主人公である魔法使いの弟子・レオナは、ごく普通の少年なのです。師匠とのお別れには全力で打ちひしがれて、困難に挫けそうになる弱さだって持っている。彼には魔法だって未知のもの、「できること」「できないこと」の狭間で葛藤をしながら、ピンチの時には勇気を振り絞って筆箒を握りしめるのです。
けれど、そんな彼の子供心を委ねるように綴られる冒険譚だから、見守りたくなる。彼が描き出すあやふやで優しい結末を見届けたくなる。
物語のむすびは、子供の寝物語に口遊みたくなるような、美しい明日のある結実です。世代を問わず楽しめる作品、どうぞご覧になってください。
静かに降る雪の中で、老いた魔法使いとひとりの少年が暮らすシルバ山。――その幕開けは、まるで心に白い布をそっとかけるような、優しい導入でしたね。
『筆箒の魔法使い』。この物語は、忘れ去られた“力”と、それを継ぐ者との対話であり、時代の終わりと始まりの狭間で生きる魂の物語だと感じました。
第一話「とんがり帽子の魔法使い」では、魔法というものの輝きと影が、静かな筆致で描かれていました。レオナの純粋な憧れと、パーシヴァルの哀しみを帯びた沈黙。スープの湯気のように立ち上る、二人の間にある優しい温度差が、読んでいて胸に染み入るようでした。
とりわけ印象に残ったのは、嵐の中で杖を掲げるパーシヴァルの姿です。かつて英雄と呼ばれた者が、ひとりの弟子のために最後の力を振り絞る…その姿には、威厳だけでなく、老いの痛みや孤独、そして深い愛情が静かに宿っていて、まるで夜の山を照らす灯のように美しかったです。
また、第二話以降の展開では、レオナが初めての世界に触れていく様子が丁寧に描かれていて、読者自身もまた、新しい冒険の入り口に立っているような心地になりました。花畑、川の風、未知の生き物たち…。どの場面も瑞々しく、読みながら思わず深呼吸したくなってしまうような描写が散りばめられていますね。
特にスライムのセルマとの出会いには、いわゆる「魔物」という存在に対する視点が優しく反転されていて、レオナのまっすぐな言葉に小さな救いの灯を見た気がしました。恐れから生まれる境界線を越えて、心を通わせようとする姿――それは、どこか魔法以上に尊いもののようにも思えます。
「魔法は決して万能ではない」。そう語ったパーシヴァルの言葉が、物語を読むにつれ、じわじわと心に染み渡っていきます。魔法というものが、単なる力ではなく、記憶であり、祈りであり、そして人と人の“願い”そのものなのだと。そう気づかされるような読書体験でした。
拙い感想ではありますが、この物語に出会えたご縁に、心から感謝を込めて。
また次の章で、レオナがどのような決意を胸に歩み出すのか……そっとページをめくる指先が、少し震えています。
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