第十九話 地雷系女子の闇が重すぎる
まずい。絶賛病み中の凛々子が、自分語りモードに入りかけている。
俺の境遇も不幸な自負はあるのだが、彼女には絶対に劣る。重たい話をされても反応に困るし、こういう時に真面目に聞いてあげられるほど善人でもないので、どうにか会話を遮断したかったところなのだが。
「俺は凛々子にどんな過去があっても気にしないよ。これからの人生を大切にしような? ほら、過去のことは忘れてさ」
「――わたしのママ、ホストにもハマってて」
えーん。やめてよ、りりぽん。
導入がもう重たい。苦しい。ここから彼女が幸せになる結末なんて絶対になかった。
変に遮っても怒るんだよ……困ったなぁ。
「しかも、ヒモみたいな男と付き合ってたから……当然、わたしに使うお金もなくてさ」
「ぴえん」
「うん。まじぴえん」
「と、いうことで、これからは幸せになろうな!」
「中学の給食費ですら払えなくて、ちょー大変だった」
「続けるんだ……」
俺がいい感じにピリオドを打とうとしているのに、凛々子の自分語りが止まらない。
地雷系女子って何も考えていないように見えるけど、意外とちゃんと人生について考えているんだよな……そのせいか、語りだすと止まらない傾向にあるようだ。
「しかも、うちに来る男ってクソ野郎ばっかりだったから、わたしの身の危険も危ないわけ」
身の危険も危ない、という重言を指摘するべきだろうか。
いや、話の腰を折ると余計に長引くだけなので、ここはもう静かに聞くことに徹しよう。
そう決めて、俺は口を閉ざした。
「家も狭かったし、部屋の鍵も壊れてて怖かったから、ずっと友達の家とか先輩の家に泊まらせてもらってたの。みんな優しくて本当に助かってたなぁ」
なるほど。地元の地雷系女子はだいたい友達みたいだ。
でも、そうか……もしかしたら、地雷系女子たちの繋がりは互助会もかねていたのかもしれない。
いつもバカみたいに騒いでうるさいイメージがあったのだが、ああやって笑っていないと人生やってられない、というのもあったのだろうか。
「先輩なんてさ、わたしにごはんを食べさせてくれたり、給食費も払ってくれたり……ほんと、みんなのおかげでわたしは生きてられたの」
わぁ。いい話だなぁ。
そう思いながらも、ふとモニターを見てみるといつの間にかおっさんがいなくなっていることに気付いた。あいつ逃げやったな!
凛々子の闇を俺一人に押し付けやがった。
くっ。この重苦しい空気をどう処理すればいいんだよ……!
「でも、そのためのお金ってほら……パパ活で稼いでくれてたみたいで」
「あー。そうなっちゃうか……」
「わたしが中学生のうちは、そういうことしないでいいって先輩たちが守ってくれたの。でも、いつまでも甘えるわけにもいかなかったし、わたしも高校生の年齢になったらそういうことしないといけないのかなって、薄っすら思ってて」
おかしい。高校受験を受けていない、という話からなぜこの方向に話が進んだ?
お、重い。重いよぉ……助けておっさん。逃げんなよおっさん。あんたがこの地雷系女子連れて来たんだから、処理しろよ。地雷処理を俺だけにさせるなよ!
と、心の中で呪詛を吐いていても、現状はどうにもならない。
「そんな状態だったから、高校受験なんて受けてる場合じゃなかったの。これからの生活とかどうしようかなって……それで、いよいよパパ活とかしないといけないかなって、先輩に相談してたら――いつの間にかこの部屋に連れてこられたってわけ」
凛々子の自分語りは、なおも続く。
あまりにも重くて息が苦しいのだが、どうやらまだ終わらないみたいだ――。
【あとがき】
お読みくださりありがとうございます!
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これからも執筆がんばります。どうぞよろしくお願いしますm(__)m
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