パラサイト・ヴァンパイア-第二次銀河戦争- ~異世界転生…じゃなくて、転生したけど、ただの転移!?1度目は監禁生活少女、2度目はうつ病中年男性、3度目は…吸血鬼美少女だって!?〜

星野アリカ

3度目までのプロローグ

監禁生活が始まったのは、8歳頃からだろうか。

ある団体があたしの両親を殺してからあたしを引き離し誘拐して、戦争の道具として利用される毎日を送っていた。

各地方で武力制圧を行い敵を虐殺し勝利したら洞窟のような監禁所へ戻され拘束される。


あたしの家系は性別関係なく力を持って生まれてくる。

その力は様々だ。

辺り一面を灰塵と化す程の炎を発現させる者。

周辺を瞬時に氷点下100度の氷景色を発現させる者。

天候を自由に操作して台風や落雷を即座に発現させる者。

決まって自然に関係するものがほとんどだ。

あたしに発現した力はそれらとは逸しているものだった。

それは、人間、動物、植物、有機物または自然上の熱量やエネルギーを自由に操作することができる力だった。

炎や氷等の操作は造作もなかった。それ以上のこともできる。

その力を発現したことを知った両親はあたしの存在を隠したが、偶然その力を使っている場面を見た他人から情報が漏れたのだ。

それが原因になってしまい、ある団体にあたしの存在を知られる事になってしまい、あたしは他者から利用される毎日を送るハメになった。


居続けること自体、生き辛いのが当たり前だった。

だから生き続けることがしんどい。

そう感じるのがあたしの役割なのだろうと悟り続ける毎日。

1度目の人生は、人間兵器、人を殺すためだけの兵器としての生。

最終兵器と呼ぶ者をいた。

だから大事にはされてはいた。

その団体は武力を有しているから、戦況が厳しい場面にだけあたしは戦場へ駆り出された。

そうして、その殆どは洞窟の中での監禁生活が主流だった。

常に鎖で繋がれた中での生活を強いられていた。

一人っきりで。



1日1回はご飯を運ぶために、大人の男の人が十数人がやってくる。

驚くよね。

1人の女児に対して、多すぎない?

十数人もあたしよりも大きい男の人が、次々と、やってくる。

12歳の女児と、大きい男の人達。

怖くて仕方がなかった。



「お前がこの戦争の命運を握っているんだ」

「お前は道具でしかない。その時が来たらしっかりと働いてもらうからな」

「何を震えている? お前に感情なぞ不要だ! どこでそんなものを覚えた」

「おい、警備を強化しろ。大事な、大事な、兵器なのだからな」



恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、こわい、こわい、こわい、こわい、こわい、こわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわいこわい!!!





死にたい。





もう耐えられなくて、ご飯を食べている間にあたしは舌を噛み切ろうとした。

だけど、無駄だった。

死ぬのが怖くて噛み切ることができなかった。

その行為に気づいた男の人達はあたしの口元を紐で括られてしまい、口を閉じることが出来なくなってしまった。



「お前は切り札だ。平常時では、要らない存在だ」

「そうだな。必要になるまで、こやつを封印しておくのはどうか?」

「名案ではないか。人手が足りないところだった。これで今までの警備人員も数に入れることができよう」

「それでは、封印の儀を執り行おう」



そうしてあたしは長い間封印されていた。

どれくらいの時が経ったのだろうと、当時は感じてしまう程。

実際は100年くらい。

あたし、封印されてずっと放置されていたんだ。



気が狂いそうに、いや、狂っていたのかもしれないな。

その封印は眠ることさえできず、自我を保ち続けたまま、無理矢理覚醒状態のまま生き続けるものだった。

だから、あたしの憎悪と復讐は100年分とそれ以上。

封印が解けた時のあたしは人類がみんな悪魔に見える程見境いがなかったと思う。



封印が解けた経緯とかは簡潔に話そうと思う。

人類に復讐をしたい人がいて、あたしに目星をつけその人があたしの封印を解いた。

起きた時その人をすぐに殺そうかと思ったんだけど、協力者が居るのは何かと便利かなと思って一緒に行動することにした。



………そっからは色々あったけど、割愛させて欲しい。

結論で話すと、あたしは人類に復讐することなく死んでしまった。

………最後はあるお友達に見送られて、この世を去ったのだと思う。

記憶が曖昧で定かではない。

最後に覚えているのは、目が見えなくなって、その友達の手の温もりと声だけがあたしに届く。

悔しいと思った。

それは復讐ができなかったからではない。

そのお友達との約束を守ることができなかったから。

歳相応に、これが終わったら一緒に遊びながら喋ろうと言った、ありふれた約束。

人生で初めて交わした約束だったから、ありふれていても大切に思ったのだ。

だから、悔しいと思ったのだ。





そんな夢を、俺はある日見た。

社会人10年経って、順調にキャリアを積んでいたのだが運悪くうつ病になってしまい休職中の身だ。

俺は真昼間の昼寝中に長い夢を見た。

休職中だったからずっとアニメを見ていた弊害だな。

でも、なんかリアルだったな。

俺、前世は女の子だったのか!

