ラスボスが五人もいれば流石に負けないだろって思ったから実際にそうする。
虚無太
いきなりクライマックス
「依頼の達成確認されました。お疲れ様ですミヤビ様、本日も素晴らしい活躍でしたね。」
「ははっ、どうもありがとう。これも冒険者として当たり前だ。困っている人の頼みは放っておけないしね。」
そう言って俺は受付嬢に向けウインクをする。俺の顔はそこそこ、いやかなりいい感じなのでウインクをもろにくらった受付嬢さんは顔を赤くして照れている。
そうして依頼の達成報告を終えた俺はパーティーメンバーの元へ行く。冒険者ギルドの隣には酒場が併設されていて仲間はそこで先に飲んでいるはずだ。
少し歩いていけば早速仲間達の姿が見えてきた。
俺たちのパーティーメンバーは全員合わせて五人。パーティーランクはミステリアス級でこの辺じゃ名の知れたパーティーとして通っている。
「よぉミヤビ!遅いから先に飲んでるぜ!まーた受付嬢に絡んでたのかよ?」
「遅くもないし絡んでもない。あと酒臭い。」
こいつはタンクのガンテツ。酒癖が酷い馬鹿でアホだがとにかくタフ。5m級の魔物も素手で持ち上げられるぐらいには筋肉馬鹿。昔酔った時に腕相撲をする流れになったのだが一瞬で粉々になった。俺の腕が。それ以来こいつとは何があっても絶対に確実に何があっても腕相撲をしないと誓った。
「まぁまぁ、しょーんなことよりゅがんがんのみましょーよー!!!!わたひはまだまだいけるへろー!」
「飲み過ぎだ馬鹿。あと隣の客に酒ぶっかけんのやめろ……あ、すいませんね。大丈夫ですか?あ、大丈夫ですか。いやほんとうちのバカがすいません……ほんとうに。」
こいつは神殿騎士のサルフィー。まぁ頭に元がつくが。こいつも例の如く酒癖が悪い。神殿騎士といえば子供が憧れる職業トップ10に毎回ランクインする人気な職業でその仕事は主に聖域の確保、教会や神殿の守護、王侯貴族の護衛など多岐に渡る。どれも高潔な仕事で人々の憧れなのだが、こいつは酒に酔った挙句仕事をほっぽり出して飲み歩いていたとかで仕事を首になった。ほんと何してんだ。ちなみにこんななりでも戦闘になるとアホらしくなるほど強くなる。国の精鋭が五百いてようやく対等、と言われている。もっともそれが過大なのかそれとも過小なのかは分からないが。
「ふふふ、みなさん本当に愉快ですわね。あ、店員さん、宜しかったらエールを30杯ほどお願いしてもいいかしら?」
「……。」
こいつはプリーストのエル。こいつは酒癖が悪いとかは全くない。むしろ酔ったとこを見たことがない。収入の9割を酒に消し飛ばす酒豪だ。俺は断言できる。世界で一番酒に強い女はこいつだと。回復の腕は四肢欠損を治すことができるほどで、即死しなければほぼ全ての怪我、病気に対して対処可能である。光魔法も本職顔負けでアンデットに対しては無類の強さを誇る。
「……。」
「お前はいつも通りだもんな、ルップ。お前が一番まともだよ、全く。」
とか思っていたらなんかブツクサ言ってる。不思議に思って耳を近づけてみれば…
「……今日は女の子と3回も目があった。こ、この僕が、さ、3回も、ふ、フヒ。つ、次は声かけてみようかな、嫌われるかな、でも、目があったってことは、き、きっと僕のことが好きになったに違いない。ふ、フヒ、フヒヒヒ。」
「………(絶句)」
こ、こいつは魔法使いのルップ。古今東西の魔法を知り尽くす魔法のエキスパート。普段はこんなでもないような違うような気もするが、とにかくそんな感じだ。大地を揺らし天を裂き海を割るその強大な力はまさしくエキスパートの名に相応しい。ちなみに彼女募集中。好きなタイプは優しい子。
「どいつもこいつもバカらしくなってくる…あ、店員さん、俺にもエール一つ。あと、よかったら連絡先教えてください。」
「えと、かしこまりました。れ、連絡先ですか?その、お仕事が終わってから、でもいいですか?」
「もちろん。」
そう伝えると笑顔で業務に戻って行く店員さん。人が笑顔になるってことはいいことだよね。実際には何もしないけど。
「それじゃ!改めて俺たちラストスの未来に向けて!乾杯!」
「乾杯ッ!」
「かんぱーいいいひ!」
「乾杯ですわ〜!」
「……カンパイ。」
俺たちラストスの夜はこうして更けていった。これが俺たちの日常、つまりいつも通りだ。そして街の明かりも消えていき、俺たちは楽しい気分のまま岐路に着いた。
「首尾はどうだ筋肉だるま。こちらイケメン、どーぞ。」
「こちらイカした漢ことガンテツ様だ。特に異常なし、作戦に移れるぜ。」
「よし、他のみんなも大丈夫か。」
「こちらスーパーキャワキャワエリート美少女サルフィーちゃん、大丈夫だよ!」
「お酒といえば私、エルも配置につきましたわ。」
「魔法からも女の子からも好かれる(主観)ルップ、こっちも大丈夫だよ。」
「よしっ、では始めるぞ!」
冒険者ギルドで依頼達成を確認してもらい酒場で馬鹿騒ぎしたあと、俺たちは全身を黒で彩り闇夜に紛れる。目標は近頃きな臭い噂が立っている商家の潜入及び調査、場合によっては殲滅である。
各々が巧みに動きほぼ同時に建物に入るとそれぞれ近場から漁り出す。怪しいものがないかとにかく探す。探して探して探して探して探して探して探しまわる。
