった。
それこそバトルロワイヤルとかも、大枠で考えると似たようなものだろう。連れてきた人間を強制的にゲームに参加させる、という点で同じだ。
物語の場合は大抵、主催者が悪い奴だが。
しかしおっさんは優しい。温厚で、俺たちに危害を加えることもなければ、お願いするとなんだって聞いてくれる。
金が有り余って、人間で遊ぶことにした――みたいな悪質なタイプの金持ちではない感じがするのだ。
「うぅ……おじぴ、どうしても選べないよぉ。ほら、谷間とか見せるから、買ってもいい?」
『やめなさい。若い子がはしたないね……あ、こら見せるな! 分かった、買ってあげるから、もっと自分を大切にしなさい』
「やったぁ♪ オタクくんもチョロいけど、おじぴも楽勝だよね~」
『やれやれ。これだから自己肯定感の低い子は苦手なんだ……平気で身を削る真似をする』
「えー。でも、胸とかパンツとか見られても別に減らないもーん」
『……そうかい。まぁ、そのあたりの価値観についての教育は、太田君に任せるよ。とりあえず、少しずつお金を使わない練習をしていこうか』
「おけまる~」
『ちなみに、私の金だから気にしないでいいが、太田君が稼いだお金はこんなに軽く使わないようにね。彼と結婚しても、浪費家のままだとすぐに捨てられるよ』
「……す、捨てないでぴっぴ!」
話が飛躍しすぎだろ。なんで結婚した後の話を……いや、まぁいいや。とりあずおっさんが凛々子の相手をしてくれているので、俺は思考に没頭しよう。
たまにこうやって考え込みたくなる時がある。
オタク特有の『考察』というやつだ。
それにしても……やっぱり、おっさんてどう見てもいい人だよな。
今のやり取りでもう分かる。心の奥底にある善良さがにじみ出ていた――。
【あとがき】
お読みくださりありがとうございます!
もし続きが気になった方は、最新話からできる評価(☆☆☆)や感想などいただけると更新のモチベーションになります!
これからも執筆がんばります。どうぞよろしくお願いしますm(__)m
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