躁うつ病のせいか、何かの拍子ですぐにテンションが上がってしまう!

なんか、女の子ってあんな感じなんだな!

体の感覚とかも違ったというか、なんというか………あれ?



あれは、間違いなく俺だ。

なんで、忘れていたんだろう。

え、忘れていた?

忘れる?

え、おかしくね?

忘れるって、なんで?

………え???

無性に自分の顔が見たくなって、鏡を見るために重い体を起こして、洗面台へと向かった。



「そりゃ、女な訳ねぇじゃん」

鏡には、醜いデブがそこにいた。

間違っても、うら若い少女がそこに居る訳がない。

「…イライラすんな」

込み上げてくるものがあるのだ。

憎い、憎い、憎い、殺したい。

俺は確かに人間は苦手ではあるが、人類が憎くて殺したいと快楽殺人主義がある訳でもない。

まぁ、殺すことには抵抗感はないのだが。

でも、でも、でも。





「殺してぇ」





鏡に映っている自分の目が茶色の筈なのだが、片目だけ青色に発光していた。

その眼には星の欠片のような小さい粒が多量に散りばめられていた。


そこからは覚えていない。

気づいたら目の前で、知らない、いや知っている、いやいや知らない50代の男が血を流しながら地面に伏していた。

その男は、俺をうつ病にした張本人だ。

その男は事切れている。

顔はこちらを向いていて、そいつの眼球から俺が写っている。

ウゼェなウゼェなウゼェなウゼェなウゼェなウゼェな。

目も潰してしまおう、そうしよう。



「ゆうくん?」



振り向いたらそこには見覚えのある、俺と付き合っている彼女がいた。

これは、いけない。



「…キャッ! こ、これって」



俺は彼女と目を合わせた。

顔は虚ろになり、操り糸の無くなった人形のように彼女は地面へ崩れ落ちる。

そして俺は、_________________逃げ出した。



「俺はナツキが過去にどんなことがあったのか、全然わかんねぇ。知らないことばっかりだ。だから、ナツキは大丈夫だなんて、知ったような口を聞くこともできない。それでも、俺は引き下がりたくない。だってさ。友達になったじゃんか。ずっと一緒にとは言えないけどさ。明日くらいは、一緒に居れるだろ? 明後日も、何もなければ一緒に遊べるだろ? 1週間後には、俺の他の友達ダチを巻き込んで何かできるかもしれないだろ? 迷惑じゃないければさ、俺に時間をくれないかな」

「馬鹿じゃ、ないの…!? 私はそんなの、求めていない! 迷惑、すごく迷惑!」

「嘘つくなよ」

「嘘じゃない!」

「だったら、何で泣いてんだよ!」

「!?」

「泣いてんなら、助けて欲しいって言えばいいだろ!」



遠い記憶だ。

俺は一体何をやっているのだろう。

もう全てが手遅れだ、あいつを殺しちまった。

あ〜あ、これはもう詰んだな。

殺した相手が悪すぎる。

どうせバレる。



どうせ。



現代の科学捜査がどこまで進歩しているかはしらねぇけど、指紋も、多分毛髪も、バッチリ現場には証拠が残りまくっていると思う。

それにもしバレていなかったとしても…俺の人生もう終わってる。

休職から復帰しても、また今の職場にまた馴染める気がしない。

変な目で見られるだろ、どうせ。

精神障害者なんて使いもんになるのかあいつ、ってな感じで差別されるに決まってる。

それに、めっちゃデブってるし、今。

人生って何回やっても、どうせ上手くいかないだろ。

どうせ。



どうせ。



そうして俺は超高層ビルの屋上から躊躇することなくあっさりと飛び降りた。

前世の記憶のお陰だろう。

前世はこの高さから飛び降りても、着地は余裕で出来たしな。

今の俺には無理だが。



これが、あたしの、俺の、人生の末路だ。

なんか、一人称が狂うな…。



転生したから上手くいく?

よくそんなものを見かける。

そんなことあるわけないでしょ、アホじゃないの?

人生なんて、選択の連続で、上手くいくかどうかが決まるっつーの。





でも………次こそは………。





真っ当な自分に、真っ当な性格に、真っ当な、真っ当な………。

そんなことを考えながら、あたしの、俺の、頭が潰れる音が聞こえた気がした。

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