第18話 巨大ロボットと未練の宝箱

 ゲートをくぐった俺たちを迎えたのは、無機質で広々とした空間だった。


 中央には巨大なロボットが鎮座している。その高さは、ざっと見ただけでも三階建てのビルに相当する。


「うおおおおっ! かっけえ……!」


 思わず声を上げた俺は、足早にロボットの方へと近づいていった。


 イリスの情報通り、ボスは起動していない。ただの金属の塊のように、静かにそこに佇んでいるだけだ。


「ホントにこれ、動かないの? 乗れないの? これで戦えたら最高なんだけど」


 俺が目を輝かせながら言うと、イリスがくすりと笑って応える。


「逆だよ、悠くん。これがボスなの。本来はこれと戦う予定だったの」


「……は?」


 その言葉に、思わず振り返ってイリスを見る。


「つまり、これが起動してたら、俺がこれと戦ってたってこと?」


「うん。短剣一本で」


「確実に死んでたじゃん……!」


 思わず腰が抜けそうになる。


「だから私が先回りして制御システムを無力化したんだよ。悠くんが無茶する前にね」


 誇らしげに胸を張るイリス。


「マジで、イリスが相棒でよかったわ……」


「当然でしょ。最強彼女ですから!」


 イリスの元気な返答に、思わず笑ってしまう。


 俺たちはロボットの周囲をぐるっと一周する。金属の光沢、関節部分の複雑な構造。まるで博物館に展示されている未来兵器を見学しているようだ。


「これ、倒さないと宝箱って出ないの?」


「んー、一応ね。自爆装置がついてて、それを起動すれば『撃破扱い』になるんだけど……」


「けど?」


「自爆したら、この部屋全部吹き飛ぶの。悠くんも巻き込まれて死ぬよ」


「……ネックレスがあるだろ?」


「あるけど、それ使っちゃうのもったいないでしょ? あれはここぞって時にとっておきたいし、宝箱の中身もそんなに必須じゃないから」


「中身は?」


「大盾。悠くんでも持てなくはないけど、重すぎて取り回し悪いし、使いこなせるとは思えない」


「それなら……まあ、いっか」


 少し未練はあったが、俺はあっさりとその場を離れる決断をした。


「悠くん、成長したね。昔の君なら無理してでも取りに行こうとしてたと思う」


「俺も学習したんだよ。命あっての冒険だし、無理するよりイリスの言葉を信じた方が良いって」


「ふふ、いい子いい子」


 イリスに頭をなでられながら、俺はロボットに別れを告げる。


 そして二人は、次のゲートへと向かって歩き出した。


「さて、次はどんな空間が待ってるのかな」


「それも……お楽しみ、だよ」


 未来へのゲートが、静かに俺たちを迎えていた。


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