そろそろ次の部屋に移動しようかなと思ったその時、俺は目にしてしまった。
「こ、これはッ!50年物のワインにこっちは王国建国記念のダイヤと金がふんだんに使われた限定記念硬貨!これは怪しい、怪しすぎる!怪しいからこれは調査のためにも確保しなければ。」
そう言って自らのポケットに物を突っ込む。この外套はルップが作ってくれた魔道具でポケットの次元空間が拡張されているのだ。そのため色々と大量に突っ込める。さすがルップだぜ。
そうして各々好き勝手に行動…いや、作戦行動に乗っ取って動き遂に商家の主の部屋の前にたどり着いた。
全員で目を合わせてタイミングよく飛び込めば商家の主が目を丸くしている。
「だ、誰だお前らは!」
酷く動揺しているのか足がガクガクと震えている。それを見た俺はニヤリと笑い…
「ふむ、やはり動揺しているなアークの金融支援者ゴルドー。大悪魔アークを復活させるために活動しているお前らのやっていることは全てお見通しだ。さぁ、わかったら金目のものを寄越せ。あと酒だ、とびきりのな。」
「ふ、ふざけたことを言いやがって!これでも食らえ!」
そう言って俺たち目掛けて何かを飛ばしてきたが、それを目の前に出たガンテツが防ぐ。
「はっ、ハエでも止まったかと思ったぜ。」
そう言って凄むガンテツを見て商家の主は怯む。しかしまだ諦めが悪いようで…
「お前たち!こいつらを喰らい尽くせ!」
そう言って出てきたのは10匹の魔獣。狼に近い形態をしているそいつらは俺たちを見るとすぐさま飛びかかってくる。だが、たかが狼もどきが俺たちに叶うはずもなく…
「粉砕ッ!破壊ッ!オラオラオラオラオラァ!」
「キャハハハハ!面白い!面白いね!」
「ふふふふ、いい声で鳴くわね!これはどうかしら!?」
「アルテミッドファイア!グランセクトアース!これでもっと僕はモテる!モテるモテるモテるモテるモテるモテるモテるモテるモテるぅぅぅぅぅ!」
各々が好き勝手に戦っている。チームワークもクソもない。だが、いい感じだ。それでこそ俺が見込んだ奴らだ。
そんな奴らの熱に当てられて俺も乗せられて行く。
「俺たちはッ!悪に屈したりはしないッ!喰らえ!エクスカリバーイグニッション!」
輝く光の聖剣が狼に向かって振り下ろされ、何の抵抗も感じずに通る。後に残ったのは切断面からいい匂いが漂う狼の死体。そして背後から片が着いた仲間たちがゾロゾロと集まってくる。再びゴルドーの前に集った俺たちに向かってゴルドーは呟く。
「お前らは…お前らは本当に!一体何なんだ!」
「俺たちか?俺たちは……闇夜の支配者、ラトボスだ。冥土の土産だ。あの世でも忘れるなよ。」
恐怖の表情を浮かべたゴルドーに向かってキメ顔を浮かべ、俺たちはポーズを決める。それを見て更に顔をぐしゃぐしゃにしたゴルドーに向かって近づき、こう言ってやる。
「さぁ、金目のものと酒を出せ。もしこれを無視すれば……。」
「……無視すれば?」
「お前の顔面をトイレに突っ込む。大の方のな。」
「うわぁぁぁあぁあぁぁぁぁあぉあああああぁぁあああぁあぁはたかたかたなまたらがはごかもはこまはこまほ。。!、!、。、、、、+6〒58575+÷+55!!!!!!!???????」
その後ゴルドーは大人しく金と酒をたんまりくれた。この行為を人によっては泥棒と罵るだろう。だが、それは仕方がないことだ。人間、生きるためには泥に手を汚すことに目を瞑らなければならないこともある。そもそも、世の中にいいお酒が少ないことが悪い。つまり悪いのは世の中なのであって、俺たちではないのだ。
そうして酒盛り第二ラウンドを開いてる最中、俺は思った。
大悪魔アークとかいるわけねぇのになにあんな動揺してたんだよwって。
それから騒いで飲んで朝日が昇ってきた。それを目にして誰からも言うまでもなく全員が立ち上がり、それを確認した俺は朝日に向かい手を伸ばす。
その開いた手を、グッと握る。
そして決め台詞。
「世界は、俺たちのものだ。」
「おう。」
「ははっ!」
「ふふ。」
「……ふっ。」
こうしてやっと本当に一日が終わった。
なんでこんなことをするかって?そりゃかっこいいからに決まってるだろ。泥棒してたじゃんって?あいつはそもそも犯罪汚職に手を染めまくってたけど街の有力者の娘を人質に取ってるから公的機関がなにもできなかっただけだし、まぁセーフでしょ。
あ、そういえば俺の自己紹介してなかったか。俺の名前はミヤビ。元日本人だ。俺は昔から敵キャラが好きだったんだが、周りにはあまりその趣味を理解してくれる友人がいなかった。特にあるラスボスに目を奪われたんだ。他を寄せ付けない圧倒的な実力。主人公たちにたった一人で立ち向かう孤高の最強。けれど結局主人公たちにやられてしまって物語は終了。
そこで俺は思った。
俺だったら、もっと上手くやれたってさ。
だから、俺はこの世界になんらかの拍子で転生した際誓ったんだ。
ラスボス一人なら負けるかもしれない。
なら
"ラスボスが五人もいれば絶対に負けないって。”
※作者
えー例の如く突然思いつきました。気が乗ったら続き書きます。
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