赤と緑とタバコと

ラプラスAki

赤と緑とタバコと

 この街の空を見上げると、今にも降り出しそうだ。

 俺は街のはじでタバコをふかす。勿論違反だ。この時勢では喫煙スペースで吸う。それが常識だ。しかしそんなスペースも段々と少なくなってきている。

「おじさん。条例知ってます?」

 俺は話しかけてきた少女に目だけやった。ティーンエイジャー。ずいぶん奇抜な格好をしてる。耳も唇もピアスだらけ。全身黒で固めてる。パンク系だ。

「悪いな」

 俺はそう言うと構わず吸い続けた。少女は何も言わずに俺を睨み続ける。

 何気なく街を見渡す。赤と緑がやたらと飾ってある。

「フ◯ック!!」

 少女は叫び何処かへ行った。

 タバコを注意されたのは久しぶりだった。その彼女は何処かへ行った。もう3年か。しっかり覚えている自分が情けなかった。

 吸い終わる頃。例の少女が戻ってきて「ん」

 と何かを差し出した。見ると電子式タバコだった。

「これは?」

「これなら大丈夫でしょ」

 その行動に思わず大声を出して笑ってしまった。

 ふと空を見た。雪が降ってきて、手袋に当たってとけた。

「プレゼントか?」

 するとまた何かを差し出した。領収書だ。それを受け取ると俺は肩をすくませる。

 “ホワイトクリスマスになるといいね”

 俺の脳裏に言葉がフラッシュバックする。

 しばらく領収書をみて、電子タバコを返した。そしてつけていた手袋を渡す。

「これで勘弁してくれ」

「ちょ、おっさん!」

 そうして、雪降るクリスマスの街に溶け込んでいった。

 “雪は降るよ。きっと……”

 雪は静かにこの街に降り続いていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

赤と緑とタバコと ラプラスAki @mizunoinori

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